「今日も大変だった」と始まる1曲目、窓から見える毎日は"Copy & Paste"である。
何気ない日常の、親しいがゆえに言えないモヤモヤ、不意に訪れる不安や、穏やかな自己肯定、そして最後に柔らかな景色の向こうに見える狂気。
全体的にはとても穏やかで心癒される曲ばかり、収録時間も34分ととても短くて、あっという間に聴き終わってしまう。
流れもとても秀逸だし、だからこそラスト2曲からのテンポアップの速度が尋常じゃない。
それまでどこかふわふわして気持ちよく癒してくれていたのに、健太郎さんの"Time"の流れた瞬間から急に現実に引き戻されるみたいだ。
ライブではすでに休止前から演奏されていた曲だけど、アレンジがだいぶ変わっていて、ファンキーでアップテンポな曲になっている。
それでラストが"Pinfu"、「この街は平和に見える」ていうコーラスがなんだか妙に現代的だ。
裏でラップする呂布カルマ、そこでは日々露わになる小さな歪さの集合が、やたらリアルなんだよな。
個人的には「十人十色混ぜるとクソの色」というラインがパンチライン。
1曲1曲も短いので、本当にあっという間の聴き心地で、この曲が終わった瞬間に急にハッと目が覚めたような感じになる。
曲ここでももちろんいいんだけど、このアルバムはキャリア随一で構成が秀逸だと思う。
彼らの曲は一貫して現代社会や都会という風景が向こう側に見えるような音楽なんだけど、現実の歪さの表現力がどんどん増している印象だ。
日本はとても平和な国だし、とても便利で当たり前の水準が高い。
にも関わらず幸福度は世界で随一に低い。
日々の中にもそこかしこに歪さが溢れている。
「この街は平和に見える」