★2019年9月17日(火)に、以前に投稿した「書評」が削除されてしまいましたので、再度の投稿とします。以下の文章は、以前の投稿時と全く一緒です。表題も同じにしました。
標題の言葉は、三浦まりと福島みずほと前川喜平の座談会の、前川喜平の発言の部分から引用しました。この国の首相や官房長官やその取り巻き連中(政治屋、「忖度」官僚、「死の商人」的財界人、愚連隊等々)にはぴったりの言葉です。この言葉は、前川喜平の造語ではなく、誰かの書いた(言った)言葉からの引用のようです(カッコ「 」で括られていますので)。この座談会からも、できたら短く引用しようと思います。
本号(2019年8月号)も啓発的・刺激的論稿満載で、引用・紹介する論考を絞るのに苦労しますが、「臨機応変」で紹介します。傍点、傍線、まるぼしは、≪ ≫で代替します。引用文全体は、【 】で囲みます。引用文中の引用は、< >で囲みます。
「世界の潮」や二つの特集の前に、引用紹介したい論稿がありますので、下記紹介します。
●「「主権」を侵害する日米地位協定 ―― 沖縄県「欧州調査」が暴いた日本政府の“嘘” 前泊博盛」(P.151 ~ P.161)
安倍晋三や菅義偉等やそれに先行した自民(公明)党政治家連中や高級官僚連中(今回は特に外務省でしょうか)の、アメリカに対する「売国根性」や「忖度」等が白日の下にさらけ出されています。日本人は、相変わらずのイエロー・モンキーなのでしょうが、安倍晋三等は、「戦争を知らない12歳の軍国イエロー・モンキー」でしょう(従来は、安倍晋三を「戦争を知らない12歳の軍国少年」としていましたが、日本人が「モンキー」なのに、安倍晋三だけ「少年(人間)」は、持ち上げすぎですので、今回は上記表現としました)。引用紹介したい箇所はたくさんありますが、一か所若干長く(別に一か所短く)引用します、そこだけでも、日本の政府・官僚の売国性等の一部が明らかになるでしょう。できれば、是非全文を読んでいただきたく。
【 「 □ 米軍も受入国「国内法」遵守を明記
沖縄県の報告書で最も衝撃的な調査結果は、「駐留軍に対する受入国の国内法の適用について」の項目である。日本の外務省は「派遣国と受入国の間で個別の取決めがない限り、受入国の法令は適用されない」(外務省ホームページ)と説明してきた。しかし、調査の結果はドイツ、イタリア、ベルギー、イギリスにおいては「いずれの国も自国の法律や規則を原則として駐留軍にも適用させている」ほか、冷戦構造終結以降にNATOに加盟した東欧諸国のポーランドやルーマニアが米国と個別に締結している協定においても、「駐留する米軍や米軍が使用する基地に対する受入国の国内法適用が明記されている」ことが明らかになったからである。
しかも世界100カ国以上と地位協定を締結しているとされる「米国」は、公表されている複数の文書において、海外に駐留する米軍には、特別な取決めがない限り、「受入国の法律が適用される」との認識を持っていることが、今回の調査で確認されている。
米軍(国防総省)の低強度紛争の軍事作戦(米陸軍・空軍省フィールドマニュアル、付属書B「法規と低強度紛争」、1990年)には「受入国の法規は国レベルであっても、地方レベルであっても、国際協定による規定がない限り、その国の米軍に適用される」と明記している。
「個別の取決めがない限り、受入国の法令は適用されない」との日本・外務省に対し、米軍は「国際協定による規定がない限り、受入国の法規の適用」を逆原則とする米軍。同じく米軍の「作戦法規便覧」(米国陸軍法務総監法務センター、法務学校、2017年)にも「他国領域内に存在している軍隊は、その国の法令を遵守しなければならない」と規定されている。
この原則を「旗国法」と呼ぶことも註釈で書き加え、駐留軍が自国の法律を強制し、接受国の法令適用の免除を要求することによって起こる受入国との裁判権に関する「摩擦」を例に挙げ、「米国および近代におけるほとんどの大国は、武力紛争の場合を除き、旗国法をもはや信頼していない」と、米国兵士らに受入国の法令適用が一般的であることを明記している。さらに、「国際法上の一般的な規則は、主権国家はその国境内のすべての者に対する裁判権を有する」とし、「受入国の合意無しに、この主権国家の権利に対する特例は認められない」と断じている。
国務省の「国際安全保障諮問委員会 地位協定に関する報告書」(2015年)でも「一般的には(略)その国にいる人はその国の法律が適用されることが国際法上のルールであることが認められている」と明記されている。
米国・米軍ですら「一般国際法上」は接受国・受入国の国内法適用を基本としているにもかかわらず、日本・外務省は、なぜ逆の立場を取り続けてきたのであろうか。
・・・・・ 」(P.155 ~ P.156)
「 沖縄県では米軍関係者による殺人、強姦、窃盗、飲酒運転、軍用車両の高速道路転落事故など事件・事故が日々繰り返され、新聞紙面をにぎわすが、日弁連のドイツ調査では「調査を通じて、米軍関係者による強姦や殺人、強盗のような凶悪な犯罪について全く聞かれなかったことが強く印象に残った」と調査の感想が綴られている。」(P.157) 】
上記の文章を読むと、日本は「近代国家」ではないし、「主権国家」でもなく、今もって、アメリカに占領されている「植民地」ということになるでしょう。だから、安倍晋三は、事あるごとに、血税を大量に使って、御主人トランプに貢ぎ、揉み手をしに、アメリカに行くのです。日本会議の好きな「自虐」「売国奴」そのものですし、「男めかけ」そのものです。外務省HPの地位協定に関する文章は、今年1月に訂正されたようです。また、沖縄の米軍人による各種凶悪犯罪の「仕掛け人」は、安倍晋三、菅義偉 & 外務省であることもはっきりしましたね、辺野古基地建設という犯罪だけでなく。
「世界の潮」の諸論稿の題名と著者名を下記します。今回は引用できませんので、是非自分の頭で読んでください、皆、啓発的な論稿です。香港は厳しそうです。
●「安全保障関連法で変質していく自衛隊 ―― 南シナ海・共同訓練とMFO派遣 半田滋」(P.18 ~ P.22)
●「香港史上最大の民衆闘争 高橋政陽」(P.23 ~ P.26)
●「「トランプ・ドクトリン」はあるのか 会田弘継」(P.27 ~ P.30)
●「欧州議会選挙 ―― EUとポピュリズムのせめぎあい 庄司克宏」(P.31 ~ P.34)
この他にも、特集前の頁に、引用・紹介したい論稿はたくさんあるのですが、特集のあとに、できれば紹介したいと思います。
「特集1 争点としての消費税」の諸論稿の題名と著者名を下記します。伊藤周平の論稿と菅隆徳の論稿から、それぞれ引用・紹介します。
●「消費税愚策論 藤井聡」(P.88 ~ P.95)
●「社会保障財源論のまやかし ―― 応能負担原則に立ち返った税制改革を 伊藤周平」(P.96 ~ P.106)
●「中小企業経営者座談会 ―― 日本社会の重荷としての消費税 中村高明×沼田道孝×近江清」(P.107 ~ P.115)
●「法人税の累進課税化という選択肢 ―― 財源を生み出すオルタナティブ 菅隆徳」(P.116 ~ P.122)
では、引用・紹介を始めます。
●「社会保障財源論のまやかし ―― 応能負担原則に立ち返った税制改革を 伊藤周平」(P.96 ~ P.106)
わかりやすく、かつ詳細な論稿です。この中で、「社会保障・税一体改革」ということの「意味」を学びました。その言葉は、新聞・テレビ等マスコミではよく飛び交っていたようですが、その意味するところは理解していませんでした(民主党政権のときに出てきて、自民党も引き継いだようですが)。これは要するに、消費税を上げなければ、社会保障費を上げない、ということで、社会保障費の上限を消費税で限界づけようとする、議論と理解しました。しかし、消費税を上げたからといいって、社会保障費に回っていく保証はなく、今までも回っていったかどうかは検証されていない、とのことです。今回の、消費税の増税も、社会保障費の財源に使用予定のようですが、これなども、例によって、安倍晋三のフェイクニュースの類いと化すでしょう(彼ら政治屋や「忖度」官僚が消費税の使い道を検証するはずがありませんし、できないようになっているようです。また、拉致問題も、無策のくせに選挙のたびごとの争点化です(今回の参議院選挙ではどうなっているか知りませんが)し、今回のハンセン病裁判の控訴断念や「謝罪」も選挙目当ての妄動でしょう、今後の注視が絶対必要です)。一か所多少長く引用します。
【 「 3 社会保障財源としての消費税の問題点
何よりも、消費税は税制度として根本的な欠陥があり、以下のような問題を抱えている。
第一に、日本の消費税は、一部を除いてほぼすべての商品やサービスの流通過程にかかるため、家計支出に占める消費支出(特に食料品など生活必需品)の割合が高い低所得者ほど負担が重くなる逆進性の強い税である。こうした消費税の逆進性はすでに多くの論者によって指摘されているが、高所得者ほど株式譲渡益所得などの金融所得が多いため、所得比でみた消費税の逆進性はいっそう強まる傾向がある。
第二に、法人税は事業が赤字であれば課税されず、所得税は課税最低限までは課税されないが、消費税は事業の付加価値に課税する税のため、年商1000万円(消費税の免税点)以上の事業者であれば、事業が赤字であっても納税額が発生し、滞納が生じやすい。実際、消費税は、国税のあらゆる品目の中で最も滞納が多い。
第三に、消費税は、輸出還付金などで輸出大企業に恩恵を与える一方で、間接的ながら雇用破壊税としての性質も有しており、格差や貧困を拡大する。後者についてみると、企業は、正社員を減らし、必要な労働力を派遣や請負などに置き換えれば、それらの経費は消費税の「仕入れ税額の控除」の対象となるため(正社員への給与は対象外)、消費税の納税額が少なくなる。そのため、消費税の増税は、企業による正社員のリストラや非正規化・外注化を促進しやすい。実際、消費税率が5%に引き上げられた1997年以降、それに呼応するかのように、労働法制の規制緩和が進み、非正規労働者や派遣労働者が激増した。
以上のように、消費税は、貧困と格差を拡大する特徴をもつ不公平税制といってよい。そして、社会保障財源の主要財源を消費税に求めるかぎり、貧困や格差拡大に対処するために、社会保障支出の増大が不可避となり消費税を増税し続けなければならなくなる。増税ができなければ、社会保障を削減し、貧困と格差の拡大を放置するしかない。消費税は、社会保障の財源として最もふさわしくないのである。そして、逆進性の強さから消費税増税には国民の根強い反対があるため、増税は政治的に難しい。必然的に、消費税の増税なしに、社会保障は一切充実しないとした一体改革のもとでは、社会保障の充実も難しくなり、むしろ削減策がとられやすくなる。実際、安倍政権のもとで、消費税増税の先送りを口実にして、社会保障の削減が断行されている。
一般歳出予算には「ノン・アフェクタシオンの原則」がり、特定の歳出と特定の財源を結び付けてはならないことになっている。一体改革が打ち出した消費税の社会保障財源化は、この原則に明かに反する。そもそも、社会保障の費用すべて(一体改革では年金、医療・介護、子育て支援の社会保障四経費とされているが)を消費税で賄うことなど、とうてい不可能であり、そうしている国など存在しない。社会保障の費用は、あらゆる税収で賄われるのが当然だからである。」(P.100 ~ P.101) 】
●「法人税の累進課税化という選択肢 ―― 財源を生み出すオルタナティブ 菅隆徳」(P.116 ~ P.122)
「トヨタ、東電、新日鐵(日鉄)」というような不可触企業等の優遇社会からの脱却が、格差社会、階級社会からの脱却そのものです。
【 「 □ 大企業優遇税制の実態
上場企業の2017年度決算が公表されている。トヨタ自動車が2.4兆円を超える当期純利益(連結ベース)をあげるなど、史上最高益を更新する企業が相次いだ。上場企業全体では連結当期純利益42兆円と史上最高益を更新した。
ところで、これらの企業の実際の税負担率はどうなっているのだろうか。有価証券報告書から、これらの企業の法定実効税率と実際の税負担率を計算したものが表1である。
トヨタ自動車は法定実効税率は30.3%であるのに、実際の税負担率は18.1%、本多技研工業は30.4%に対して12.8%、三井物産は31.0%に対してマイナス1.5%という具合である。主要20社平均では30.8%に対して13.5%にすぎない。
実際の税負担がなぜこんなに低いのか。
理由は二つある。一つは大企業優遇税制のための莫大な減税があること(租税特別措置という)。二つは法人税の税率が比例税率(所得が増えても税率は上がらない一律税率)であるため、もうけが増えても、それほど税金は増えないためである。
トヨタ自動車は税引前純利益2兆2381億円で法定実効税率30.3%だから、法人三税は6700億円になるはずである。ところが実際に支払った法人税三税は4049億円となっている。調べてみると、試験研究費の税額控除で783億円、受取配当益金不算入で2171億円の減税になっていると推定される。
三井物産は税引前純利益3545億円で法定実効税率31.0%だから、法人三税は1100億円になるはずである。ところが実際に支払った法人三税はマイナス54億円となっている。受取配当益金不算入で2208億円の減税になっていると推定される。
大企業優遇税制がこれらの企業の税負担を大幅に減らしているのだ。大企業優遇税制をただせば、表2のように年間6兆3000億円(2016年度)の法人税の財源が生まれる。なお、試験研究費の税額控除は研究開発費減税といわれるもので、租税特別措置法による大企業優遇税制の一つである。受取配当益金不算入は子会社からの配当を利益から除くというもので法人税法による大企業優遇税制である。」(P.118 ~ P.119)
「 □ 法人税に累進税率導入で財源19兆円
・・・・・
③日本の法人税は高いのか?
資本金規模別の法人税負担率は、図2のように、資本金1億円超から5億円以下をピークに、資本金の規模が大きくなるほど負担率は下がっている。
法人三税の国際比較(2018年1月現在)を見ると、表5のように日本は29.74%で、アメリカ、中国、イギリスよりも高い。安倍首相や財界は中国並みに25%まで引き下げると言っている。
しかし、これは表面的な法定税率を示しただけだ。しかも国によって制度や仕組みに違いがあり、優遇税制も異なるので、表面的な法定税率を比較しても全く意味がない。安倍首相や財界は法定税率を「法人実効税率」と言って企業が実際に払っている税率のように思わせているが、これはごまかしだ。すでに述べたように法定税率は実際の負担率ではない。」(P.121)
「払う能力のある者から得れば、消費税の引き上げは一切必要ないのである。」(P.122) 】
安倍晋三の言うことは嘘まみれであり、消費税増税は必要ないということです。
「特集2 出版の未来構想」の諸論稿の題名と著者名を下記します。引用紹介はしません。
●「出版のどこから議論すればいいか ―― 出版ウォッチ半世紀の総括 清田義昭」(P.166 ~ P.174)
●「本をとおして人はつながる ―― 読書会という幸福 向井和美」(P.173 ~ P.181)
●「座談会 本あるところに、コミュニティ! ―― 沖縄県産本と読者・作り手・売り手の現在 新城和博×宮里ゆり子×森本浩平」(P.182 ~ P.190)
●「ドイツ出版界の対応と適応 シュピッツナーゲル典子」(P.191 ~ P.198)
●「すべての本を、すべてのチャンネルで、すべてのアカウントに ―― 挑戦し続けるアメリカの出版社 大原ケイ」(P.199 ~P.207)
●「崩壊と再生の出版産業 星野渉」(P.208 ~P.219)
上記の中では、向井和美の論稿と星野渉の論稿を、特に興味深く読みました。一点、本特集で教えられたことがあります。日本の出版業界は、「雑誌」を中心に動いて来たとのこと、この「書評」を書いている『世界』も雑誌ですが、書評者はどちらかというと雑誌(小生は理科系の雑誌がメインだったかなという感じです)よりも単行本・文庫・新書の「本」のほうに関心をもって、過してきましたし、どうも雑誌は、特に週刊誌は「フェイクニュース」の温床という気がしてなりません。そういう意味でも、雑誌の激減現象は「仕様がない」「自業自得」という感じがしないでもありませんが。また、浸透がいま一つの電子出版は、その費用が「閲覧権」では、書評者の食指はのびないな、というのが実感です、自分のものにならないといやですね。そして、出版とは多少論点がずれますが、ちょっと前から、シェア・エコノミーなんていうのを流行させようという風潮もあるようです(エコロジーの観点から?)が、こちらも「眉に唾」で見学しています。
特集以外の興味深い論稿の題名と著者名を下記します。引用・コメントを付加するものもあります。
●「核軍縮への課題 ―― 核兵器禁止条約成立から2年、いまなにをなすべきか 川崎哲」(P.35 ~ P.44)
●「拉致問題と米朝平和プロセス 和田春樹」(P.45 ~ P.53)
上記二つの論稿は非常に啓発的な論稿です、引用はしません(短く引用はできません)が、是非一読をお勧めします。
●「新連載 戦友会狂騒曲(ラプソディ) ―― おじいさんと若者たちの日々 第1回 変調をきたす「戦友会」 遠藤美幸」(P.54 ~ P.61)
非常に興味深いルポです。引用したい箇所はたくさんあるのですが、たくさんありすぎて、引用困難ですので止めにします、是非自分の頭で読んでください。遠藤美幸の著書『「戦場体験」を受け継ぐということ ―― ビルマルートの垃孟全滅戦の生存者を尋ね歩いて』(高文研、2014年)をなお一層読みたくなりました。
●「連載ルポ 孤塁 ―― 消防士たちの3.11 第6回 届かない情報 吉田千亜」(P.62 ~ P.71)
今回も引用はしませんが、是非一読勧めます。
●「新連載 慰安婦がいた時代 ―― 新資料とともに改めてたどる 第1回 異論 流れ止められず 佐藤純」(P.123 ~ P.131)
●「戦後74年 新資料発掘 新資料が語る日本軍毒ガス戦――迫撃第五大隊『戦闘詳報』に見る実態 松野誠也」(P.132 ~ P.142)
このような地道な資料の発掘・読み込みが「フェイク」な歴史認識・歴史観を駆逐するのだと思います、是非一読を! 松野誠也の論稿から一か所短く引用します。
【 「 『晋東作戦戦闘詳報』が作成されてから80年後になって、ようやくそこに記された実態が明るみになったわけだが、このことは、現代の私たちがまだ知らない歴史的事実や戦争の実態がいまなお存在することをあらためて示すものである。
日本は、15年戦争期において国内外に夥しい犠牲を強い、無残な敗戦を経て「政府の行為によつて 再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」(日本国憲法前文)したが、昨今は、戦争をめぐる歴史の風化が著しいだけでなく、事実にたいする誠実さが失われつつあると見受けられる場面が多いように感じる。悲惨な歴史を繰り返さないためにも、15年戦争の実態を謙虚に見つめ直し、史実の重みを現代の課題への取り組みに活かしていく必要があるのではないだろうか。」(P.142) 】
●「大学無償化法の何が問題か――特異で曖昧な制度設計 小林雅之」(P.220 ~ P.229)
引用はしませんが、本論稿からだいぶいろいろなことを学びました。この「大学無償化法」というのは、大学への権力の介入を一層強めること、低所得者層への奨学金支給により低所得者層内の分断をはかると同時に、中所得者層との分断をはかる目的もある、ということ。従来の奨学金は残して、銀行の「サラ金」事業は温存する。日本育英会や住宅金融公庫を変質させて、「奨学金」も「住宅融資」も、銀行が儲かるように「サラ金」化したのは、だいぶ前からです。書評者が奨学金を貰っていたときには、奨学金の返済には利子は付きませんでした。
「保育園落ちた! 日本死ね!」の結果としての乳幼児保育・教育の無償化も、建築業者や幼稚園・保育園業界の金儲けのために利用されたにすぎません。国民の税金を使って、業界団体を潤すだけです。園児や父母、保育士や幼稚園教諭の苦難はこれから一層ひどくなるでしょう。
●「座談会 生きづらさに立ち向かう(下) ―― 女性篇 三浦まり×前川喜平×福島みずほ」(P.230 ~ P.238)
一箇所引用します。
【 「 前川 安倍総理が繰り出す言葉は、官邸の官僚が考えているのでしょう。安倍総理、菅官房長官の周りに、今井尚哉、和泉洋人、長谷川榮一など、知恵の回る役人や役人上がりの人間がたくさんいて、キャッチ―な言葉を次々に繰り出す。「女性活躍」や「人づくり革命」などは全部官邸発ですよね。」(P.237) 】
「今井尚哉」「和泉洋人」「長谷川榮一」、これらの名前を憶えておきましょう。ちなみに、安倍晋三は今井尚哉に頭が上がらないようですね。まぁ、今井尚哉は東大法学部卒ですから、安倍晋三は「学力」では到底及ばないでしょうし、「知力」でも適わないでしょうね。なお、尚哉は「なおや」ではなく「たかや」とのこと(Wikipediaによる、2019年7月17日(水)閲覧)。
●「モーディーはなぜ圧勝したか ―― 2019年インド総選挙の分析と展望 中溝和弥」(P.250 ~ P.261)
この論考も推薦です。現在のインドの政治状況が良く分かります。インドも中国に負けず劣らず「怖い」国ですね。「インドゥー至上主義」はいけません。「世界最大の民主主義国家」とは到底言えないと思います(確かに、選挙はしていますが。ヒトラーも選挙はしました。日本でも、今、参議院選挙を行っていますが、これも「民主的選挙」なのでしょうか? 日本も「民主主義国家」なのでしょうか?)。やはり「宗教は民衆のアヘンである」でしょうか? 日本にも歴とした宗教がありますから、神道です(教義は「融通無碍」「臨機応変」等々でしょうか)。
引用・紹介、コメントもできませんが、興味深い論稿の題名と著者名を下記します。
●「連載 すぐそこにある世界 第5回 アッラーとやおよろず 師岡カリーマ・エルサムニー」(P.262 ~ P.264)
●「お許しいただければ 思うだに震える R・リンド 行方昭夫=訳、さらにお許しいただければ 行方昭夫」(P.265 ~ P.269)
●「リレーコラム 沖縄(シマ)という窓 島社会を撃つ ―― ハンセン病市民学会 山城紀子」(P.270 ~ P.271)
●「新連載 戦闘機の政治経済史 第1回 F-X選定 ―― 飛び交う思惑 福好昌治」(P.143 ~ P.150)
●「連載 我が総括 ―― 体験的戦後メディア史 第8回 橋本龍太郎の「改革と創造」 田原総一朗」(P.237 ~ P.249)
●「米国で中絶規制の動きが加速 アムネスティ通信」(P.290)
●「連載 メディア批評 第140回 (1) 歴史と現在をつなぐ視点 ―― 天安門・香港・イラン (2) 令和の時代の官邸報道と事件報道 神保太郎)(P.72 ~ P.79)
●「連載 脳力のレッスン 第208回 仏教の原点と世界化への基点 ―― 17世紀オランダからの視界(その58) 寺島実郎」(P.80 ~ P.83)
●「連載 片山善博の「日本を診る」 第117回 民主主義の最後の砦 ―― 最高裁判所裁判官の国民審査」(P.84 ~ P.86)

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世界 2019年 08 月号 [雑誌] 雑誌 – 2019/7/8
登録情報
- ASIN : B07T1J6KR2
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