鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「日本を救う道」

・緊急提言 日本を救う道
編著:堺屋太一
出版:日経プレミアシリーズ


東日本震災後の日本の方向性について提言する一冊。
直近では池上彰氏の作品(「先送りできない日本」)を読んだけど、あれは全体的な方向感を考える上で役に立つ作品。
もう少し具体的な「政策」に言及したものが読みたいなと思って、本書をチョイスした。
堺屋太一氏は官僚出身(通産省)だからね。



内容としては堺屋太一氏が、各界の識者と対談し、それぞれの専門分野について今後の日本の進むべき方向について考えると言うもの。
取り上げられる分野は、

「金融」(岩田一政氏)
「電力」(円尾雅則氏)
「産業」(細川範之氏)
「東北」(大滝精一氏)
「技術力」(宋文洲氏)

で、最後に堺屋氏が全体的な提言をまとめている。
読む前はもう少し官僚よりの人選がされてるのかなと思ってたんだ
けど、思ったより幅広い人選だったかな?(学者が多いのは、「官僚的」とも言えるかもしれないけどね)
とは言え、それぞれが専門家なので、「イメージ」じゃない具体的な事実をベースに語られる話は、非常に興味深かったよ。



個人的には特に証券会社の立場から電力業界を見てきた人が語った「電力」の項は、かなり面白かった。
「送発電分離」がポイントなんじゃなくて、「電力会社間の競争」こそが重要・・・ってのは、確かに「言われてみれば」。

そのハードルの高さも痛感するけどね。



宋氏と語られる、日本技術の「傲慢」と、その向うにある「官僚主義」の話も興味深い。
正に福島原発における「東電免責」はこの論点で議論されることになるだろう。

「官僚文化への不信感が高まっており、それが日本を変える」

という堺屋氏の主張には「期待」を持ちたいとは思っている。
もっとも民主党不信が一種の「官僚回帰」の流れも作っていて、ここは結構微妙かもなぁとも感じてるけどね。



堺屋氏の提言のポイントは、
「東北復興院の設立」と
財源としての「エネルギー追加課税」
かな。

その向うには、地域主権(道州制)への移行と、グローバル経済へのキャッチアップがある。
異論はあるだろうけど、一つの方向性としては耳を傾けるべき提言と思う。



まあ問題は「誰がやるのか」。
復興院のトップについて氏は、



<政党派閥にとらわれない人物を総裁とし、各府省横断的な権限が与えられるべきだ。首長(総裁)には、地域と実務の実情に明るい実業家が理想だが、政治家出身でも悪くはない。但し、政治家が就くなら議員辞職して将来とも政治的野心のないことを明確にすべきだ。>(P.216-217)



として、関東大震災後の「帝都復興院」総裁・後藤新平の例を挙げている。

しかしこれに相応しい人材の候補が堺屋氏にあるのか・・・。



小沢一郎か、孫正義か?



まさかね・・・?