鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

2017年01月24日のつぶやき

色々考えさせられる:読書録「クラッシャー上司」

・クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち
著者:松崎一葉
出版:PHP新書


「自戒」と「心覚え」のために。
「過去の成功体験を絶対のものとして部下に押し付けるんだけど、社会・経済環境が変わっているために実態と乖離した指導・圧力になる」
…ってあたりかなと思ってたんだけど、そういう側面に加えて、そもそも「クラッシャー上司」自身が精神疾患を持っている…ってあたりが作者の指摘。
「未熟型うつ(新型うつ)」を患う若者と同様に、クラッシャー上司も「未熟」であり、その差は「仕事ができるかどうか」だけ(まあそこが大きいといえば大きいけどw)…という指摘には考えさせられます。
「自分の行為が善であるという確信」と「他人への共感性への欠如」が、その「未熟」のベースです。


本書ではそこから「クラッシャー上司の成長過程」「クラッシャー上司を生み出す日本の会社」に話を進めます。
まあ「家庭環境」の方は、「ヒトそれぞれってとこもあるだろう」とも思うんですが、パターンとしては「ありえるかな」とも思います。高度成長期のサラリーマン家庭って、多かれ少なかれそういうとこあったろうなぁ、と自らも省みつつ…。
だからって誰もかれもが「クラッシャー上司」になってるわけじゃないですが。


「日本社会・会社組織の問題点」は頷けるところが少なくないかなぁ。
「クラッシャー上司」は別に日本だけにいるわけじゃないと思うんですよ。伝記とかエピソードを読む限りは、スティーブ・ジョブズビル・ゲイツも相当な「クラッシャー上司」体質でしょうw。
ただ日本と違うのは、欧米が「ジョブ型」の雇用形態なのに対して、日本が「メンバーシップ型」の雇用組織となっている点。
「仕事をするから会社に入る」のではなく、「会社のメンバーになって、与えられた仕事をする」。
そのため「組織の一員(メンバー)」としての素養が強く求められ、それが「同調圧力」にもなって、(どのような手であれ)「成果」を出しているメンバー(クラッシャー上司)への批判がしづらくなり、「クラッシャー上司」から逃げ辛くなる。会社や社会にも、「仲間意識」を重視する風潮が根強くあることから、「成果」を言い訳に人間としての資質に目をつぶって、組織に波風立てないことを優先してしまう流れになりがち。
ここら辺の感覚は、僕自身分からなくもない。
電通」や「東芝」の話なんかも、結構このラインに通じるところありそうですからねぇ。


そこから脱出するためにどうするか?
最終章にはそこが論じられていますが、(作者自身、認めているように)なかなかこれが難しい。
雇用環境が「メンバーシップ型」から「ジョブ型」に変われば一定の変化はあるでしょうが、なかなかそうはいかないし、「メンバーシップ型」には「メンバーシップ型」の「良さ」もありますからね。
CSRの重視」ってのが1つの主張なんですが、「即効性ないなぁ」と思ったものの、結局はココかなとも考え直しました。
CSR」てのは言い換えれば「経営理念」であり、一段高い視野からの「あるべき姿」なんですよね。前例や既得権益を是とせず、正しい方向に変えていく/変わっていくには、やはりそういう「高い視座」が必要なのではないか…と。
そうじゃないと、結局イノベーションが求められるこれからの会社にとっては、結局は硬直した組織人を拡大再生産するだけになって、組織そのものを衰退させてしまうのかもしれません。


最終章にはもっと「即効性」のある具体的な対処方法も載ってます。
これはこれで参考になるかも。
ま、一番良いのは、こんなの関係ない組織で働けるようになることなんですけどね。