鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

2017年11月12日のつぶやき

安定のディーヴァー節:読書録「スティール・キス」

・スティール・キス
著者:ジェフリー・ディーヴァー 訳:池田真紀子
出版:文藝春秋kindle版)

スティール・キス

スティール・キス


リンカーン・ライム」シリーズ第12作。
今回のアイディアの「ネタ」は「IoT」。
スマート家電・自動車。デヴァイス等のセキュリティを潜り抜け、それらを「凶器」として使う犯人が登場します。
相変わらず取材はシッカリされてて、薄ら寒くなるシーンもちらほら。
アップデートは小まめにせんとねぇ。


直接の危害を加える犯人に加えて本作が指摘する「悪」は企業の利益至上主義。
「費用便益分析」
被害発生対策を講じる費用と、その被害の発生確率、そのコストが企業利益に与える影響を分析し、「対策をしない」と判断した企業の存在が本作の悲劇の根底にはあります。
なんか最近の日本企業の不祥事のアレコレを思い出すと…


リンカーンとアメリアの関係も一歩一歩。
本作での「一歩」についてはもうチョット劇的に扱ってもらっても良かったようには思うんですが(二人の関係のファンとしては)、まあ「今更」かなw。
すでに本国では発売されてる次作が好評なようなので、そっちの方で突っ込んでるのかもしれません。


読み終えて思うのは、
「やっぱり本作は海外ドラマシリーズに向いている」
Netflixさんあたり、動いてませんかねぇ。

「どうすべきか?」は放り投げっぱなしですが:映画評「ザ・サークル」

普段なら観ないタイプの映画なんですが、あの原作をどう処理したのが気になって…。
脚本には原作者自身も絡んでますしね。



ザ・サークル


かなりビターな原作のあのラストを、「まさか、あのままはやらんやろう」とは思ってましたが、全体的には相当原作に沿っているのに、ちょっとびっくり。
エマ・ワトソン演じる主人公は原作より「良識」寄りですが、まあコレは当然でしょう。
その主人公にして、あのラスト。
まあ、溜飲が下がるところもありますが、全然「勧善懲悪」じゃない。
コレからの社会、あれでええの?


まあハリウッドってのは「人々の善意」やら「団結」やら「つながり」やらが大好き。
無名の人たちが主人公を応援する…ってシーン、多いじゃないですか(僕も大好きw)。
そういう意味でSNSの基本理念っていうのは、ハリウッド的でもあるんですよね(西アメリカ文化的というか)。
そんなこんな考えると、こういうオチもなんとなく分からんでもないというか…。
全然「回答」は指し示されてないけど。


原作で一番ゾッとしたのは、(映画にもなった一般人を追い詰めるシーンもそうなんだけど)「自分の祖先が何をしたかを明らかにする」という「パーフェクトパスト」というプロジェクト。
自分ではなく、「祖先」がしたことによって追い詰められて行く人物の姿には背筋が寒くなりました。
「過去」に「現在」が追い詰められて行く。
コレって、ネットの一面としてあるものです。
しかし「現在」はどこまで「過去」に規定されなければならないのか?
もちろん「過去」の積み重ねが「現在」ではあるのですが…。(ましてや「自分」でない「先祖」のことまで)


まあ何にせよ、予想以上に本作はよくできた映画だったと個人的には思っています。
ちょっとした「未来の技術」の映像化としても、なかなかクール。
それはそれで「使ってみたいな」と思わなくもなかったですよ。
あそこまで「シェア」に奔走したくは、もちろんありませんがw。