パラカロ流実践多言語習得術 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-04-15

aspectdigitalmedia+parakaro2012-04-1

第64回:グローバルビジネスは、多言語学習の時代へ(5)

今回は、ポルトガル語です。成長著しいブラジルの公用語を紹介いたします。

ビジネスチャンスに直結するポルトガル語

イタリア駐在の一法師さんは、英語が大の苦手という前評判付きで、研修を受けに来られました。しかし、いまさらイタリア語を最初からなんてとんでもないということで、やはりいやいやながら英語の研修を20時間ほど受けて、イタリア語については丸腰状態での現地赴任でした。

ところが、三年後に一時帰国され、工場横の駐車場でばったりお会いした時は、なんと紫のスーツに濃いめの紫のマフラー、遠目にもピッカピカに光り輝く靴で向こうから歩いてくる姿は、どう見てもイタリアン・マフィアが会社にいちゃもんを付けに来たかと見紛うばかりです。

当時、グローバルマネジメント研修の走りのような研修を行っており、そのことはグローバルという用語さえ、あまり知られていなかったため、仕方なく異文化研修の名前で行っていたものがありました。彼は、その開講式に出席するように上司に命じられて会社に来ていたのです。研修では、開口一番海外の仕事では“amor(イタリア語で「愛」)”が重要である。ということで話が始まり、それぞれの綴りに仕事での重要ポイントをかぶせて説明をされたのでした。

まさに、あの「英語なんて、無理無理!」の一法師さんとは思えない変わりようでした。いったい赴任先のイタリアで何があったと言うのでしょう。

ブラジルでラテン語が話されているのは、なぜか?

さて、イタリア語をはじめとするラテン系の言葉というのはどんな言葉でしょうか?歴史を紐解くとその昔ヨーロッパにローマ帝国がありました。ここでの公用語ラテン語でした。その後、歴史の変遷によって、このローマ帝国は分裂していきます。21世紀の今日、イタリア、フランス、スペイン、ポルトガルなどの国の言葉は大きくラテン語の影響を受けているためラテン語系の言葉と言われています。

マゼランやコロンブスが活躍した大航海時代の頃は、スペインや、ポルトガルの人々が新大陸に渡り、行った先に入植しては、原住民たちに文字通り自分たちの言語を植え付けていきました。現在では、特にメキシコより南の国々ではスペイン語ポルトガル語などのラテン語系の言葉を話しているようです。そこで、これらの国々もまた、ラテン系のアメリカ大陸の国々という意味で、<ラテン・アメリカ>と呼ばれています。

一昔前(1950〜70年代)であれば、ラテン語系の言葉の中心はやはりフランス語だったように記憶します。なんといっても20世紀初頭までは世界の文化の中心を自負していました。洗練された絵画、音楽、哲学などの思想、また、たまにテレビや映画で見るパリの華やかさは、ニューヨークやロンドンとは違った上品な感じを持ったものでした。

ただし、世界中で話されているラテン語系言語の筆頭は、人口の多さから言えばスペイン語であることは歴史から言っても事実でしたので、より合理的に言語を学習して将来に役立てようと考える人はスペイン語を選択した人もいたかもしれません。

日本との関係が深い国、ブラジル

ところが、現在の一押しは何と言ってもポルトガル語です。これは、このお話を読まれている方がビジネスマンであればという条件付きでいえることですので、個人的な興味で勉強しているという方には当てはまらないかもしれません。ただし、このポルトガル語は本国ポルトガルで話されている言語だからという理由からではなく、ラテン・アメリカのブラジルで話されていることが大きな理由なのです。

以前、お話ししましたBRICSの中に入っており、日本の製造業の多くがこの国の持つ潜在的な可能性に期待しているのです。

ブラジルは、南米大陸中の大国です。南米のほとんどの国々がスペイン語を話すのに対して、この国だけはポルトガル語を話します。日本からの移民の多くはこの国に渡って行った経緯があり、日本とも関係の深い国です。多くの日系のポルトガル人が日本に働きに来ており、関東地域では桐生市、中部関西エリアでは主に浜松市には多くの日系ブラジル人の方々が、これも多くは製造業で働いています。これらの町にはほかの町で見られない独特の雰囲気があります。町のあちこちでブラジル人を見かけますし、スーパーなどにもブラジルの製品があふれています。ブラジル系のレストランや、ブラジルの銀行まであって、ブラジルのカラーである黄色が何となく多いのです。

ところで、最近私たちがテレビや新聞で目にするブラジルについての情報は、

1.豊富な地下資源を埋蔵している

なんといっても、国土面積の広い国です。その地下には様々な地下資源が眠っています。

2.バイオ燃料をはじめとするエネルギー資源の分野で将来性が見込まれている

地下資源だけでなく、広大な国土で生産されるトウモロコシなどの農業生産物を工業に転換していく技術の開発によって二次産業の分野で大きな発展が期待されています。

3.航空機産業ではすでに欧米の隙間を縫った中型機で世界でも大きなシェアを取る工業国

このような工業を核としての将来的な発展の可能性は、中国やインドと並んで将来の主要国の一つになると予想されています。

ということになるでしょう。

ポルトガル語の特徴

紹介しましたように、ブラジルではポルトガル語が話されています。これらラテン語系の言葉の特徴を、英語と比べながら見ていきたいと思います。

a. 人称による動詞の変化が複雑。人称と数が代わると、すべてについて動詞の形が変わる

私はエンジニアです。という文を例にとれば、日本語では、<私>の部分が、<あなた><彼><私たち><あなたたち><彼ら>に代わっても、最後の<です>の部分は不変です。

これが英語になると、<私>の時と、<彼>の時、<そのほか>の時の三つで<です>の部分が代わります。たとえて言えば、<私はエンジニアです。><彼はエンジニアだす。><私たち/彼らはエンジニアがす。>のような感じになります。

しかし、ラテン系の言葉ではすべての場合で<です>が代わるイメージとなります。

<私はエンジニアです。><彼はエンジニアだす。><あなたはエンジニアげす。><私たちはエンジニアでんす。><彼らはエンジニアだんす。><私たちはエンジニアげんす。>といった具合になります。複雑ですね。その分、動詞の形を見ただけで、それが<私>のことか、<あなた>のことか、<彼>のことかが判別できることになりますから、主語の部分は省略されていいことになります。

b. 単数と複数での変化が複雑。名詞に<性>がある

英語では単数や複数で頭を悩ませた方もいらっしゃると思いますが、それでも、a pen が複数になると、<a>は消え去って、後ろに<-s>が付き、<pens>となるのでした。ところがこれは、言語全体から言えば比較的簡単な変化の仕方に分類されるのです。

ラテン語系の言葉では、

  1. 単数での<a>は、複数になっても消えないで、たとえば<as>というように複数を示す冠詞となる。さらに、語尾に<-s>などがつく。
  2. さらに複雑なのは、名詞に<男性><女性>の<性>があること。その性にしたがって冠詞と語尾の変化が出てくる。
  3. 英語では a good engineer/a good car というように形容詞はいつも同じ形で使うことができるが、ラテン語系では形容詞は後ろにある(ふつうは前にあるのですが)名詞の<性>に合わせて形が変わる。たとえばengineerが男子名詞で、carが女性名詞だとすれば、o goodo engineer/a gooda carのようになってしまう。

大まかに説明しただけでうんざりしたという方がいらっしゃるかもしれません。しかし、ラテン語系の言葉はルールががっちりしていて、それさえ守れば何とかなるのです。それに比べれば、英語は一応のルールはあるものの、例外の数が半端ではないくらいに多いという特徴があります。「例外こそが英語の文法である」などと穿った言い方をした人もいると聞いたことがあるくらいなのです。そのため、永遠に学び続けなければならないようなイメージになってしまうことも事実なのです。入り口は難しそうですが、やってみれば意外と何とかなるというのが、ラテン語系の言語の特徴といえるかもしれません。

ここで、話は最初に登場していただいた一法師さんのイタリア語の話に戻ります。最初の頃は、嫌いな英語で何とかやろうとしたと言うのでした。しかし、やっていくうちにイタリアの方々の英語のレベルは一法師さんの比較にならないほど低く、そもそも英語というものをバカにしているんじゃないかという雰囲気を感じたと言うのです。

そうかもしれません。上のような厳格なルールの中で、文が構成されるラテン系の言語からすれば、英語というのはザーッと流しているように見えてしまうのです。学生時代、英語の文法書の中で、「英語はヨーロッパの言語から見れば知的な言語ではない」という例文に出会ったことがありますが、その時のショックは今でも鮮明に記憶されています。誰が言ったのか、どのような状況で言われたり書かれたりしたのかもわかりませんでしたが、自分がこれだけ苦労している英語が知的でなかったら、いったい知的な言語っていうのは何語だ?と憤りと挫折感を同時に抱いたものでした。

にもかかわらず、一法師さんはイタリア語の世界でのびのびと楽しんでいたのでした。実際、この方がどのくらいイタリア語が話せたかは知りません。しかし、重要なのはあの英語が嫌いだった人がすっかり変わっているということでした。同じようなことは、実は、他の言語でも見られるのです。英語は嫌いだったけど、現地に行って毎日話してちょっとでも通じたりしていると、楽しくなると言うのです。確かにその場ではめちゃくちゃな間違いをしているかもしれません。しかし、本人も、そして周りも、全くコミュニケーションができなかった状態から少しずつ、実に少しずつではありますがコミュニケーションが成立し、そのことが仕事を回す方に役立っていることを実感しているのです。

英語以外の第二外国語攻略が面白いのは、なぜ?

それを後ろから後押ししているのは、日本人の私たちにとって、英語以外の第二外国語は、ほとんどの人にとっては全くの入門レベルから始めなければならないという環境です。このことが、いいことなのか、悲しいことなのかは別にして、ほとんど誰もが、第二外国語の入り口に立った段階では横一列に並べる、全くの平等な状態でスタートできるということからくる心理的な側面があるでしょう。

まず、英語のようなコンプレックスに悩まされることがない。

現在の日本では、地方に行っても、小学校や中学校のレベルですでに外国で英語を話すようになった、あるいは、素晴らしくネイティブっぽい発音をする子がクラスにいたりします。先生なんかよりはるかに発音は本物で、周りにいる我々からすれば、この段階でやる気がなくなるのも人情です。ところが第二外国語ではこのコンプレックスにさいなまれることはありません。

それだけに、やればやるほど自分は一人歩きの独走態勢です。それは、やる気だって出ます。学校で学ぶわけではありませんから、テストや、こまごました文法の知識のチェックなどありません。見よう見まねでも通じればオッケーです。もちろん、自分でしっかり本を買い込んでコツコツして、家庭教師もつけてやってもオッケーです。つまり、人の数だけ学習のルートがあるわけです。自分だけの、自分のためのオリジナルコースを自分で作ってやるのと同じです。半分はクリエイティブなわけで、趣味と入れ子になっています。楽しくないわけがありません。

おまけに、仕事は回るようになるし、行動範囲も俄然広くなり、仲間も増えます。もちろん、職場でも一目置かれます。

こうした理由で、一法師さんは、イタリア語にのめりこんでいったのでした。こうやって見てみると、文法が難しいとか言うのは、単なる言い訳でしかなかったのかもしれません。

次回は、日本に馴染みが深いタイの言葉、タイ語をご紹介させていただきます。お楽しみに。

ゼロから話せるブラジル・ポルトガル語

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