見てみたい大地の風景
「日本の地形・地質」(北中康文・斎藤眞・下司信夫・渡辺真人)読了。
観光地まで自分の足で辿りつく人は多いかもしれないが、自分の頭で辿りつく人はどれくらいいるのだろう?図鑑であると同時に旅行ガイド。カルスト地形から地熱発電所まで。もっと深く、もっと楽しい旅をするために。
日本の地形・地質―見てみたい大地の風景116 (列島自然めぐり)
- 作者: 斎藤眞,下司信夫,渡辺真人,北中康文
- 出版社/メーカー: 文一総合出版
- 発売日: 2012/03/03
- メディア: 単行本
- クリック: 5回
- この商品を含むブログを見る
本書もそういう流れの一環と言える。ジオパーク、地質百選、世界遺産などから、地形・地質に関連するスポットを紹介している。そのラインナップは、フォッサマグナから崩壊地、地熱発電所まで。単なる図鑑ではなく、図鑑であると同時に、ガイドブックも兼ねているのである。
一昨年、屏風ヶ浦を見に行ったときのことを思い出す。その旅は銚子に行くためでもなく、海水浴に行くためでもなく、ただ、屏風ヶ浦を見に行ったのである。当然、いろいろと勉強することになる。そもそもなんでこんな地形ができたのだろう?どうやら神奈川県にも似た地名があるようだ。化石って簡単に取れるのだろうか?
こうして疑問は積み重ねられ、知識はインターネットから脳内の一時ファイル置き場へストックされる。そして、屏風ヶ浦の前に立つとき、ただの崖は、1億年スケールの厚みを持った「屏風ヶ浦」となって僕の目の前に現れたのである。
旅はこうでなければならない。自ら探し、自ら求める過程にこそ「楽しさ」が宿っているのであって、そうでなければ、どんな不思議な地形も無感動なまま通りすぎてしまう。本書は、そうならないための、自発的な旅を楽しめるガイドブックとして意義深い一冊である。
まあ、そうであればこそ惜しいとも思うわけで。マニアじゃなくて一般読者を対象とするなら、地質以外の山も森も湿原も(すべて続刊予定)ぜんぶ興味の範疇だろうに。地域別に分けて「見てみたい東北の風景」とかにしたほうが良かったんじゃないかな?さらに言えば、横軸をカテゴリ(山・森・地質とか)、縦軸を地域にして、関連する項目を興味に応じて縦横断できる仕組みとか。こういうの電子書籍でできるんじゃないの?読んだページからオススメルート検出、とかさ。あと、デザインがちょっと古いというかマジメというか。もっと新鮮な感じにならないかな、というのは思うところ。なにげに続刊予定の「日本の川」が気になりすぎる……
本書は、本が好き!経由、文一総合出版様から献本いただきました。ありがとうございました。