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けれっぷ彗星 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2013-12-08

今年読んでよかった本 in 2013

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毎年恒例、今年読んでよかった本をご紹介。今年は既読本をすべてブログに落とすのは難しかったけど、しかるべきものは書いたと思っている。「岡本太郎の宇宙」も読破したし、民俗学の二大巨頭である柳田國男南方熊楠の世界に肉薄できた。「仕組みや制度」とは別に人が編んできたものの成り立ち、そしてそれをどうやって観るかという技術についての「深み」は、今の時代、触れないまま一生を終えることも珍しくないものだ。そうしたものに触れることができたのは、ありがたい。

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今年読んでよかった本 in 2012
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今年読んでよかった本 in 2010
今年読んでよかった本 in 2009

今年読んでよかった本 in 2013

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

「魔法にはシステムが必要か?」はファンタジー創作界隈で度々話題に出るものだけど、マジックリアリズムはさらにその上を行く。人が動物になることに一切の理屈はなく、むしろ、理屈があってはならない。かつて神話や民話が持っていた力というのは、ファンタジーとは似て非なるものだ。きっと、文学の世界では、この「物語ダイナミズム」は西洋的な考え方(個、因果関係、システム)のカウンターとして登場したのだろうけど、今の社会は、「結局、西洋的な考え方を推し進めたら、神話の世界が見えてきてしまった」というところと思う。ビッグデータが意味を生み出すとか、twitterのつながりが集団の持つ意識の質を変える、とか、そういうあたりで。そういうマジックリアリズムの最高峰として挙げるべきなのが「百年の孤独」。これが一人の頭のなかでつくられたということには、まだ納得がいかない。

http://d.hatena.ne.jp/ast15/20130119/p1

遠野物語―付・遠野物語拾遺 (角川ソフィア文庫)

遠野物語―付・遠野物語拾遺 (角川ソフィア文庫)

その原型は、日本では遠野物語になるのだろう。もちろん、赤坂憲雄が言うように、これはラスボス柳田國男の「文学作品」なのであって、決して原石などではない。けれども、どこにでもあったはずの「遠野物語」がなぜ遠野にしかないのか?ということを考えれば、「見つけ出す」ということの大切さと難しさがよくわかる。「ある」ということと「認識できる」ということはぜんぜん別のことなのだ。だから、遠野物語文学作品としてでなければ成立し得なかったのだとわかる。「それ」を多くの日本人が必要としているはずだという確信と、都市生活者は始原を再構築すべきという信念が、柳田國男に筆を取らせたのだろうから。

http://d.hatena.ne.jp/ast15/20131116/p1

日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)

日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)

今年のベスト。「見つけ出す」ための眼がどういうところに宿るのか?それは技術なのか、心の持ちようなのか?それは結局わからずじまいであったが、そんなことは脇に置いといて、とにかくイザベラ・バードは素晴らしい。明治時代の日本に降り立った女性旅行家が目にしているのも、やはり遠野物語と同じように、今はもう存在しない日本。この、使命感の帯びた眼差しはどこから来るのだろう?

http://d.hatena.ne.jp/ast15/20130330/p1

「日本奥地紀行」で、貧困層とスラムの不在に、バードが驚いていたことは、日本人にとって大きな驚き。しかし、世界的には、貧困はそこかしこに見られるもの。世界が近くなるということは、それだけ、世界が複雑になるということだ。善意だけで解決する社会問題は、もうほとんどない。絶望的な状況に対する唯一の希望は、丁寧な議論の積み重ねである。

http://d.hatena.ne.jp/ast15/20130103/p1

ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上) (新潮文庫)

1,2巻はともかく、3,4,5巻は読むべき。カエサルがいたからこそ、ローマの仕組みが驚異的だとわかる。ローマと同盟諸国のネットワークを分断する、という打ち手は、ローマにとって「想定外」の事態だったろう。けれども、それだけの戦略と大胆さを持つ英雄でさえも、「ローマ」という仕組みには勝つことができなかったのだ。

http://d.hatena.ne.jp/ast15/20130831/p1

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

僕らは仕組みのなかで生きているけど、完全にコントロールされているわけでもない。「都市」も、ある意味、仕組みと言えるだろう。都市は認識されて初めて成立する、ということ。複数の人間に認識されなければそれは都市ではない。都市は、都市であるという認識によって成立している。その認識を解体すれば、どういうことになるか?そういうシミュレーションに挑戦しているのが本書である。

http://d.hatena.ne.jp/ast15/20130713/p1

森のバロック (講談社学術文庫)

森のバロック (講談社学術文庫)

中沢新一による、南方熊楠の紹介本。これはもう、都度引用しているけど、「自分たち市民の住む都市なるものの、隠された始原を探求しようとしていた」。これが、現代の民俗学人類学の駆動力となっていることは疑いがない。南方熊楠柳田國男がいかに異質だったか、というのがよくわかる。

http://d.hatena.ne.jp/ast15/20130115/p1

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

番外編として、マンガ部門。9巻まで読んでるけども、八軒という主人公が、今までの時代にはあまりいなかったように思う。一言で言うと、主人公らしくない笑。自分が「これ!」という目標に取り組んで成長していくキャラクターでないところが面白い。彼は本来「名脇役」なんだよね。頼まれたら断らない。「おう、巻き添え上等!」なので。この特性プラス、結論を出しにくい問題に対して、割り切って答えを出していかない、というのが、時代を模索できるキャラクターとして大変気に入っております。食用のブタを、名前をつけて育ててしまう、それを意思を持ってやってしまうところとか。


以上、8冊。来年は、もちろんローマ人の物語カイエ・ソバージュはもちろん読み進めるとして、地域を問わず海外文学にも少し目線を伸ばしてみたいと思っている。人類学民俗学系は、宮本常一とかにも少し手を出してみるつもり。イザベラ・バードの中国旅行記も平凡社ライブラリーから刊行されるらしいし。まあ、趣味なので、そのとき読みたいものを読むけれども。