RealWarfare 2: 戦場シミュレーションの中では、最も戦闘がおもしろい

Steamで売られるというのは、ややマイナー〜どマイナーなゲームにとっては、値千金のパスポートとなる。
本来、認知さえされないゲームであっても、Steamの新作に並ぶだけで、世のゲーマーは「どんなゲームなのかな?」と、ともかく、見てはくれるからだ。

今回の、「Real Warfare2」もまさにそんなゲームのひとつである。

 



■Mount & Blade と Total War を合体させたらおもしろいんじゃね?
このゲームは簡単に説明すると、Mount & Bladeの戦闘シーンを、TotalWarの合戦に置き換えたゲームである。
ややマイナーな表現を許すなら、合戦部分はTotalWarよりもKingArthurの方が近いが、そういうゲームである。

・戦略部分
M&B部分と言い換えてもいいが、戦略パートでは自分の軍を動かしながら、追いはぎや税収で金を集め、自軍を強化していく。
自軍の強化方法は、単純に傭兵をやとったり、雇った兵に経験を積ませて強化したりである。

 

おもしろいのは、兵の強化の一環として、兵科のアップグレードがある点である。
兵は、「徴集兵」「一般兵」「上級兵」「騎士」の4つのランクがあり、それぞれに雇えるユニット数が決まっている(ゲームが進むにつれて大軍を扱えるようになる)。

そして兵科はツリーになっており、より上位の兵科に転職をさせることも可能になっている。
少し分かりづらいので、実例を示すと、
一番弱い徴集兵ユニットである「斧民兵」に経験を積ませ、金を投じることで、一般兵の「長槍兵」か「長剣兵」へ転職させることができるというもの。
当然、転職後の兵科の方がスペックは上で、単純にぶつけた場合は強い。

 

つまり、ゲーム的に考えると、「自ら指揮可能な枠内で」「どういった編成の軍をつくりあげるか」という部分を考えることができ、楽しい。
また、金や経験は不足しがちなリソースなので、「兵数」「装備」「士気」「統制」などの育成と転職とで、どれを優先するのかという判断要素もあり、シンプルな様でいてなかなか考えさせられる。

RTS部分
RTS部分はTotalWarと比較した場合、ユニットや将軍などに固有のスキルがない点が個性。存在しない要素を個性とするのは、なんだか妙な話だが、TotalWarやKingArthurのスキルは選択肢を広げると言うよりは、操作の手間が増えて面倒な向きもあるようなものだったので、オミットはある意味で正解だと思う。
その分、このゲームでは戦闘機動と、それに関連した士気・統率のマネージメントが非常に重要にできている。

士気は兵力と同程度に重要なパラメータで、士気がくじかれた場合は、例え兵力で勝っていても敗走・崩壊へと繋がるようにデザインされている。
この部分は、このゲームをおもしろいかどうかを決めるのは、この士気のマネージメントのメカニズムの理解度で決まると言っても過言でない程、よくできている。

例えば、寡兵で多兵にぶつかればそれだけで士気をくじかれるし、そもそも、敵の大群が接近してくるだけでも及び腰になる。
逆に士気が減少していても、そこに予備を投入することで、士気が持ち直し戦線の崩壊を食い止めるなども可能である。

士気の概念ならTotalWarにもあるじゃないかと皆思うだろうが、かなり抽象的だったTWの士気崩壊のメカニズムと比較した場合、RealWarfare2のそれは本当に生々しく、有り体な表現を用いればリアルにできている。
この辺は中世の戦史や戦術などに明るい人ほど、より深く楽しめる要素だと思う。

 



■演出面ははっきりと物足りない
少し褒めすぎたかも知れないのでバランスを取っておくと、このゲームははっきりとしたB級のゲームである。
B級ゲームの定義は別の機会にまたまとめるが、A級ゲームにあるような「おもてなし」の配慮は基本的にない。

言い換えるなら、演出面での力不足が顕著だと言うことで、シナリオ展開は文字だけだし、街や城塞に入った後も実際にその街並みを散策できたりはしない。
商人とのやり取りすらなく、交易も商品を選択して「売る」を選ぶだけのシンプルさだ。
洋ゲーは伝統的に、キャラクター性と分かりやすい演出力が不足する傾向があるが、このゲームもまさにその類型になってしまっているのである。

RTSモードのグラフィックは、静止画で見るとまあまあ綺麗に見えるが、一昔前によくあったような、草木が突然ポンと現れるタイプの描画なのが、今時気になる。
また、TES5のダンジョンを最低60fpsで動かせる程度のマシンであっても、RTSモード中は下手すると30fpsを切る程度に妙な重さがある。
同世代のゲームであるSHOGUN2と同等以上の重さだが、見た目は見劣りするというのが正直な所だろう。
※とは言え、「普通に綺麗」な水準はある。



■戦争マニア専用のゲーム
このゲームは魅力的な部分と、分かりづらい部分がかなり拮抗しているので、一般的なゲーマーにはオススメできない。
と言うのも、ゲームとしてのおもしろさを理解する為には、中世当時の戦争のあり方に対する知識がどうしても必要となってくるからだ。

この辺は、グラフィックが綺麗で、ゲームとして分かりやすく出来ているTotalWarが比較的万人向けのゲームであるのとはまったく違う。
その代わり、当時の戦場の雰囲気の再現はTotalWarを凌駕しており、乾坤一擲の騎兵突撃が、敵側面へ刺さることで、戦場の空気が一変するようなダイナミズムは同作ならではと言える。

まとめるならば、「戦場RTSとしてはTotalWarよりもリアルでゲーム性は上」しかしそれは、分かりづらさにも繋がる為、「ゲームを娯楽として楽しみたい人には不向き」といった感じになろう。
歴史群像を毎号楽しく読んでいる人にこそ、オススメできるゲームである。