四季の絵本手帖『スノーマン』

スノーマン (児童図書館・絵本の部屋)

スノーマン (児童図書館・絵本の部屋)

 雪だるまとの出会い、冒険を淡い色鉛筆で描く、文字のない美しい絵本です。ページは大小コマ割りのイラストからなり、ひとつひとつを追いかけていけば、主人公たちが入り込むふんわりとした優しい幻想に包まれます。ページを開くだけで、子どもはすでにファンタジーの世界に入り込んでしまうでしょう。
 男の子の作った雪だるまが夜中に動き出し、いっしょに真夜中の冒険を楽しむお話には、子どもなら喜ばずにはいられないできごとがたくさん登場します。人間の文明社会を知らない雪だるまに男の子がいろいろ教えてあげる場面には、思わず笑みがこぼれます。透き通った冬の夜を飛び続ける場面では、いっしょに飛んでいるような夢見心地の気分を味わうことでしょう。素朴なデッサン風の色鉛筆で彩色されたイラストは、2人のふれあいをユーモアを交えて描きます。凍てつく夜のできごとにもかかわらず、絵本の中には温かさ、柔らかさが満ちています。そこには、音楽もいっしょに介在しているかのような穏やかな流れが浮かび、冒険が終わりほっと一息置いた後の静けさはひっそりとした余韻を残します。
 親子で読むというよりは、子どもがひとり、空想にふけりながら時間を過ごす絵本かもしれません。イラストを追いながらのお話作りは、コマに合わせ親子で交互にするとコミュニケーションに弾みが生まれます。(asukab)