四季の絵本手帖『てぶくろ』

てぶくろ (世界傑作絵本シリーズ)

てぶくろ (世界傑作絵本シリーズ)

 子どもをとりこにする繰り返しの妙が生きる、おもしろくて不思議なお話です。雪の降る中、おじいさんが落としていった手袋に寒さをしのごうと最初に入り込んだのは、くいしんぼねずみでした。この後、森の動物たち――ぴょんぴょんがえる、はやあしうさぎ、おしゃれぎつね、はいいろおおかみ、きばもちいのしし、のっそりぐま――が1匹ずつ順番にやって来て、手袋の住人の許可を得て同じように中に入り込みます。
 小さな手袋に動物7匹が、ぎゅうぎゅう詰めながらも収まってしまう不思議さは、この絵本の1番の魅力でしょう。「どうやってみんな入ったの?」という疑問と共に、イマジネーションが子どもの中を駆け巡ります。丹精なイラストには、窮屈なはずなのにやけに落ち着いた動物たちの顔が並び、みな「何、驚いているの?」とこちらに問いかけているようです。不思議さを平常とする光景は、おかしさを生み、読者を瞬く間に絵本の世界に引き込みます。誇らしげにウクライナ地方の衣装を身にまとい、自分にぴったりの名称を持って登場する7匹の個性も、このお話にはなくてはならない要素です。
 長い冬の夜、ウクライナ地方の子どもたちも暖炉を囲みながら、この民話に耳を傾けたのでしょう。あたたかい手袋を思い描きながら、読後の余韻も静かに味わいたいところです。(asukab)