ドクター・スースのミュージカル

 木曜日は、大忙しだった。昼過ぎまで、主人のクラスの付き添いボランティアとしてチルドレンズ・シアターでドクター・スースのミュージカルを鑑賞。放課後は娘のアート教室(ねずみちゃんのアートスクール)、続いて息子の中学のカリキュラム・ナイト……で家にいる時間がなかった。仕事が一段落ついたというのに、今度は学校関係の活動に追われている。これじゃあ、WSどころじゃないな。家の掃除もできず、部屋は荒れ放題。おまけに夜は小学校のオープン・ハウス、ブック・フェアもあったので、E中とO小2校に関係する家庭はてんてこ舞いだ。
 ブロードウェイ・ミュージカル「Seussical」は予想通り、愉快でカラフルな舞台だった。紅白しましま帽をかぶった猫マークのスース本は約50冊出版されているけれど、このミュージカルはそのうち少なくとも14作品を使用して完成に至ったそうだ。「少なくとも」と言っているからには、きっとあちらこちらにスース・マニアにしかわからないような心にくい演出が添えられていたんだ。数えたらきりがないのかもしれない。
 摩訶不思議なスースの世界は『Horton Hears a Who! (Classic Seuss)』と『Horton Hatches the Egg (Classic Seuss)』(邦訳『ぞうのホートンたまごをかえす (ドクター=スースの絵本)』)を絡めたストーリーラインで展開された。気のいいホートンの生き方に、心がしんみり……。ホートンのおかげで、ほのぼのとした温もりに包まれるんだろう。一見、舞台の印象は賑やかなんだけど、根底には人生を知り尽くした安堵感のようなものが流れているから涙が出ちゃうんだなあ。キャラクターとして登場するのは、帽子猫、ホートンに加え、ホートンの話に出てくる自分勝手な鳥メイジーや男の子ジョジョ一家、『Yertle the Turtle and Other Stories (Classic Seuss)』に収録された『Gertrude McFuzz』から正直者の鳥ガートルードなどなど。個性的なキャラクターを一同に集め筋道を立てて話を進めていくのだから、脚本家の感性というか遊び心に感服だった。
 いっしょに付き添ったもう一人のお母さんは、大学の専攻が演劇だったそうで、ミュージカルに通じている方。彼女いわく、シアトルのプロダクションは予算が少ないのに上出来ということだった。さすが、裏を読んでいらっしゃる。でも、彼女はスースファンではないそうだ。スースに関してこういう人は結構いるので驚きではなかったが、これだけ完成度の高い舞台を見てしまうと、その一言は何か残念な気もした。
 演劇を楽しむ際、わたしは歌や演技以上に、舞台美術と衣装に魅せられる。視覚表現を具象化することなく色と形で象徴するデザインは、想像力が要求されるだけに印象に強く残る。明るくてマジカルな舞台、色合いと素材感を生かした衣装は、今回もため息もの。去年観た「がまくんとかえるくんの一年」や「バニキュラ」もそうだった。他の同じプロダクションに比べて、シアトルの衣装って絶対冴えているよ、って地元ひいきの分を引いても感じてしまう。(予算が少ないから、シンプルでいかしたデザインになるのか!)象徴に重きを置く姿勢はわたしの創作理念でもあるから、ここにくるといつも刺激がもらえ感謝でいっぱいになる。チルドレンズ・シアターには、一生通い続けるだろうなあ。(asukab)

  • 中心となるホートンの物語2つ

Horton Hears a Who! (Classic Seuss)

Horton Hears a Who! (Classic Seuss)

Horton Hatches the Egg (Classic Seuss)

Horton Hatches the Egg (Classic Seuss)

  • ガートルードの出てくるお話集

Yertle the Turtle and Other Stories (Classic Seuss)

Yertle the Turtle and Other Stories (Classic Seuss)

  • 帽子猫の遊び心がいっぱい

The Cat in the Hat (Beginner Books(R))

The Cat in the Hat (Beginner Books(R))