桃の節句に

 桃の節句に『The China Doll』を読んだ。日本の文化継承を怠っている自分が忍びなく、ひとりで。
 サラは陶製のお人形。持ち主ジェシカの5歳のお誕生日にティーセットをプレゼントしようと思い立ち、みんなが寝静まったころ、こっそりベッドから抜け出した。ボンネットの帽子と引き換えに、ねずみからティーセットの入った道具箱の鍵を受け取り、家畜小屋の屋根裏を目指す。途中つらいことが起きてもジェシカとお茶会する光景を描き、サラはがんばり通した。
 きれいなお洋服を着たサラが、危険な冒険の後に汚れ、壊れてしまうところは悲しい限り。お人形を取り巻く人々の想いが、抑えた中間色を背景にほんのり浮かび上がった。同時に思い起こしたのが、義母の陶製人形。擦りへった木製の手がアンティークであることを物語る。彼女は子どもの頃、このお人形とばかり遊んでいたそうだ。「あなたはどうだった?」と聞かれ振り返れば、わたしって「作ること」に夢中な子どもで、お人形も紙や布で作っていた。お人形やおもちゃで遊ぶよりは、創造することに満足していたと思う。
 お雛さまがないので、千代紙で姉さま人形でも作ろうかと思っていたけれど時間切れ。こういう特別な日はもっと早くから準備しないといけない。(asukab)

The China Doll

The China Doll