Good Masters! Sweet Ladies!

 こういう意義深い歴史絵本は、ぜひ手元に置いておきたい。『Good Masters! Sweet Ladies!: Voices from a Medieval Village (Where's Waldo?)』は、中世に生きた子どもたちの語りを通して当時の生活ぶりを紹介する絵本なのだが、絵本となるに至った制作過程が非常にユニークである。
 作者はメリーランド州ボルチモア市の学校図書司書であると同時に、プロのストーリーテラー、劇作家でもある。現在勤務する学校でヨーロッパ中世を学習する際、その総仕上げとして演劇を通じて当時を振り返ろうと試みた。しかし、劇にすると受け持つ台詞の量に差が生じ、演じたくてうずうずしている生徒たち全員が満足という結果はなかなか得がたい。そこで、一人3分と持ち時間を決め、各自が1255年英国の荘園・村に生きた10歳から15歳の子どもたちに扮し、彼らの思いや生活を独白、あるいは会話形式で表現するスタイルを選んだ。
 ヒューゴーは荘園主の甥、タゴットは鍛冶屋の娘、ウィルは牛引きの少年……。台詞を読み進めていくと、どこからともなく素朴な中世音楽が聴こえるような錯覚に陥る。当時のティーンになりきって演じる中世劇の、内容の濃さを称えずにはいられない。全身に気持ちを込めて取り組んだであろう姿勢に、学びの質が表れている。
 イラストや構成デザインも当時の雰囲気を上手く伝え、自分にとって宝物的な絵本になった。(asukab)
amazon:Laura Amy Schlitz
amazon:Robert Byrd

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Good Masters! Sweet Ladies!: Voices from a Medieval Village (Where's Waldo?)

Good Masters! Sweet Ladies!: Voices from a Medieval Village (Where's Waldo?)