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kinotiz このページをアンテナに追加

 観た映画の話と、考えていることの話。

2016-11-06

[]インサイド・ルーウィン・デイヴィス、ゴダール2作 インサイド・ルーウィン・デイヴィス、ゴダール2作を含むブックマーク

コーエン兄弟案外面白いというのと、オット氏のゴダール穴埋めチョイスによりこのラインナップ。

私はほとんどゴダールって見たことがなくて、なんというか映画を観る以上はもうちょっと初期のやつとか見ておくべきなのかと思いつつ、放置。気狂いピエロとかみてみたいんですけど、なんかタイミングを失って今に至る。


コーエン兄弟の割と最近のやつ。淡々とした映画でした。コミカルじゃないほうのタイプでしたが、淡々と最後まで見られるのは、音楽が随所に差し挟まれているからかもしれません。

売れないフォークシンガーのルーウィンが、知人・友人のところを転々としながら食いつないでいく様が描かれています。エピソードは大げさなものはなくて、日常で私たちが出会うようなもの、たとえば、大切な友達が死ぬとか、父親が認知症で入院するとか、たまたま関係をもった女性が妊娠するとか、猫が行方不明になるとか。その中でルーウィンは次第に、自分の才能と金儲けとは無縁であることを知り、それでも歌うことから離れられずに夜な夜なステージに立ちます。時代はようやくボブ・ディランが登場し、フォークソングに光が当たり始めたころ。派手ではないけど、自分がもっているものでなんとかやっていこうとする主人公の、諦めと開き直りがまざったヤケクソな歌声が胸に響きました。ちょっと落ち込んでるときとか、ひとりで見るといいかもしれません。


ウラジミールとローザ [DVD]

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ありきたりの映画 [DVD]

ありきたりの映画 [DVD]

ゴダールがジガ・ヴェルトフ集団として作成した2編。ゴダールにほとんど親しんでいない私としては、『ウラジミールとローザ』の方が見やすかったです。まだストーリーがあるし。とはいえ、登場人物たちはめちゃくちゃこっち見てくるし、なぞのテニスシーンはあるし、というかこれで映画になるのか、という驚きさえ感じました。正直、なんじゃこりゃ、って思いますが、なんとなく最後までいってしまうのが不思議。

『ありきたりの映画』のほうはかなりの金太郎飴ぶりで、途中でもしかして、これ永遠にこのままなのかと思い早送りしてみたのですが、本当にそのままでした。タルコフスキーよりもすごい金太郎飴感。どこで切っても中身が同じ。これをどうして100分もの長さに編集したのかと。もうこうなったらこの長い会話の連続によって私たちが疲弊するのを待っているとしか思えない。内容は共産主義華やかなりし頃のデモの話ですが、デモの映像はすごいなと思うのですが、話している内容も現代にしてみたら古くなってしまっており、なんというか、苦行。

ゴダールが好きで好きでたまらなく、ゴダール作品を全部みておきたい、という方以外は見なくてもいいかなーと思いました。ゴダールの中でもっと面白いの他にあるよ。

2016-10-26

[]コーエン兄弟を3作(ヘイル・シーザー、赤ちゃん泥棒、オー・ブラザー) コーエン兄弟を3作(ヘイル・シーザー、赤ちゃん泥棒、オー・ブラザー)を含むブックマーク

そろそろ手を出してみようか…という頃合で。


ヘイル・シーザー!


映画業界仕事人の昼夜なき戦い!面白かったです。演出自体が懐古的な作品で、登場する人物や作品も50年代頃のハリウッド映画のパロディ。勤勉な主人公が活躍する様を描きながら、その腕を買われてヘッドハントされ悩む側面も織り込まれていきます。

映画というのは総じて作り事で、映画業界にどっぷりはまっている主人公ももちろんそのことは強く意識しています。だからこそ、スター俳優のイメージを維持するために工作もする。(その手腕が鮮やかなのでヘッドハントされるわけですが)彼にとって、世間へ表出されるべきなのはそのようにして作られたイメージであって、俳優の素などでは毛頭ない。

一方で、彼をヘッドハントしてくるのは航空会社の役員であり、その人いわく「実業」の世界。映画のような虚飾にまみれ、今後衰退していくようなはかない産業ではなく、これから伸びる真に価値のある産業だと説明する。

さて、問題は主人公がその条件に惹かれながらも、映画を離れられないこと。映画業界ははかなく、今後衰退する。確かに。でも。

非常に真面目で勤勉で、優秀なビジネスマンである彼は、そのモチベーションを別の世界でも発揮できるのだろうか、というところがどうも疑わしい。真面目なだけに、映画業界に肩入れしてしまっている。まるで年老いていく夫を哀れみながら一緒にいる妻のように。

ただ、その肩入れにもいっぺんの真実があるわけで、作中、それは淡々と映画業界や産業そのものがシステムでしかないと説く共産主義かぶれのスターに対して平手打ちをくらわすというクライマックスとなって現れます。いわく、そうだ、映画は作り物だ、でも、俺たちはその作り物のために本当の汗水を流している。本当の感情を注いでいる。君だってそうだぞ。君は作り物のために本物の怒りや悲しみを感じるはずだ…とそこまで言っていたかどうかは忘れましたが、その愛のビンタによって流行思想に酔っていた俳優は撮影中の作品へと戻っていくわけです。

つまり、映画は確かに作り事であり、はかない産業なのですが、主人公にとってはそこで奮闘する自分の姿こそ真実であり、”正しい”のでした。個人的には儲かるし堅実な方が”正しい”んじゃないかと思ったりもしますが、彼の職業人としての倫理観は、これまでの仲間と一緒に映画を作り続けることを選んだ。

現実とは、忠実であるということとは必ずしも同義ではなく、デフォルメや比喩であっても、それが思考や感情を動かし、私たちを何らかの行為へ駆り立てるものであるならば、現実だと言いうる。そして映画は、すべて虚飾ではあるのですが、現実の有様を描き出せるという意味でやはり現実に加担しており、映画業界をテーマに映画を撮影したコーエン兄弟としては、なんとなく、そのあたり主張したかったのかしらと思ったりもしました。

取り立てて激しいバイオレンスもセックスもない淡々とした映画なので、どなたと一緒でも気まずくはならないです。映画好きと一緒に観るといろいろ解説してもらえて楽しいかもしれません。


赤ちゃん泥棒


コーエン兄弟の初期作品。これは面白かった!コーエン兄弟のコミカルなほうの作品群として、とても楽しめました。

警官である妻と強盗常習犯の夫というカップルが、不妊症であることに悲観して、有名人の五つ子を誘拐しちゃおう!と思い立つという筋。

めちゃくちゃな筋なのですが、けっこうアメリカのドラマや映画を観ていると、子ども愛が強いんですよね。子どもっていうのは大切なものだし、すごくかわいいし、いとしい。だからこそ、子どもに対する性犯罪などを起こす犯人に対して、時として異常なまでに攻撃的な人物がでてきたりします。

今作に関しては妻の方がとにかく子どもが欲しいと思いつめた挙句、あんなにいっぱい子どもがいるんだったらひとりくらい貰ってもかまわないだろう、と変な方向へ開き直ってしまうところから物語がスタートします。

要するに、自分たちの欲望にしたがって赤ちゃんを好き勝手に扱う大人たちの話であって、子どもがかわいい、と言いながら赤ちゃんを誘拐するカップルもどうかしてますし、その子にかけられた懸賞金目当てにさらに略奪する悪人も自分の利益しか考えていない。誰も彼も自分のことしか考えていないのですが、次第に、その赤ちゃんがかわいすぎて自分たちのことがどうでもよくなっていきます。

最終的には絶対悪(赤ちゃんのかわいさになびかない唯一の存在)としてのゴーストライダーが出てきて、彼と対決することで、ニコラスケイジが自分たちの犯した罪に気づくわけですが、なんというか、そんなにか、赤ちゃんパワー、と思わざるを得ない。もうみんなどんだけ赤ちゃんが好きなのかと。

赤ちゃんが終始メインにすえてあるので、コミカルだしほのぼのしています。何が描きたかったんだと言われたら赤ちゃんのかわいさは正義!赤ちゃんは世界を救う!的なことじゃないかと思ってしまうくらい、赤ちゃんがかわいい話としか…いや面白かったんですけどね。ファミリーで見てもカップルで見ても、ほんわかすると思います。


オー・ブラザー


ユリシーズを元ネタに3バカトリオを描いたという話。面白かった!かなりしっかり作ってあって楽しめました。

アメリカの南部を描いたファンタジーともいえるかもしれません。

コーエン兄弟の作品て、どういうオチだったんだかよくわからないまま終わる印象が強かったのですが、この作品に関してはちゃんと結末が用意してあり、そこがまずよかったです。冒険譚であり、家族の話であり、仲間の話であり。ただそこはコーエン兄弟なので、なんというかかなり幻想小説に近い手法で映像が作られていて、それが独特の雰囲気を持っていたのも楽しめました。

つまり、日常の中に唐突に怪異が現れる。それは日常の文脈でもどうにか理解はできるのですが、やはりちょっとデフォルメされていたり異質であったりして、不思議な後味を残します。かといって、ではファンタジーのように完全なる異世界かというと、少し微妙で、そのあたりのバランス感覚がコーエン兄弟ならではなのかしらと思ったりしました。

今回みた3作のうちでは一番きちんとつくってあって、エンターテイメント性が高い作品だと思います。これこそファミリーで見ても面白い映画では。

2016-10-13

[]コミカルな二作。(パディントン、デッドプール) コミカルな二作。(パディントン、デッドプール)を含むブックマーク

パディントン [DVD]

パディントン [DVD]

パディントン


以前、「ママ」というホラー映画とのコラージュで取り上げたパディントン・ザ・ムービー。ようやくみました。

特別ひねりのないハートフルな映画、というとディスってるみたいですが、面白かったですよ!パディントンの巻き起こす騒動ぶりもよく描かれていましたし、映画ならではの脚本もよかった。若干、「ベイブ都会へ行く」を思い出すようなあらすじなのも個人的には気に入りました。

人語を解する動物、という設定はよくあるものなんですが、今回の場合は完全にマイノリティである熊、という点にお話が絞られており、原作ではどうだったか忘れてしまいましたが、わかりやすくはなっていました。絵本や小説だと、そのあたりをぼんやりとしたまま読み進められるんですが、映画ではそこらへん、ちょっとハッキリさせないとイマイチわかりにくくなるのかもしれないな、とか。パディントンがちょっとリアルに描かれているので、小さい子はもしかしたら怖がるかもしれませんが、まぁみんなで見れば怖くないし、別に怖い話じゃありません。熊だけど、いい子ですよ。



デッドプール


あらかた、マーベルを見尽くしつつあるのでもう残りウルヴァリンサムライとこれくらいしかないよね…ということになり。(あ、グリーンランタンもまだか…。)いやごめん、ちゃんと面白かったです!人体実験の末不老不死になってしまったデッドプールが恨みを晴らして恋人を取り戻すお話。

ヒーローというにはちょっと、ハズレ値のようなデッドプール。こういうのを、トリックスターというのでしたっけ。ともあれ、「第四の壁」(という言葉をこの作品で知りました)をガンガンにぶち破ってくるデッドプールはなかなか小気味よく、映画としてのテンポもよくて、ジョークが多用される映画としてはくどくなく最後まで面白く見られました。

ただ、よく考えると漫画の中では第四の壁なんてしょっちゅう破られているわけで、デッドプールという存在自体は漫画界にとってはさほど目新しいわけではないのではないか、などと思ったりもしています。が、具体的にどの作品と言われるとちょっと思い出せない。手塚作品とかはメタ要素すごくありますよね。

あとなんというか、低予算だからなのか、どちらかというとCGよりもスタントによる(?)生身っぽいアクションが多く、全身タイツもあいまって、戦隊ものとか、仮面ライダーとか、ああいった味わいを感じさせる作品になっておりました。

あとこれはもう完全に作品とは関係ないんですが、刑事ものとかでよくでてくる壁に模造紙を貼って人物同士の相関や状況をメモ書きとか糸でどんどんつなげていくっていうやつ、あれって使える方法なんでしょうか。ちょっと興味ある。なんか、決まったメソッドとかあるのかしら。

とかほんとどうでもいいことを書きたくなる映画なので、まったく力を入れずに観られる良作です。割りにストレートな恋愛ものでもあるので、恋人同士で見ると楽しいと思います。