時砂の王

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)

読了。

サヤカ、とオーヴィルは硬くこぶしを握り締めて、胸の中でつぶやく。許してくれ。
救えなかった女が望んだことを、オーヴィルは深く心に刻み付ける。
人に忠実であれ……。
「我々すべて、滅びる時間枝に属するすべての並行人類の希望を託して、君たちに命じる。伝えろ、勝て。さらばだ」

「私は2300年後の世界から来た。だが、ここの未来からではない。多くの滅びた時間枝を渡ってきた」 ――西暦248年、不気味な物の怪が邪馬台国を襲う。それに救いの手を差し伸べたのは、遥か遠い未来において壊滅しかけた人類が送った、時間遡行作戦による「メッセンジャー」 だった。


さすが小川一水。痺れさせてくれます。
といっても私の中ではこの作者は「漂った男」 が最高傑作なので*1、さすがにあれは超えられませんが、それでも十分に面白かったです。
ラストのエピローグが唐突すぎて、やはり「漂った男」 の印象が強すぎて身構えていた分、拍子抜けしてしまいましたが、エピローグ手前の258頁「惑わしの魔女め、疾く失せろ!」 に続く会話と、263頁「来い! 生ける者は全て来い!」 はもう……ああ、いま改めて読み返すだに鳥肌が立ってきました。この、脳幹が痺れる面白さ! 感動です。
そしてエピローグがこれまた、オメガが受け継いだものはもちろん、「昇り降りする虫の物語」 までもが受け継がれていることが何とも味わい深いラストになっていて、最初読んでいた時は唐突だと感じたこの終わり方も、今はしみじみと面白く感じます。


「天涯の砦」 はちょっとスルーしてたんですが、どうしようかな……。文庫化は09年04月くらい?

*1:とか言っておきながら老ヴォールと特配課しか読んでないけど。あ、あとファイナルシーカー。