真夜中の五分前 side-A five minutes to tommorow

真夜中の五分前―five minutes to tomorrow〈side‐A〉 (新潮文庫)

真夜中の五分前―five minutes to tomorrow〈side‐A〉 (新潮文庫)

読了。

「きっとあれはプールの妖精に違いないと思った」
「プールの妖精?」 と二人は笑った。
「それ、褒めてる?」 とかすみさんが言った。
「褒めてるよ」 と僕は頷いた。「プールの妖精。あるいはマグロのお姫様の生まれ変わり。でなけりゃおたまじゃくしの女王の仮の姿」

僕が自己評価をするなら、こうだ。「器用でそつがないけれど、結局のところ中身のない女たらし」 ――詐欺とも誇大広告ともつかない仕事を実利的にこなし、半年付き合った恋人と別れても何も感じない。そんな風に日々を無感動に生きる僕だったが、ある日、プールで彼女に出会った。


これは面白い。
まず主人公の喋りが抜群に良いですよ。まさに当意即妙といった感じの会話をします。たとえば、会社の隣の人から「昼に時間はあるか? 駅前のマクドナルド。一人で来い」 とメールがあったら、「大丈夫です。それから、子供は本当に無事なんでしょうね?」 みたいなメールを返します。もうね、こういう類の会話って大好きですよ。相手に通じないことが多々あるのがポイントです。
まぁ基本的にはそんな感じですが、ラスト数ページで主人公がアレする場面が実に面白かったです。なんて急展開! 今までの主人公の凝り固まった挙動から、ここの”亀裂が入っていく” 描写が、涙が出るほど素晴らしいです。


たったの200ページ超で凄く薄いくせに、読むのに2時間くらいかかってます。しかし楽しい! そしてまだ side-B が残ってますよ。超期待。