風の邦、星の渚 レーズスフェント興亡記

風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記

風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記

読了。

「リュシアンさま、聖職者になるんじゃなかったの ! ?」
「聖職者? それじゃあ何もできない。ぼくは俗界で生きるよ」
リュシアンが顔を上げて、鼻で笑うように言った。
メメント・モリ、さ。――いずれ死すべき身の上なのに、楽しまずしてなんとする、だ」

故郷を失ったヨーロッパの若き騎士と、孤独に生きる宇宙生命体。二人の出会いが、神聖ローマ帝国の歴史を動かし始める……。俊英・小川一水が描く歴史SF。


面白かったです。
興亡記と書いてあるだけあって、老ヴォールや時砂のようにガツンとくる一言はなかったように思いますが*1、読み進む手が止まりません。
辺境の村に追いやられた騎士が不思議な生命体と出会い、共にレーズスフェントという”村” を”町” にしていくという、村おこしのようなストーリー。ところがそうは問屋が卸さない……というような感じ。これがもう、先が気になって仕方ないんですね。中でも気に入ってるのが「労務修士L・Fの決意」 で、狭い世界で暮らす中世の人間が、テレビで世界中の様子を知ったら――という感じの話。その変貌っぷりが楽しかったです。


読み終わるのに5,6時間くらいかかりましたが、それでも短く感じたくらいです。いやあ楽しかった。次の作品も期待です。

*1:なんせ上下二段組の400ページなので、細かい所は覚えてません。