翼の帰る処 上

翼の帰る処 上 (幻狼ファンタジアノベルス S 1-1)

翼の帰る処 上 (幻狼ファンタジアノベルス S 1-1)

読了。

「つまり……そなたは褒められたくないのか? 褒美をとらせようにも、どうせ北嶺には金がないとか、けちをつけるに決まってる」
「ご明察です」
皇女は足を踏み鳴らした。ついに癇癪を起こしたらしい。
「話が通じてない気分になるのは、なぜだ?」
「申しわけありません」

派閥争いに巻き込まれて辺境に左遷され、赴任先でまず考えたことが、夢の隠居生活の実現への第一歩! しかし残念なことに、主人公は皇女殿下の副官にとりたてられる。隠居への道は遠く、険しくなるばかり――。


面白い。
プロローグと第一章に繋がりがなさすぎて、最初はわけの分からない事態の連発ですが、まあ病弱主人公が左遷先で頭を抱える話とみれば大丈夫かと。(上司と部下に振り回される) 巻き込まれ型主人公ですよ。本人の意思が怠ける方向にあるのが、なんというか、すごく……馴染みます……。
最初は「レーズスフェント興亡紀」 並に読むのが面倒そうだな、と思ったんですが、北嶺の背景やら何やらを理解してくると、話は軽快に進みます*1。特にところどころで笑いを誘うのが、ときどき引っ張られる官服の袖。本当にどうしてあんなに長くなってるんでしょうか。
111頁「ヤエトは椅子からころがり落ちてみた」 お茶目……! 169頁「そういう乙女心満載の回答ではなく」 ロマンス話が存在するのかな、とか思ったり。普通するかな。255頁「一瞬たりとも落ち着いた覚えなどないのだが、誰も信じてくれない」 哀愁さえ漂います。やっぱこの主人公良いなあ。


あとがきを読んで、つい楽隠居に必要な蓄財を計算してみたり。憧れます。宝くじが当たれば自分独り分は賄えますねえ。

*1:レーズスフェントが面倒だったのは、単に分厚いせいだけだったかもしれませんが。