ユニバーサルデザイン的設問


モヒカン砦のリーダーらしきヒト*1のところで面白い話を読んだ。
まずは大元のところから、

マックとウインドウズでは、いろいろ見た目が変わりますよね。それにファイルのやり取りで面倒な事が多い。_| ̄|○ ウインドウズ派な私としては、マックをウインドウズが買収して、ウインドウズ統一国家になる事を望んでいます。(小市民な野望)

一応、Web デザイナーを自称しているし、今までのエントリーへのコメントをみても、 彼女の発言をみて鵜呑みにする人が散見されることからも、それなりに影響力が高いと思ったので、ちょっとコメントをいれた。 「Web 業界の最近の潮流はユニバーサルデザインとかそういう方向なので、冗談にせよそういうことを書くと、ぜんぜん解ってない自称 Web デザイナーだと思われる可能性がある気がしました。」と。

私がこれを目にしても、似たような内容のツッコミを入れたかもしれない。
気をつけなきゃならないのは、オオモトの発言者も、この指摘者も、Webデザイナーである点。
Web環境としての言及なのか、Webデザインの作業環境としての言及なのか、
それによって話は変わってくると思うんだけど...。


元の文章を読んだ限りでの私見では(エチケットペーパー?)、
少なくともこの場合は両方(Web環境+作業環境)について言っていると思う。
「ファイルのやり取り」と言うのは明らかに作業環境としてなんだけど、
「見た目が変わる」と言うのはWeb環境の話ですよね。
私もSEの真似事の合間合間にWebデザインの真似事をさせられていて、
その視点では、Webと制作のどちらか片方についての言及とは読めませんでした。


で、モヒカン砦のリーダーらしきヒト*2はこんな風に整理している。

この話のポイントは

  • WebデザイナーIEFirefoxなどのブラウザの違いや、OSの違いで見え方が違う事に苦労している(1つのOS、1つのブラウザしか対応しないで済んだら楽だ。というのはまっとうな要望だ)
  • MacとWinのネタはOS宗教論争に成りがち
  • ユニバーサルデザイン思想はWebデザイナーに対して100%啓蒙されているとは言いがたい。まだ思想の普及段階

そういう議論がまとまりにくいネタであるから、指摘が中傷だと勘違いされやすいというバックボーンがある。

Web環境の話として読んでいるのだろう。


これを受けて、こーゆー指摘をしている方も居る。
ってか、やっぱ「Web屋のユニバーサルデザイン」はまだこれからですか。

ユニバーサルデザインというと、軍手をはめたり、石鹸水で手をぬらしたりして商品パッケージの使い勝手をチェックする、とか、そういう話しか見たことが無いので、Webの世界での「ユニバーサルデザイン」って、どういうのをいうのかよくわからないんだけど、文字の大きさがスクリプトで変えられる小細工とか、そういうのをいうのかな?

端的に言って、「マックとウィンドウズ」の話とユニバーサルデザインの話がどう関係するのかよくわからない。マックはハードウエアやOSの設計にユニバーサルデザインが取り入れられているのに対して、Windowsではそれほどでもない、て話なんだろうか。

この方はWeb環境視点ではなく、作業環境視点で読まれたのだと思う。

*1:ここで「モヒカン砦のリーダーらしきヒト」と記したのは「モヒカン族の長」とイコールではない。詳しくはmohicanグループキーワード「タイラー・ダーデン」参照。

*2:繰り返すが「モヒカン族の長」ではない。詳しくはmohicanグループキーワード「タイラー・ダーデン」参照。

ユニバーサルデザインとWeb屋


ユニバーサルデザイン」とは「すべてのヒトのためのデザイン」を意味しており、
Web以外の世界では主に年齢差・身体能力差等を吸収し、万人に使い易くする設計を指しますが、
Webの世界においては視覚・色覚障害などの能力差を吸収する事に加えて、
環境格差を吸収する事も目的に含めている場合が多いです。
即ち、「OSが違う」「ブラウザが違う」「JavaScript無効」「画像を表示しない」
等々の環境の差異がユーザレベルで障害にならないための設計が、
Webにおけるユニバーサルデザインと言う事です。


大きな企業さんとの仕事では「JIS規格(JIS X 8341-3)対応」が前提になってきましたし、
然るべきルールに拠って作成すれば、シェアの少ない想定外のブラウザであっても、
更にはテキストブラウザや音声読み上げでも大きな問題は無いはず、と言う、
ユーザビリティアクセシビリティの新常識が浸透してきましたので、
今時、環境差異を殊更問題にするのは、「わかってない自称Webデザイナー」かも。
ドッグイヤーなこの業界においては「何年前の話だ」と言う感じですね。


Webにおけるユニバーサルデザインが現場で受け入れられる様になって来たのは、
XHTML+CSS」が世間に受け入れられはじめた事の影響が大きいと思います。
そして、そのきっかけは「Blogブーム」に代表される各種CMSの普及。
従来の「HTML4.01」に比べてルーズさが許されない「XHTML1.x+CSS」は、
世間には到底受け入れられないと言う悲観的な見方がかつてありましたが、
皆がツール(各種CMS)を使い、意識する事無くstrictな「XHTML1.x+CSS」を吐き、
あれほど悲観視されていた「XHTML1.x+CSS」がWebの世界でシェアを取りつつあります。
この「ツールによるルーズHTMLの駆逐」の流れは、まさに「技術による解決」です。
(各種CMSの開発者に心から感謝と敬意を捧げます、って丸々余談だ。)


今、相手がWebについての知識がある顧客であれば、当然の如く、
ユニバーサルデザイン、JIS規格、ユーザビリティアクセシビリティ等の単語が出て、
案件の大前提として「これはもちろん出来るよね?」と言う話になります。
(これらはSEOの文脈で言及される事もあります。)
システム屋さん等からは畑違いで見え難いかもしれませんが、
Web屋さんにとってのユニバーサルデザインと言う言葉は、
現状では上記のような意味であり、また「新スタンダード」です。
これを理解していないと、悪く言えば「イタイ自称デザイナ」ですし、
和らげて言っても「Webとか分かってない小口の客を専門にしている」とか、
「3年ぐらい現場から遠ざかっていた」と言う言葉が頭に付くデザイナでしょう。


以上が「Web環境としての言及」。
で、もう1つの「作業環境としての言及」としては、
いや、それはやってりゃ慣れるだろう、と身も蓋も無い事を思いました。
デザイン畑ではMac人気が根強く、ファイルのやり取りで困るのは事実だけど、
あまり軽率な発言をすると入社3ヶ月のペーペーと思われるかも...。
困っているなら素直に相手のMac使いと相談すべきですよね。
実際問題としてMac使いだけで御仕事は回さないんだし、
Macにも他環境とファイルをやり取りするためのツールがあるので、
Mac使いの側にもそれらを使う労を負わせ、Winに対して歩み寄って貰いましょう。
相手の(Mac使いの)デザイナーがその手のツールに疎いとしても、
仕事なんですから甘やかすのは良くないと思います。

ユニバーサルデザイン的解答


で、この指摘者はどのような言葉を選ぶべきだったのか?と言う話ですが、
現在、実際の仕事でこれらの知識・技術を全く求められていないのであれば、
ユニバーサルデザインにコスト(労力)を掛ける事の必要性は、
どんなに熱弁を振るおうと理解して貰えないかも知れません。
現状で足りている者に、「更なる高みを目指せ」と尻を叩いても、
「いや、俺はここでいいよ」と言われてしまうでしょう。


しかし、OS・ブラウザの環境差に苦しんでいると言う事は、
現実に顧客がOS・ブラウザの環境差を吸収するデザインを求めていると言う事なので、
それに気付かせる事が出来れば、「足りない」と理解して貰えるはずです。
ただ、プロ相手にそこまで啓蒙するのはアレですけど、
(コメント欄に適切な長さでは無理だろうし、)


洗脳合戦ではなく、相手の理解を得て問題を解決しようとするならば、
まずは当該問題を細かく分解し、構成要素を分析する必要があると思います。
この件で大元の文章は「Web環境」と「作業環境」を一纏めにしていると読んだのですが、
解きほぐせば、前者はユニバーサルデザインにより解消する問題ですし、
後者は個々の問題に対して「技術的解決」が見つかると思います。
Mac使いとコミュニケーションを取る事を厭わなければ、ですけど、)
逆に、洗脳合戦ならば異質の問題を無理にでも一纏めにして、
「雰囲気」に巻き込む事になるんでしょうね。

「Web業界の 最近の潮流は ユニバーサルデザイン とか そういう方向の ようです。 だから わざと極端な話を 書いて 明らかにネタだと わかることを 書いても それを マジだと 受け取ってしまう 人たちが いるかも。 その人たちに ズバズバと すごい事を言う Webデザイナー だと 思われる可能性が ある気が しました」

この、モヒカン砦のリーダーらしきヒト*1の答えは、
相手がユニバーサルデザインの必要性を認めていないであろう事に踏み込んでいません。
ムラ社会向けの解法ではそこに踏み込むべきでないとの判断かも知れませんが、
根底の理解が異なるままでは、言葉を婉曲しても解決にならないでしょう。
そこが「ムラ社会の限界」であると言う事は重要なポイントです。


と、ネタマジレス
いや、「わざと極端な話を書いて明らかにネタだとわかることを書いても」は、
幾らなんでも挑発が過ぎると思いますよ。と言うか、
最初の「冗談にせよそういうことを書くと」の時点で既に、
相手の方は煽られまくっちゃって即荒らし認定したんでしょうけど。


コミュニケーションって難しいですね。
でも、モヒカン族はコミュニケーションに臆になってはいけないと思います。
相手が自分の言葉の中から敵意などを錯覚して凄く傷付いたり、
傷付いた事を理由に猛反撃してくるとしても、
言わないよりは言った方がマシ。

*1:しつこいようだが「モヒカン族の長」ではない。詳しくはmohicanグループキーワード「タイラー・ダーデン」参照。

余談ですが、


環境差異の問題は、むしろWindowsの方が厄介だったりします。
例えば、企業の中には社内標準環境が「WindowsのNetscapeNavigator4.7」と言うところもあります。
この人達はWindowsXPにまでNetscapeNavigator4.7をインストールします。
...これ以上は気が滅入るため書きません。


で、「Webにおけるユニバーサルデザイン」については、
1行毎に<p>で括られた状態の私が言えた立場じゃありませんね。