02, 12. 2009 銀杏


2枚目の案内状の個展は、南の中島公園の近くの会場だった。秋の初めに、昨日紹介したS 氏のグループ展があって、訪ねて来たことがあるので、場所は頭に入っていた。地下鉄を乗り継いで、中島公園駅で下車した。外へ出ると、辺は一層薄暗くなっていた。北へ向う前に、昔からある銀杏並木を思い出し、左手の公園を覗いた。もう葉は殆ど落ちて、地面が落葉に覆われていた。僅かに葉を残している樹があって、地面を見ると銀杏が落ちていた。遠い昔のことが、ふと甦った。





銀杏並木の東側には現在ホテルが建っているが、以前この敷地には、市立の中学校があった。下見板の木造の、大きな中学校だった。大学4年の秋に教育実習があり、家から近いこの中学校へ配属された。実習期間は6週間程。毎日中島公園を通ってこの中学校に通った。公立の中学校は初めてだったので緊張したが、受け持ったクラスは1年生で、やんちゃで可愛らしい子供達だった。生徒数は多く、教室の後迄声を届かせるのは至難の業で、3日で声が潰れてしまった。幸い、その後に就いた教職の仕事は短大や大学で、マイクの設備があったから事無きを得たが、今でも大きな声を出すのは苦手で目眩がする。

秋が深まって、銀杏の並木が黄金色になった。教室は西の2階にあって、窓は黄金色の銀杏で覆われていた。ある朝教室へ行くと、数人の男の子達が、顔を赤く晴れ上がらせていた。驚いて尋ねると、前日放課後に、窓から銀杏の樹に乗り移り、銀杏を採ったのだと云う。銀杏の実で皮膚がかぶれるのをその時初めて知った。悪さに加担した生徒は数日、何よりの証拠の腫れた顔で登校していた。以前は大きく聳えていた銀杏並木は、深すぎる程剪定されて、往時の姿からは程遠かった。個展を拝見して、札幌駅の北にある次の会場へ向おうとしたら、雨が落ちて来た。この寒さで雨に当たっては風邪を引く。若い作家の個展で春にも拝見しているし、またの機会もある事だろうから、取り止めて戻った。



昨日早朝の深い霧は、中々晴れなかった。9時を過ぎて漸く晴れ上がり、久々の晴天となった。終日概ね好天で、綺麗な夕焼けが見られた。今日も晴れ間が出る予報が出ているが、この後暫くは天候が崩れる模様。手がけている2点の目処を付けてしまいたい。