ウェブがわかる本 (岩波ジュニア新書)

昨年発行された、稚内北星学園大学の「図書館だより」に掲載された原稿です。こちらに転載しておきます。

ウェブがわかる本 (岩波ジュニア新書)

ウェブがわかる本 (岩波ジュニア新書)

 いまの大学生のみなさんは、子どものころからインターネットに親しんできた方が多いようだ。その一方で、最近はじめてインターネットに触れ、「インターネットで何ができるのか」を知るために本学の公開講座を受講する一般の方もいる。
 いずれの方にも、本書はお役にたつであろう。
 本書の冒頭では、知らない遊園地に遊びに行くための下調べと、遊園地に行ってみた感想を他者に伝えるという例が出されていた。ここでは、ウェブを使った場合と使わない場合の二つの行動パターンを通して、いまのウェブで何が可能なのかを示している。その次に、「共有とコミュニケーションという、ウェブの根本をなす考え方」(55ページ)を軸に、ウェブの概要とその歴史がわかりやすくまとめられている。特に、いまのウェブの大きな要素である、ブログ・SNS集合知の三点について詳しい。さらに、最終章「ウェブとつきあうために」がおもしろい。ウェブ上ではコミュニケーションが難しく、また不正確な情報が流れやすいといったような事柄について、それらに対する「心がけやスキル」(151ページ)を語っている。本書では、そうした問題について過剰に反応することも過小評価することもなく、穏やかで的確な対処法が提示されている。
 本書を読むことによって、インターネットの利用歴が短い方は「ウェブで何ができるか」知ることができるだろうし、利用歴が長い方もウェブの全体像を頭の中で整理し、ウェブとの接し方について新たな視点を得ることができると思う。また、ウェブを学習や仕事で利用する人には「ウェブを使ってレポートを書こう」という章が有用だろう。
 ウェブやその利用者に対して決して否定的なことは述べず、読者を生産的な方向に誘導しようとする作者の姿勢は見事である。本文は読みやすい日本語で、図版もとてもきれいだ。ぜひ手に取ってご覧いただきたい。