藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

オフィス(?)を借りるかもしれない・・・(1)コモンルーム四条烏丸

ブログにおいては、大変ご無沙汰しております。ぎーちです。

もう読者もいないかもしれませんが、ちょっと悲しいことがありまして、残念ながら同志社大学法科大学院の授業が2022年度で終わりになることになったようです。正式に言われた訳ではないのですが、2023年度の授業の割当ての連絡がないので、そういうことなんだなーと察した訳です。言ってくれても良いのにねえ。

ということで、1つ困ったことがありました。同志社大学法科大学院の寒梅館の客員教授室を今まで利用できてきたので、京都にいる際の執務スペースに困らなかったのですが、いつからか分かりませんが、使えなくなるので、京都の執務スペースが欲しくなりました。勿論、自宅を使ったら良いのですが、しかし、たまに人とお会いしてのミーティングをする時に大学というのは便利だった訳です。個室でしたからね。
東京・大阪にちゃんとしたオフィスを借りているので、そちらに行けば良いのですが、しかし、近時のWeb会議の隆盛により、会議の時間も、土日に入ったり、早朝や深夜に入ることもある。私の場合、時差のある会議も結構あります。やはり、客員教授室に代わる執務スペースを、東京・大阪とは別に京都で確保することに、私には意義があるように思います。

ということで、京都のコワーキングスペースのうち「完全個室」がある施設を借りることを目的として、あちこち探し歩こう、それをブログ化したら、人様のお役に立ったり、自分が振り返る時に良いかもしれない!と思い立った次第です。

なお、弁護士は、弁護士法で「1弁護士1事務所」のルールがあります(弁護士法20条3項本文)。今回、借りるオフィスがあったとしても、法律事務所の支店といった使い方はできません。弁護士法人創知法律事務所の京都支店!といった宣伝もできません(各支店には出資者弁護士である社員が常駐しなければなりません。)。


初回の今日は、各種ホームページで下調べの上で、コモンルーム四条烏丸さんに行ってきました!

common-room.jp

まず立地ですが、四条烏丸より少し南、地下鉄だと五条の方が近いくらいです。四条烏丸、というには、若干離れているかもしれません。私にとって非常に重要な「スタバとの距離」に関して申し上げると、「からすま京都ホテル」1階のスタバが最寄りとなります。まあ、徒歩圏(Google Mapで450m)と言えるでしょう。駅やスタバから若干離れていてもここが良いかなと最初に思った理由は、直ぐ近くに深夜まで営業してくださってワインの美味しい「バルケッタ」さんがあるからでした!ここ、かつてはもっと遅くまで営業していたのですが、今はGoogle Mapさんによれば午前0時までのようです。でも、美味しいお店が近いと、仕事捗りますよね。

さて、コモンルーム四条烏丸さんに着いてまず目立ったのは、全体として白系の色に統一されていて、おしゃれ感でした!また、1階に直営のカフェレストラン、食べてませんのではっきり分かりませんが、よさげでした!

2階以上がシャアオフィスになっていますので、早速入ります。エレベータに乗ると、普通は貼ってある「保守サービス」業者のシールがないことが気がかりでしたが、これは直接お尋ねして、ちゃんと保守に入っているとのことでしたので、一安心。

3階以上が「個室」なのですが、実は事前に聞いて分かってはいたのですが、こちらの個室は、「完全個室」ではなく、上部が少し(20cmくらい)空いている「半個室」タイプなのです・・・。これ完全に僕の希望から外れてしまっているのですが、一応ご担当の方に、皆さんがどうやってWeb会議をしているか尋ねると、この半個室でヘッドホンをしてWeb会議をするか、2階に2部屋ある会議室を借りて会議をされているとのことでした。2階の会議室は、3階以上の「半個室」を借りている方は、無料で使えるとのことでした(但し、22時以後朝までは借りられないそうです。)が、特に平日は予約が混み合っているとのことでした。なお、会議室の利用時間制限(1月5時間まで、とか、10時間まで、とかといった制限)はないし、土日も借りられるとのことでしたが、1度の予約では15時間までとのことです(15時間丸々会議室を借りてしまう方もいるらしいです。)。

場所・雰囲気良かったから、Web会議の時だけ会議室を借りて使うのもありだな!と思ったのですが、現に私が訪問した土曜日の午前中も、2つの会議室のうち1つが占められていて、これは会議室占有競争は激しいかもしれないなあ、と思い、ちょっとお借りするのは難しいかもなあ、と感じました。

なお、お値段のシステムも明快で、保証金を除けば、月額利用料のみで「半個室」を借りられます。1名用33,000円~38,500円、2名用44,000円~49,500円、3名用52,800円、4名用60,500円だそうです。完全個室、ではなく半個室で良い方には、良いと思いました!!今日現在で、少しだけ空きはあるそうです!!

あと、私が使う可能性のある使い方で言えば、コワーキングスペースのドロップイン(一時利用)のうち、夜利用はありだと思いました。受付を17時30分から18時までの30分の間にしなければならないのですが、受付したら、24時まで6時間ずっといても1,100円で使えます(昼間の3時間利用と同料金、平日・土曜日。予約不要。)。周囲の方から画面が見えてしまうと思うので、通常の弁護士業務では利用できないと思いますが、執筆とかで困った時は、電源もあるし、アリかなと思いました。

コモンルーム四条烏丸さんの「看板」。ちゃんと写真撮るの忘れました・・・。

 

この国の余裕は何処へ

ここ数日飛んでくる色々な情報や違和感から、あれこれ考えていた。うまく表現できるか分からないが、書いてみる。

1.我が国の博士課程進学者数が減少傾向にあり、他の殆どの国が増加傾向にある中で、進学者数において差をつけられつつあること。

https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2017/07/24/1386653_05.pdf

2.「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。」(日本学術会議法17条)「会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。」(同7条2項)と規定されているところ、菅総理が推薦された6名の学者を任命しなかったことが問題となったこと。

特に、菅総理を擁護する言論の中で、「日本学術会議」や、もともと日本学術会議法にて規定されていた「日本学士院」が「老人クラブ」であって無意味だという言説を支持する人が比較的見受けられたこと。

3.これは別に特別な話ではないけど、周囲を見ていて、比較的「医者」「弁護士」といった資格は大事にするけど、学位を大事にしないような風潮があるように感じられること。

 

上述した3つは、全部つながっていると感じる。

僕の愛する日本という国が、世界から益々取り残され、「ガラパゴス化」が進む。それが「独自の発展」であれば良いけど、そうでなく、取り残されてしまうのではないか、そういう悪い兆候だと感じる。

要するに、「知に対するリスペクト」がなさ過ぎる。資格試験とか「誰でも頑張れば挑戦できる」程度の獲得(僕も、そのレベルでしかできていません。)に過ぎない。博士とは、ある特定の学術分野において、長い時間をかけて、新しい研究、新しい発見をする者であり、その数は、その国の研究や発見の数に直結するであろう。特に重要だと思われるのは、「学術」分野においての研究・発見ということになるので、必ずしも近視眼的な実益とは直結しない研究・発見も多く含まれるであろうということである。中長期的に見れば、そのような研究や発見が社会の変革を後押しすることがあり得る。産業分野においては、利益中心で相対的に近視眼的にならざるを得ないが、アカデミアではそれと異なる基準で研究・発見を行うことができるのである。産業分野とアカデミアが、それぞれ独自の論理で研究や発見を行うことで、総体としての国の力が大きくなっていくものである。

ところが、我が国では、いま、このアカデミアにおける知が軽視されている。たしかに「いま」の生活だけを考えれば、重要ではないのかもしれない。そして、いまこの国に余裕がないのかもしれない。また、そのような博士を目指すような、あるいは、博士である人間というのは、日本国民全体からすればごく少数の「エリート」であって、博士のために政治をしても選挙で票にならないかもしれない。寧ろ、大衆の気持ちを察するなら、選挙対策的にも、「エリート」をやっつけるような政治を行った方が、大衆からの喝采が得られるのかもしれない(まさに文化大革命ナチスによる政治は、その色彩があった。)。しかし、大局的にものごとを考えれば、そういった「エリート」を育てていく、博士に頑張って貰うことは、博士になっていない僕(すいません修士です。)を含めた全ての人の利益になるのだ。「エリート」を馬鹿にする、「特権」だといってけなす政治は、一時的にウケるかもしれないが、この国を弱くするだけの、間違った政治だと思う。心配だ。

 

最後に、日本学術会議法に戻る。菅総理には、「推薦」された人を「任命」しない権限があると、素直に法律を読めば感じる。「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。」(憲法6条1項)とは、明らかに違う。しかし、歴史的経緯からしても、法文の立て付けからしても、自由裁量で「任命」できるとは解されまい。何故「任命」しないのか、説明責任があるだろう。もっとも、「任命」しないことが行政訴訟で違法とされるかと問われると、法的には違法ではないかもしれない。ないかもしれないが、この国の総理には、この国の未来を明るくするためにも、アカデミア・博士等「エリート」へのリスペクトと余裕を持って貰いたい。姑息な政治的事情で6名の学者を日本学術会議の会員に「任命」しなかったのだとするなら、それはがっかりだし、例え博士と縁のない人にとっても、残念な政治になっていることに、気づくべきではないだろうか。

 

原爆の日

ぎーちです。

明日は、8月6日。75年前の1945年8月6日午前8時15分、原子爆弾が広島上空に投下されました。当時、40万人都市であった広島でしたが、少なくとも14万人の方が命を落とされたとされています。

例年であれば、犠牲となった方のご冥福を祈り、また、今後同じような惨禍が繰り返されないようにするための決意をしに、平和記念式典に一般出席するのですが、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、今年は、一般出席はできないことになってしまいました。広島人からすれば、私が広島に近づくこと自体が、新型コロナウイルス感染症の蔓延につながるように見えるかもしれませんし、今年は、何十年かぶりに、広島に8月6日に立ち寄らずに、お祈りをしたいと思っています。

私は、広島出身です。最初に通っていた広島市立仁保小学校には、当時は、まだ被ばくした木造校舎が学校の西側、コンクリート4階建ての校舎と体育館をつなぐ通路のような形で存在していました。しかし、転校後だったと思いますが、建替となり、なくなってしまいました。最近、広島・本通のパン屋さん「アンデルセン」(東京駅の丸の内側ラチ内にもありますよね)の本店、ここも被ばく建物でしたが、綺麗になり、被ばくしたとは感じさせない感じになったと聞いています。75年前の出来事ですので、徐々に被害を物語るものが少なくなり、また、被爆者も高齢化して、被ばくの実態が分かりづらくなっていると感じます。しかし、核兵器そのものは、なくなるどころか、核抑止論なる理屈と共にいまも存在し、寧ろ北朝鮮などいくつかの国が拡張・拡散しようとしています。

僕の人生目標は、核兵器の廃絶です。もう人生半分過ぎてしまって、果たして達成されるか、また、核兵器の廃絶のためになる行動をしているのか、色々クエスチョンマークが頭を回る日も少なくないのですが、また、僕は政治家でもなく、できることに限りもあるとは思いますが、こんな危険なものと一緒に人間が生きて行くのは、容易ではなく、そして万一の危険が極めて大きいことから、廃絶することについて万人にメリットがあると信じています。身近なことから、核兵器の廃絶の必要性を訴え、また、学んで行くことを通じて、一歩一歩核廃絶は実現していく筈です。

近時、アメリカの世論調査で、核兵器は必要ないというアメリカ人が7割だったというニュースを耳にしました(下記参照)。

www3.nhk.or.jpこういう変化も、少しずつ起きていることではないかと思います。

8月6日というのは、そういう核兵器のことについて考える良い機会だと思います。皆で少しずつ、核兵器の廃絶を進めていけるのではないか、そう思っています。

京都大学法科大学院の試験実施方法変更について

ぎーちです。

私が教えている京都大学法科大学院の期末試験、明日から対面試験方式で実施の予定でしたが、本日さきほど、オンライン試験での実施と変更されました。

最終的に、何故オンライン試験になったかについて、客員教授でしかない、つまり教授会のメンバーではない私には、分かりません。

ただ、私が知っていて、特に公表しても問題ないと思われる限りのことを述べると、この数日、100名を超える学生が大学に対して客観的、冷静な対面試験方式反対の意見を表明したということを挙げることができると思います。

客員教授でしかない私のもとにも、直接面識があるか否かに拘わらず、何名もの学生から、大学側に提出する意見についてのドラフトのチェック、結果的にどうなるかは別として、自分達の考えを聞いて欲しいとの接触がありました。私自身も多少のことをしましたが、結果的に、学生が大学を動かしたということだと思います。

オンライン試験に変更されるということは、教科書などを参照しながら試験の解答をすることができるということになります。対面式であれば、できない調べ物をすることができるということで、学生間において、試験方式の変更により試験結果に有利・不利が出ると思います。京都大学法科大学院の成績は、厳格に採点されます。A+なのか、Aなのか、その差が気になる学生も少なくないと思います。よって、自らの得意・不得意を考慮すれば、オンライン試験よりも、対面試験方式の方が良いと考えた学生も少なくは無かったと思います。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延状況に鑑み、どこまで対策をすれば「安全」なのか客観的には分からないという状況の中で、多くの学生が「不安」のまま、つまり、主観的「安心」が確保されないまま実施されるよりは、客観的にも主観的にも「安全」「安心」な状態でオンライン試験が実施される方が、全ての学生に対して相対的にフェアではないか、そう思います。故に、対面試験方式を望む学生からすれば、不利益もあるでしょうが、ここは、それを上回る利益のために甘受して貰えたら良いなあと思います。

この小さな、試験実施方法の変更も、私の「新型コロナウイルス感染症」との戦いの1つとなった気がしますので、ここに記録しておきます。

GoToトラベル事業を差し止める裁判について

ぎーちです。

今日2020年7月22日は、「GoToトラベル事業」の開始日です。残念ながら、GoToトラベル事業は、始まってしまいました。

 

1.裁判に関する事実経過

私は、7月22日が「GoToトラベル事業」の開始日であるということを、7月10日の金曜日の夜に知りました。国土交通大臣の会見のあった日のニュースで、です。

別の箇所でも述べていますが、僕は今でも、この「GoToトラベル事業」を「いま」行うことは、明らかな誤りだと思っています。思っているので、裁判で差し止めませんか?という呼びかけをさせて貰いました。

 

結果、「勇気ある」債権者3名と共に、民事保全という手続を使って、東京地裁に対し、7月16日、「GoToトラベル事業」の差止を求める裁判を申し立てました。

主張の内容は、こうです。

「GoToトラベル事業」は、「新型コロナウイルス感染症の収束後」に行うということが明示されて、予算が国会を通りました。しかし、新型コロナウイルス感染症の現状は、収束からはほど遠く、旅行が促進されると、債権者らの生命・身体・健康など、人格的生存権が侵害されてしまう、これを後から正式裁判で争っていては、取り返しのつかない結果となるから、「いま」止める必要がある、と。

しかし、東京地裁は、7月20日、「GoToトラベル事業」(本件事業)によって、『国内における人の移動が現状よりも活発になることは否定できない』ものの、『個人及び事業者等において、いわゆる三密の回避など感染防止対策の実施が推奨され』、『本件事業は、観光等の需要喚起を目的とするものにすぎず、旅行することを強制しているものではない』、『現在の感染状況やそれを取り巻く環境等に鑑み、旅行を差し控える者も一定程度存在すると考えられる』ことや、観光業者等も対策を講じるから、『現在の状況と比べて、直ちに債権者らが主張するような生命、身体及び健康という重大な保護法益が現に侵害され又は侵害される具体的な危険が生じるとはいえない』として、この申立を却下するという決定を行いました。

 

翌21日(といっても昨日のことですが)、債権者3名の方と協議の上、即時抗告の申立を東京高等裁判所に対し行いました。

そして、今日7月22日、東京高等裁判所も、以下のように述べ、私たちの即時抗告を棄却するという決定を行いました。

 現在,我が国においては,国内における移動についての法的な制限がないため,本件事業とは無関係に国内を移動する者(例えば,本件事業を利用せずに旅行する者,業務目的で国内を移動する者など)が一定数存在することは避けられないところである。そのような状況も踏まえて,個人及び事業者等において,いわゆる三つの密(密閉空間,密集場所,密接場面)の回避などの感染防止対策の実施が推奨されている上,観光事業に携わる交通機関,宿泊施設や飲食店等においても,新型コロナウイルス感染症の感染者が生じた場合には,事業に対して大きな悪影響が生ずる恐れがあることから,可能な限りの感染防止対策を講ずるものと考えられる。そして,本件事業が開始されても,感染状況の推移やこれを取り巻く環境等に鑑み,旅行を差し控える者も相当程度存在すると考えられる。

 以上の点を考慮すれば,本件事業が開始されたからといって,これによって,直ちに抗告人らの生命,身体及び健康が侵害され,又は侵害される具体的危険が生じるとまでは認められない。

 

2.いま思うこと

そもそも、「GoToトラベル事業」は、国会における第一次補正予算を通過したものであり、これを行政が執行しているのですから、司法が口出しをするのも、例外であるべきというのも分かります。しかし、「GoToトラベル事業」は、収束後にされると決まっていました。現在の感染状況、新型コロナウイルス感染症の危険性その他、諸々の状況に照らすと、例外的に、司法が口出しすることが許されるのではないか、それくらい、皆の生命・身体・健康に危険が迫っているのではないか、そういう思いでこの裁判を始めた訳ですが、東京地裁及び東京高裁の論理に従えば、例えば、「可能な限りの感染防止対策を講ずるものと考えられ」る観光業者の行う感染症対策が効果を出さなかった場合など、東京地裁・東京高裁の想定する状況とは異なる状況が生じれば、将来、生命、身体及び健康に対する具体的な危険性が生じ、再度の申立については、差止が認められることもあるかもしれません。何より、本当に危ない状況が生じれば、裁判所が場合によっては、人格的生存権によって、特定の政策を止める可能性があることが明らかになったことそのものは、1つの成果ではないかと思います。

勿論、私たちの心配が杞憂となり、「GoToトラベル事業」の実施にも拘わらず、感染が広がらなかった、具体的危険が生じなかった、というのが、理想です。是非とも、そうであって欲しいです。

他方、様々な制約の中で、3名の方が、申立をしようと思って下さったことにも感謝しています。それぞれ、人は、様々な制約の中で生きています。私から誘ってしまうと、断りづらくなるのではないか、そう考えて、私からは、誰に対しても、個別にこちらから働きかけしませんでした。そのような働きかけなしに集まって下さった方々です。うち2名の方には、事前の面識もありませんでした。3名の方が、私の裁判戦略・戦術に満足したか否かは不明ですが、一応、やるべきことはやったのではないかと思っています。

直近では、日々、感染状況が悪化しています。「GoToトラベル事業」差止のための第二の保全事件、すぐに始めなければならない状況に、ならなければ、良いのですが・・・。

 

Gotoトラベル事業をこのまま許して良いのだろうか?今こそ司法の力で、疑問を提起するべきではないか?

ぎーち(弁護士の藤本一郎)です。

GoToトラベル事業、ってご存じですか?

観光庁のHPに説明がありますが、要するに、旅行代金の半額を補助しようとする政策です。

この「Gotoキャンペーン」には、5つの事業があるのですが、その総予算規模は、1兆7000億円、Gotoトラベル事業だけでも1兆3000億円と、巨額です。

その目的は、次のように説明されました(補正予算資料の3頁目をご覧下さい)。

新型コロナウイルスの感染拡大は、観光需要の低迷や、外出の自粛等の影響により、地域の多様な産業に対し甚大な被害を与えている。

このため、新型コロナウイルス感染症の流行収束後には、日本国内における人の流れと街のにぎわいを創り出し、地域を再活性化するための需要喚起が必要。

(まずは、感染防止を徹底し、雇用の維持と事業の継続を最優先に取り組むとともに、)今回の感染症の流行収束後において、甚大な影響を受けている観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテイメント業などを対象とし、期間を限定した官民一体型の需要喚起キャンペーンを講じる。

なるほど、「流行収束後」に、需要喚起キャンペーンをすることは、結構だと思います。私も、温泉行きたいし、旅行行きたいです。

 

では、新型コロナウイルス感染症の「流行収束」はしたのでしょうか。新規感染者数を見て見ましょう。

 

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感染者数の推移(全国)

どうでしょうか?どう見ても、第二波が押し寄せていると感じませんか?上記は、全国ですが、これを東京都に絞ると更に明確になります。

 

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感染者数の推移(東京都)

東京都においては、7月9日の新規感染者数が224名、7月10日の新規感染者数が243名と、緊急事態宣言の発令されていた期間の1日あたりの最多数であった4月17日の206名を超える日が2日連続で発生しており、7月10日迄の7日間平均の新規感染者数も142名にも達しています。

 

緊急事態宣言の解除の際に、解除や再発令の目安として、以下のようなものが説明されました(「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」ご参照)。

以下の3点に特に着目した上で、総合的に判断することとしている。

① 感染の状況(疫学的状況)

オーバーシュートの兆候は見られず、クラスター対策が十分に実施可能な水準の新規報告数であるか否か。(例えば、直近1週間の累積報告数が10万人あたり0.5人未満であるか否か。)

② 医療提供体制

感染者、特に重症者が増えた場合でも、十分に対応できる医療提供体制が整えられているか否か。(例えば、重症者数が持続的に減少しており、病床の状況に加え、都道府県新型コロナウイルス対策調整本部等により患者急増に対応可能な体制が確保されているか否か。)

③ 監視体制

 感染が拡大する傾向を早期に発見し、直ちに対応するための体制が整えられているか否か。(例えば、医師が必要とするPCR検査等が遅滞なく行える体制が整備されているか否か。)

このうち、10万人あたりの1週間の新規感染者数(=累積感染者数)が0.5人未満か否かについて、仮に東京都の人口(約1400万人)を基準に考えるならば1週間あたりの新規感染者数が70名未満か否かで判断することになります。

かかる基準に照らせば、少なくとも東京都は、1週間平均が、この70名の倍の140名を超えている訳ですから、再度緊急事態宣言を行う必要がある感染状況にあると言い得ると思いますが、いかがでしょうか?

 

このような状況ですが、政府は、7月10日、このGotoトラベル事業を7月22日から開始すると宣言しました。流行収束後、ということで、予算を通したのですよね?しかし、流行は収束していないと思いませんか?

先述した「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」においても、

国民の生命を守るためには,感染者数を抑えること及び医療提供体制や社会機能を維持することが重要(1頁)

肺炎の発生頻度が,季節性インフルエンザにかかった場合に比して相当程度高く,国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある(2頁)

と明記されています。新型コロナウイルス感染症が収束した後にお金を使って支援するのは良いと思いますが、このような状況で、1兆3000億円の予算を使って、国民の生命を害してもいいのでしょうか?

 

本来、このような政策は、政治の役割です。国家予算は、国会で決めます。行政は、決まった予算を執行します。しかし、「流行収束後」に使うといった予算を、「流行収束前」に大規模に執行するのは、行政の裁量権の逸脱・濫用にあたるのではないでしょうか?

 

このような観点から、私は、この予算の執行について、行政訴訟又は民事訴訟で差止をすることを検討しています。行政訴訟については、法的には、恐らく取消訴訟+執行停止申立が一番整合するとは思いますが、行政処分性があるものは一体何なのか、つまりは、取消の対象は何かが非常に悩ましいです。民事訴訟については、国民個人の人格権侵害(生命・身体に対する侵害等)を訴えるやり方を考えています。ただ、7月22日に執行が予定されていますので、保全手続(仮処分)が良いと思います。現時点では、まだ決めていませんが、とにかく、待っていたら7月22日が来てしまいますので、数日以内に確定して、やりたいと思います。

訴訟の目的は、勿論、そのような予算措置を差し止めることですが、最終的には、仮に裁判に勝たなくても、このような運動を通じて、国民の危機感が政府に伝わり、Gotoトラベル事業の開始が延期されるというものでも良いと思っています。つまり、裁判は、Gotoトラベル事業の開始を延ばすための一手段だと考えています。勝訴を保証することはできません。厳しい道だと思います。

 

なお、これを政治的に反映したいという思いはありますが、これで自民党をやっつけたいとか、立憲民主党共産党に加担したいという思いはありません。私は、ただただ、国民の安心・安全が確保され、皆が新型コロナウイルス感染症にかからず、健康に過ごせるようになれば、それで良いのです。

勿論、私も経営者ですから、経済が回らないことはとても困ります。私自身、5月6月については、経営する法律事務所の売上に打撃を受けました。私自身、経営者として、この売上を回復するために色々と頑張っています。しかし、それとは別に、いち国民として、このような国民の安心・安全をないがしろにする政策はまずい!という本能から、この文書を書いています。政府も、いまの経済対策は、これ以外で頑張るべきだと思います。

 

そこでお願いがあります。

第1に、私は弁護士であって訴訟代理人になることはできますが、原告本人になることは難しいです。原告になっても良いという方、下記フォームから、申込をして頂けませんか。なお、実費としての費用がかかります(はっきりしませんが、3万円程度はかかると思います)。ただし、もし保全に成功した場合には、担保を積まなければいけないので、その点は、もしうまくいった場合には、考えないといけません。

docs.google.com第2に、一緒に考えて行動してくれる弁護士さん、いませんか?

勿論、上記のとおり、実費程度でやるつもりですので、弁護士の売上にはなりません。また、もしも原告が多数登場したら、色々やらないといけませんが、私1人ではやれません。

docs.google.com原告と一緒にやってくれる弁護士が現れたら、私も頑張ります。

誰もいなかったら、ごめんなさい、書いただけで、何も行動できないかも、しれません。

私としては、私を励まして、一緒に戦ってくれる原告候補・弁護士が沢山あつまると嬉しいです。是非Zoomか何かで打ち合わせしましょう!

なお、うまく送れない場合は、twitter ifujimoto で連絡を頂くのでも構いません。

 

以上よろしくお願いします。

お久しぶりです。

ぎーちです。

久しぶりに、個人的なものを書いてみたいと思います。

最近の私は、法律事務所の経営者であり、また大学で講義をする者ですが、この非常時の対応に奔走しているというのが、実態です。法律事務所の経営者としては、派手にお金を使ってこなかったこともあり、直ちに資金繰りに心配がある訳ではないのですが、これが1年、2年になったときに一抹の不安があります。ですが、私としては、新型コロナを理由として人を解雇するようなことだけはしないようにしようと心に決めて、とにかく、できる仕事を一生懸命やっていこうと思っています。7都府県の訴訟は止まっていますが、保全や執行は動いていますし、他道府県の訴訟は動いています。打ち合わせもWeb会議で可能ですし。ただ、自宅にいる時間が長くなると、良い面も勿論あるのですが、仕事に関してはかえって疲れる面もありますね・・・。

授業の方は、私の場合3箇所の大学院で教えていることもあり、大学によって対応が分かれていることもあり、色々と難しい問題がありますが、先般同志社大学法科大学院でZoom授業をやりました。会議でZoomは良く使っていましたが、授業は初めてでした。でも、思ったよりスムーズに出来た気はしています。

まあ、ホント非常時ですが、できることを1つずつ、やっていかないといかんですよね。頑張ります、頑張りましょう!