タガの存在


2008年の重大ニュース


国内関連で主な見出しを拾ってみると
・中国産ギョーザ、汚染米、うなぎ…「食の不安収まらず」
秋葉原17人殺傷「誰でもよかった」
大分県教委で採用汚職
・戦後初 日銀総裁空席に
福田首相も政権「投げ出し」、麻生内閣 支持急落
毎日新聞2008年12月30日付け朝刊16面)


箍(タガ)が外れているという形容がぴったりだと思うのだが、いかがだろうか。中国産ギョーザについては先方の事情もあるので、定かなことはいえない。だから純粋に国内の状況について絞って考えるなら、これまでなら「やるべきではないこと。やってはいけないこと。やったら取り返しがつかないこと」を、今年はオンパレード的にやってしまった一年といえないか。


そして恐らく箍は、今年、外れたのではない。これまでにもあちらこちらで箍は緩みつつあったのだ。が、それらは本来なら外れてしまっては困るものである。これまでの社会では「それやっちゃあおしめえよ」とされてきた一種の規範が箍なのだ。そう簡単には緩んでもらっちゃ困るのだ。そうなると社会そのものが根底から揺らいでしまうのだから。


だから、箍が緩んでいるなあという実感はあっても、外れていると認めてしまうにはいささか抵抗があったはずだ。もしかしたらマスコミもそう思っていたのではないか(あるいは、そんなに意図的ではなく、ただ気づかなかっただけかもしれないが)。


だが、今年を冷静に振り返るとどう考えても「箍が外れた一年」なんて初歩的なレベルではなく、すでに「箍が外れていることが明らかになった一年」と思えてしまう。


そして、そう捉えておいた方が良いとも思う。なぜなら「箍が外れてしまった」という現状認識からの方が、じゃあもういちど箍をはめ直す、あるいは新しい箍はどんなものにすべきかという議論を始めやすいから。


InsightNowの記事(→ http://www.insightnow.jp/article/2542)にも書いたけれど、現状を「○○の終わりの始まり」と捉えるのと「○○の始まりの終わり」と認識するのとでは、現状に対する対応スタンスが変わってくる。もちろん何でも焦って考えてとんでもない取り違いをするリスクはある。あるけれども、この先どうなるのかを常に先取りして考えるクセを付けることは、決して悪いことではないと思う。


先のことをあらかじめ考えるからこそ、考えていたその「先」がやってきたときに、考えていたことと違うことがわかる。自分の予測と近未来の現実との違いを奇貨として、新たに考えを積み上げていくことができる。その繰り返しこそが、考えることの一面だと思うから。


ときに箍が外れている例は、他にもいくらでもあった。


組織ぐるみのケースなら、年金をめぐる役人さんたちの問題が典型的だろう。裏金だって同じだ。「李下に冠を直さず」とまではいわないが、公僕ということばはすでにこの国では死に絶えつつあるのかもしれない。もちろんすべての公務員がという話ではない。国交省の知人などは身をすり減らして、本当に国のためを思って働いている。ただ腐ったみかんも中には混ざっているということなのだろう。


少し世界に目を向ければ、サブプライムローン問題なども箍はずれ(というか政府が主導して箍を外したとも考えられる)の典型ではないのだろうか。年末に暴露された投資会社が仕掛けていたねずみ講事件なども、そう。アメリカも箍のはずれ具合でいえば、相当なもんだ。


だから、あの国は次のリーダーに米国史上初の黒人大統領を選んだ。ここにまだ希望を感じる。期待を感じさせる担い手がいること、そうした人物を引っ張り上げる仕組みのあること、そしてオバマ氏が次代大統領として選ばれたこと。ここには何らかのメカニズムがあるのだと思う。


翻ってみて日本はどうなのか。


所詮この国は、となげているばかりでは何も始まらない。本当にリーダー足るべく人物がいないのだろうか。どこかに埋もれているだけではないのか。きっといるはずだと思う。


ビジョンを持っていること。ビジョンへ向かって進むためのリーダーシップを持っていること。既得権益を守ろうとする旧態勢力の存在を無視できる堅さをうちに秘めていること。合理的な思考を貫けること。内田先生の評価は高くないが、橋下知事に首相を任せてみたらどうだろうか。


そんなことを思った。




昨日のI/O

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『階層化日本と教育危機/苅谷剛彦
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「好景気の終わりvs大恐慌の始まり」
http://www.insightnow.jp/article/2542


昨日の稽古: