本と顧客志向



本がしばし敵になり、しかる後さらに好きになった


何のことかといえば、書店に並ぶ本である。本は大好きである。好きが嵩じて家には書棚が11本もある。そのほとんどが必殺「前後二列並べ」となっている。


いきなり余談だけれど、10年前に大阪から引っ越してくるときにこれがちょっとしたトラブルになりかけた。こちらとしては引越し屋さんにきちんと見積りを頼んだのだ。だから見積りに基づいて準備してきてもらったはずが、あにはからんや。作業チームのリーダーが本棚を見て「これ、全部後ろにもう一列並んどるやんけ!」というではないか。知らんがな、そんなこと。


あわてて彼は段ボールを追加した。そして段ボールに本を詰め込むうちに、さらには軽トラックまで一台追加した。こちらの落ち度ではないので追加料金を払わされることはなかったが、引越し終了の予定時間をはるかにオーバーしても、作業はまったく終わらない。頼んでいたのが「すべておまかせパック」だった。それゆえ本棚に入っていた本をすべて取り出し、引越して本棚をこちらの要望通りに設置したら、またそこにきちんと入れる作業が残っていたのだ。


結局、一向に作業が終わりそうにないので「後はもう自分でやりますから、いいですよ」と言ってあげた。そのときの作業員の方の顔の輝きようったらなかった。よっぼどつらかったのだろう。という状態で本がある。


中には読んでない本も1割ぐらいあるけれど、とにかく本は好きである。従って、当然本がたくさんある本屋さんも好きであり、本屋に並んでいる本を眺めるのも大好きだった。この本にはどんなことが書いてあるんだろうと思うと、わくわくしますよね。


ところが去年の12月半ばから少しの間だけ、本屋に並ぶ本が嫌いになった。なぜか。それらがライバルになったからだ。つまり、念願かなって自分の本を出してもらえて、それが幸いにも本屋の店頭に平積みされた。ということは?。


まわりにある本は、自分の本にとってライバルになるわけだ。まず直接のライバル関係となるのが、同ジャンルすなわちビジネス書である。平積みになっている他の本を見ると、みんな賢そうである。売れそうである。名前の通った著者の本もたくさんある。知名度だけで負けてるやんなあ、とマイナス思考に陥ったりする。


ビジネス本はともかく小説やエッセイならライバルにならないのでは、という考え方も甘い。何しろ不景気なのだ。本を買いにくる人の財布だって、結構縛りがきびしくなっているはず。そんなにはあれもこれもと気前よく本にお金を出せやしないだろう。お正月休みに読む本をと吟味されたときに、はてして私の本が選ばれる確率やいかに。暗い気分なんだから楽しくなれる小説でも選ぼうとする人の方が圧倒的に多そうである。う〜む、こちらもあまり勝ち目がないではないか。


などと愚にもつかないことを、ついつい考えてしまう。


そんな思いを頭の中で転がしているときに、じゃあ、自分の書いた本はどれぐらい顧客志向になっているのだ? という問いがふいに浮かんできた。あふれんばかりの思いを才能の赴くがままに書くのが小説だとしたら、ビジネス書はきっちりとターゲットオリエンティッドでなければならないはず。じゃ、なきゃ読んではもらえない。


そう考えることしばし。書いた本の企画主旨は、まずBtoB営業に携わるビジネスパーソンのために、である。そう思って書いたし、その内容になってもいる(と思う)。あ〜良かった。


そして、ターゲットにフィットした内容になっているのだから、こんな人に読んでもらいたいと思って書いたその人が、私の本を手に取ってくれたなら、きっと何か通じるものがあるはず。なんてお気楽に思うようにもなった。


冷静にまわりにある本を見渡してみるに、そんなに直接競合しているわけじゃない。逆に考えれば、いろんなビジネス関係の本が集まっていることで、とりあえずビジネス書を求めているお客さんを、自分の本の近くに誘導してくれる効果はあるわけだ。


本来大好きな本をライバルだとか思う必要はないのだ。しかも本を編集してくれた大越さんに逢って話を聞けば、本一冊出すのにどれだけたくさんの人が、どんなに心を込めて関わってくれているかがすごくわかった。私の本も、そうやってたくさんの人の力によって、こうやって書店に並んでいる。


本はどの本も、それだけたくさんの人の思いを込めて作られている。ということが改めてわかり、本がますます好きになった。


顧客を動かす!インタビュー式営業術

顧客を動かす!インタビュー式営業術

昨日のI/O

In:
『日々酔狂/鈴木幸一』
Out:
カクヤス・佐藤順一社長インタビューメモ


メルマガ最新号よりのマーケティングヒント

「思いもよらない異素材の組み合わせ」
http://blog.mag2.com/m/log/0000190025/
よろしければ、こちらも。

□InsightNow最新エントリー
「見えてきたWiiの正体」
http://www.insightnow.jp/article/2593


昨日の稽古: