常盤新平著『東京の片隅』を読む

ぺんぎん堂の飯島です。意見は、私個人のものです。

大寒 第七十候『款(ふき)の冬華(はなさく)』

 何か時代が突き抜けて、心して構えを必要とする感じがします。
 今日の珈琲は「ドミニカ」です。やや軽い珈琲も、温度だという実感です。何度も言いましたが。
 妙に魅かれる食べ物というのはありますね。理由は、言葉にしにくいのですが、「そういうものだろう」と納得しているものもあるのです。


「かつて住んだことのあるまちでもう一度暮らしてみたい」

 「上田眼科では検眼から診察までに時間があるので、その時間を利用して、昼食をとる。その店も決まっていて、病院から近い山手通りの向こうの『嘉盛』という中国料理店で、具のない焼きそばとおかゆの定食と決まっている。」という文書に出くわして、さっそく、中野坂上に出かけました。この、「具のない焼きそば」という言葉に魅かれて。
 出典は、常盤新平著『東京の片隅』です。



 このあたりと、見当をつけたところにあったのは、違う名前の中華料理店でした。それも、代替わりした店の名前の一部が壁に残っていましたが、だから、2回変わっているといることになるのかも。
 それはともかく、この「具のない焼きそば」の「具のない」というところに、常盤新平の真骨頂みたいなものを感じます。あしたは、この定食だな、と勇んでいったのですが、徒労に終わりましたが、考えてみると、話しは、作者の文章の世界にあるということでしょう。
 『常盤新平ーー遠いアメリカ展』が、「町田市民文学館ことばらんど」で、3月22日まで行われています。町田と言えば、大人になってから知り合った古い仲間と、馬肉で有名な店や、ビルの地下の飲み屋など、良く遊びました。
 あれこれ、様々なことを思い出す本です。良質な大人の時代を感じます。

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