『世界記憶遺産』について知る

ぺんぎん堂の飯島です。意見は私個人のものです。


立秋 第三十七候『涼風 至る』

 空の雲にも秋の気配が見えるのでしょうか。私には、暑いだけのことしか感じられないのですが。
 季節のやさいは西瓜ですが、農水省の基準では、メロンや苺とともに、野菜に分類されているのだとか。
 珈琲は、カリブ海の風もいいかなと思って、「ドミニカ・カリブ」にしました。キューバの豆もあるようで、こちらもいずれと思っています。

 
 意外に知らないことは、野菜や果物の分類だけでなく、世界遺産についても、最近、改めて感じました。

世界の記憶遺産60 (古田陽久・古田真美 著)



 「『世界記憶遺産』は、世界史、人類史においても極めて重要な『世界の記憶』であり、今後この分野への関心の広がりと研究の深化が期待されます。」と、著者にいわれても、まずは、「世界記憶遺産」とは何かということから始めなければなりません。
 私たちは、「世界遺産」といえば、まずは、地球上のかけがえのない自然遺産と人類が残した有形の文化遺産である「世界遺産」がそうであると思い浮かべるのですが、世界遺産はそれだけではなくて、人類の創造的な無形文化の傑作である「世界無形文化遺産」があり、さらに、1992年に「世界の記憶」プログラムが開始され、「人類史上忘れ去られてはならない貴重な文書や記録を取り上げた「世界記憶遺産」を加えて、ユネスコが所管する三大遺産事業が行われていることを知る必要があるということです。私は、恥ずかしながら、本書を読むまでは、知りませんでした。
 ちなみに、日本で初めて登録されたのは、2011年の『山本作兵衛コレクション」です。筑豊の炭坑(ヤマ)の生活を描いた墨絵や水彩画、記録文書などのことですが、産業遺産の登録をめぐってあれこれありましたが、アカデミズムの世界だけでない、こうした遺産の重要性にこそ注目すべきだとも思います。
 それはさておき、本書は、ベートーヴェンの『第九』、アンネ・フランクの『日記』からはじまり、『慶長遣欧使節関係資料』、そして『御堂関白記藤原道長の自筆日記』まで、300点以上ある「記憶遺産」の中から、著者が独断で選んだ60点が取り上げられています。私としては、『ホセ・マルティ・ペレスの記録資料』というのが、特に気になりました。ホセ・マルティは名前だけは聞く機会が何回もありましたが、詳しく知ることもなかったからです。
 著者は、「世界遺産総合研究所」の所長と、事務局長です。所長は、日本における世界遺産研究の先駆者のひとりとされ、「世界遺産学」を提唱しています。
 こういう方々がいるのですね。巻末に挙げられた本書成立に協力いただいた世界の関係機関へのお礼で並んでいる顔ぶれは、「記憶遺産」というものの持つ人類史上の位置を感じさせます。
 夏に、こうした本も、好いのではないでしょうか。



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