2008-05-22
本当のマッチョは「お前はすでに死んでいる」とは言わない
ずっと前に、自転車の中野浩一が「競輪界のトップレーサーには良いやつしかいない」というようなことを言っていた。これは「トップになる人間にはそれなりの人間性が求められる」……といった精神論などでは全然なくて、もっと実際的な話だ。
というのも、競輪というのは、「勝つこと」は難しいけれど、「誰かを勝たせないようにする」のは比較的簡単なのである。ラインを作って走ることの必然性から、反則などしなくても、誰かを二着以下に沈めることは問題なくできるのだ。
だから、誰かから嫌われるような性格では、どうしたってトップに行けないのである。結果、勝つ選手は誰からも好かれる良い人間に限られてくる。「あいつになら負けてもしょうがないな」と周りから思われるくらいでないと、競輪界のトップに立つことは難しいのだ。
これほど極端じゃないにしろ、こうした現象はどの社会においてもあることだろう。何かの局面で誰かと競り合う時に、「こいつには絶対に負けたくない」と思われるのと、「こいつには負けてもしょうがない」と思われるのでは、相手の力の入れ具合も自ずから違ってくるのである。
だから、本当のマッチョというものは、相手に負けを認めさせることをしない。例え相手を負かしたとしても、負けた気持ちにさせない……あるいは負けたことにさえ気付かせないのが、本当のマッチョなのである。
「北斗の拳」のケンシロウがもし本当のマッチョだったら、「お前はすでに死んでいる」などと余計なことは言わないだろう。もし相手の体が粉々に砕け散っていたとしても、顔があり得ない方向にねじ曲がっていたとしても、「お前には負けたよ。おれが悪かった」くらい言って、死んでることには気付かせないのが、本当のマッチョなのだ。
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