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2008-11-28

フォークボールの投げ方

野球をやっていたという人はそれなりの数いて、草野球でもやろうものなら皆それぞれ昔取った杵柄を披瀝し合ったりするのだけれど、フォークボールを投げられる人というのはそう滅多に会うものではない。野球をやっていて、それこそ甲子園に出たという経歴を持つような人でも、野手だったらまずもってフォークボールは投げられないし、ピッチャー経験者にしたってそう多くはない。


フォークボールというのは不思議な変化球で、その存在は誰もが知っているけれども、高校生で投げるというのはほとんどいない。しかしそれがプロになるととたんにぐっと多くなる。名投手フォークボールを決め球にしていた人は多くて、だから変化球の中でもどこか神秘的な、特別な地位にあるのがこの球種だ。


ぼくはこのフォークボールを投げられるのだけれど、別に野球をやっていたというわけではない。厳密に言えば小学生の時までは地域の野球少年団に所属していたが、それ以降はお遊びでやるくらいで本気で取り組んだ経験はない。しかしフォークボールは投げられる。きっかけは高校生の時だ。同級生にフォークボールを投げられる友人がいて、彼に教わったのだ。


彼はIという名前でやっぱり野球部ではなかったけれども、運動神経はとても良くしかも野球オタクだった。彼はフォークボールの神秘に以前から取り付かれていて本などを読み込んでもう長いことどうやったら投げることができるかを研究していたらしい。そうして独自に取り組んで長いこと試行錯誤を重ねてきた結果、ある日突然投げられるようになったというのだ。そしていざ投げられるようになってみると、これがコツさえつかめば意外に簡単に投げられるということで、ぼくにも教えてくれたのである。


そうしてぼくもそれを教わってどうにか投げられるようになった。それは自転車に乗るようなもの、あるいはコマを回すようなもので、教わったからすぐに投げられるというわけではなかったけれど、しばらく取り組んでいるとある時ふっとコツをつかめる時があって、それからストンストンと面白いように落ちるようになった。あるいはそれは口笛を吹けるようになるのとも似ている。それまでスースーとした空気音しか漏れ聞こえなかったのに、ある時突然ピーと甲高い音色が鳴り響くようになるのである。


そこでここではフォークボールの投げ方を書いてみたい。この方法を用いれば、マウンドからキャッチャーにまでボールを投げられる人なら誰でもフォークボールを投げられるようになるはずだ。だいじなのはコツをつかむことである。それさえできれば、フォークボールは誰にでも投げられる。


フォークボールの投げ方

真上から投げる

コツさえつかめば横からでも下からでも原理的には投げられるようになるが、まず初めは上から、それも真上から投げ降ろすように投げるのが良い。腕を垂直に振り上げ真っ直ぐ下に向かって振り下ろす。それがフォークボールを投げる第一歩だ。


指の腹をボールに付けない

フォークボールの握りだけは、野球経験者ならたぶん誰もが知ってると思うのだが、人差し指と中指で挟むようにする。ここでだいじなのは、指の腹をボールに接着させないということだ。腹ではなく脇の部分で、ボールをつまむように持ち上げるのだ。サラダをつかむ器具があるけれども、あんな感じである。人差し指と中指の側面で、ボールをつまむように持ち上げるのだ。


リリースの瞬間に手首を返す

これが最大のコツなのだけれど、振り上げて投げるまさにその瞬間に、手首をクイっと返すのである。ボールというのは普通にストレートを投げると上向きの回転がかかるが、リリースの瞬間に手首を返すことによって、同時に下向きの回転を与えることもできるのだ。この下向きの回転と上向きの回転が相殺されることによって、ボールは回転せずに投げられることになる。この相殺のバランスを上手くはかって、なるべく無回転に近づけるのがよく落ちるフォークボールを投げるコツだ。無回転に近ければ近いほど、ボールはよく落ちるようになる。


ダッチロールさせることをイメージする

この無回転にさせるコツをつかむためには、ボールをダッチロールさせることをイメージすると良い。回転しないボールというのは、そこで複雑な気流が生じるので、空気の抵抗を受けやすい。そのため、よく回転するボールに比べて減速の度合いが大きいのだ。その減速する度合いが大きければ大きいほど、良いフォークと言える。減速すればするほど、それだけ重力の影響を大きく受けるからよく落ちるようになるし、またバッターのタイミングを外すこともできるからだ。だから、投げ出した瞬間のいわゆる初速は、速ければ速いほど良いのである。その方が、初速の遅い球より減速の度合いを大きくしやすいからだ。速球派の投手にフォークを得意とする者が多いのはそのためである。しかし初速の遅い投手でも、終速を遅くすれば十分にキレのある、効果的なフォークボールを投げることができる。そしてそのためには、とにかくボールをダッチロールさせることをイメージしながら投げるのが上達への近道だ。


空気の膜にぶつけるような感覚で投げる

上の補足だけれど、フォークボールを投げる時にはマウンドとベースのあいだに空気の膜が張られているかのように意識して、それにぶつけるような感覚で投げると良いだろう。ボールになるべく空気の抵抗を多く浴びさせるように意識するのだ。例えば、車に乗っている時窓から手を出してみることがある。その際、手のひらを進行方向と平行にしたのでは抵抗が少なくなるが、垂直にして広げると、風の抵抗をより多く受け、手を後ろに持って行かれるような感覚を味わえる。それと似た感覚をボールに味わわせてやるのだ。感覚的にはあたかもボールを垂直にして広げ、空気の抵抗をより多く受けさせ、後ろに持って行かれるような感覚を味わわせてやる。そうやって空気の抵抗をより多く受けることができれば、それだけ終速は落ちるので、キレのあるフォークボールに結びつくのである。


最後に

フォークボールを投げられとどんな得があるかと言えば、とりあえず周囲の注目を集められるということである。それはバック転ができるようなものだ。バック転がさりげなくできたりすると周囲の喝采をもらえるように、キャッチボールでちょっとフォークボールでも投げてみた日には、とりあえず相手は感心してくれる。「おおっ!」と感嘆の声を上げてくれる。だからどうしたと言われれば返答に困ってしまうのだけれど、とにかく一発芸として人々の注目を集めることができるのである。そしてそういう一発芸を披露できると、みんなでやる草野球にもまた違った彩りを添えることができるので、より一層面白くなるということはあるのである。

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