2009-03-18
ネットの広告が必ずしも安泰というわけではない
テレビのマーケティング力が落ちたからといって、ネットのマーケティング力が向上しているわけではない。感覚としては、むしろ縮小傾向にある。電通調べだと、ネットにかけられるマーケティング費用は全体としては上がったらしいが、テレビその他のメディアが下がった分がそのまま流れてきたというわけでもない。もちろん不況の影響はあるだろうが、その伸び率は下がったし、かけられ方もシビアになってきている。
そうした傾向は、特にホームページやウェブコンテンツを制作している会社が如実に感じているだろう。耳にする範囲では、どれも新しい受注、それも大型案件が減って苦戦しているという。
それは、インターネットマーケティングの弱点が露呈したこととも無関係ではない。インターネットマーケティングには大きな弱点があり、それがここ数年で明らかになってきたのだ。それで、ネットに対するマーケティング費用が減っているのだ。
インターネットマーケティングの弱点――それは「認知度向上」と「ブランディング」だ。
ネットは、既に認知している人により深いアプローチを計るのには長けているが、その商品を全く知らない人に認知させるのが苦手だ。テレビのように、強いインパクトで商品を認知させることがほとんどできない。
最近では、純広告(バナー広告)よりも検索連動型広告(リスティング広告)の方が盛んな印象だが、これも、そうした傾向を反映しているのではないだろうか。つまり、闇雲にアプローチするバナーよりも、既に興味を持っていそうな人にアプローチするリスティングの方が、期待されるような効果を得やすいのだ。
また、ネット広告はブランディングにつながらないという弱点もある。
これは、簡単に言えば誰でも安価に作れてしまうからだろう。テレビのCMは、もうそれを出稿するだけで大きな金額をかけているのが分かるから、簡単にブランディング、あるいは信頼構築につながる。
しかしネットでは、いくら派手に見えようと、それはテレビに出稿するのと比べれば微々たる金額だというのはもはやみんな知ってしまっているから、ブランディングにはなかなかつながらないのだ。
かつては、ネットでもブランディングを計ろうとした時代があった。お金をかけた装飾性の高いホームページを作り、豪華さを競い合った。しかし最近は、そういうものが極端に減った。そういうページが、ネットの世界ではあまり好まれなかったからだ。
それは、一つには通信速度の関係で、情報量の多いページはなかなか表示されないから、それがストレスになるというのがあっただろう。しかし、通信速度が上がった今でも、そうしたサイトが好かれるようになったという話はとんと聞かない。それどころか、Googleに代表されるように、装飾性を排した機能的なページがますます好まれるという傾向には拍車がかかっている。
そうした状況に呼応して、企業でも、装飾性の高いページは作らなくなったのだ。そのため、ネットでブランディングをすることはますます難しく(ほとんど不可能)になった。
今年の1月末、宣伝会議が主催した「宣伝会議プロモーション&メディアフォーラム2009」というのを見てきた。そこに、アクセス解析で有名なオムニチュアのブースが出ていたのだけれど、尋ねていくと、若い営業マンの方が応対に出てくれ、面白い話を聞かせてくれた。
その若い営業マンは「不況の今、我が社にとって大きなビジネスチャンスなのだ」と言った。なぜなら、企業が軒並みマーケティング予算を削る中で、認知度向上やブランディングといった効果の見えにくいもの、ROIのはっきりしないものにはお金を出しにくい状況ができてたからだ。現場もそれを上司に上げづらいし、上司もハンコを押しにくい――そういう状況が、多くの会社で同時多発的に生まれているのだという。
そんな中にあって、オムニチュアのウェブ解析は(言い方はこうじゃなかったかも知れないが)まさにROIの権化のようなものだ。あらゆる形で効果を可視化することがオムニチュア製品の強みであり、特徴だ。だから、ROIの重要性が叫ばれれば叫ばれるほど、つまり不況になればなるほど、うちの商品は高い価値を持つようになるのだと、そんなような話を聞かせてくれた。オムニチュア製品の導入は、現場も上司に上げやすいし、上司もハンコを押しやすいのだそうである。
その方は営業マンだったので、たぶん営業の現場で聞いたそれはほとんど生の声なのだろうと思う。今は、どこの会社もROIのはっきりしないものにはお金をかけづらい状況になっているのだ。それは、不況が原因というのもあると思うが、多分に気分的なものもあるだろう。「ROI」は、今のトレンドなのである。簡単に言うと流行だ。「効果が可視化される」とか「定量的データ」とか、そういうものが今、もてはやされる時代なのだ。
ところで、この前ドラッカーの「傍観者の時代」という本を読んでいたら、そこで面白い一節に出くわした。昔(第二次大戦前頃)は、データなどというのはほとんど何の信憑性も持たれず、「職人の勘」というの重視された時代があった。ところが、そこから定量的データの反逆が始まって、今(それを書いた1970年代)では、逆に「職人の勘」というのは古くさい前時代の遺物として軽くあしらわれるようになってしまった。
しかし、とドラッカーは言う。そういう「職人の勘」的なものも、必ずしも軽視して良いものではない。それを軽視していると、前時代にデータを軽視した人たちのように、いつか反逆を受ける時が来ると。
今の「ROI重視」という風潮も、だからきっとそういうことなんだろうと思う。つまり、売上げだけに直結し、効果が可視化されるようなマーケティングばかりをしていては、それはそれで肝心の何かが疎かにされ、やっぱりものが売れなくなる。だから、効果のはっきりしないばらまき型の広告で認知度向上を図ったり、大きな予算をかけたブランディングというのも、やっぱり軽視して良いというものではないのである。
しかし、そうは分かっていても、認知度向上やブランディングが今、好まれないというのもまたはっきりしているだろう。だから、マーケティングにおいてはやはりその時々の時流を鑑みながら、顧客のニーズから真摯にスタートし、それに対応したやり方をしていくしかない――というのが原則となってくるだろう。
顧客にしたって、有益なマーケティングなら受けたいはずなのである。自分の暮らしを豊かにしてくれる製品やサービスであれば、それを知ったり、あるいはお金を出すことにはやぶさかではないのだ。
そういう、届ける側と受ける側とがWin-Winの関係を築けるような、気持ちの良い、効果的なマーケティング方法というものはないのだろうか? もしそれを考案でき、なおかつ独占的に実行することができたなら、それはマーケティングが混沌としたこの時代に、大きなビジネスチャンスを生み出すのではないかと思う。
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