2010-03-13
『王様のブランチ』では話さなかった岩崎夏海が『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』を書いたもう一つの理由
おかげさまで、TBSテレビ『王様のブランチ』でぼくの本『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』を取り上げて頂きました。そこで今日は、番組では話さなかった、ぼくがこの本を書いたもう一つの理由について書きたいと思います。
実はこの文は、もともとはとあるメディア向けに書いたものだったのですが、色々な理由で結局採用されませんでした。しかし、このまま眠らせてしまうのは忍びなかったので、ここに掲載させて頂きます。
ぼくの母には、新聞の記事を切り抜くという趣味があった。毎夕食後、気に入った記事を切り抜いては、スクラップブックに貼りつける。また、ぼくに読ませたい記事を見つけると、別の箱に保管しておく。そうして、帰省した折などに見せてくれるのだ。
母には、ぼくが好む記事というのが分かっていた。だから、ぼくもそれを楽しみにしていたのだけれど、今から十年ほど前、その中に、この本を書くきっかけともなった、ある一つの記事があった。
そこには、娘を不治の病で亡くした、一人の母親のことが書かれていた。
その母親は、医師から娘の余命を宣告されても、信じようとはしなかった。そうして、ただ回復だけを願い、看病を続けた。
その結果、娘もそれによく応え、告げられた余命よりはだいぶ長く生きた。しかし、結局は亡くなってしまった。
ところが、その後になって、母親には大きな後悔が押し寄せる。
闘病中、娘は時折「もう治らないのではないか」と弱音を吐くこともあった。しかし母親は、ただ「頑張って」と励ますばかりで、それを絶対に受けつけなかった。
「しかしそれは、かえって彼女を苦しめていたのではないか?」娘の死後になって、母親はそう思い至る。「それはただ、愛する人に死んでほしくないという、自分のエゴに過ぎなかったのではないか?」そんな、自責の念に苛まれるのだ。
これを初めて読んだ時、ぼくは慄然とさせられた。「この世には、愛する人の生を願う、そのことさえエゴになる、そんな過酷な状況が存在するのか」それが、にわかには受け入れがたかった。
以来、人の死をどう受けとめるかというのが、ぼくにとっては大きなテーマとなっている。だからこの作品でも、それについて書いた。この作品の主人公は、ドラッカーの『マネジメント』という有名な経営学書を片手に、マネジャーとして野球部の強化に取り組む。しかしその過程で、愛する人の死と、それをどう受けとめるかという、まさにぼくがテーマとしている命題に直面するのだ。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
- 作者: 岩崎夏海
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