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2011-10-06

『化物語』を途中まで見た

化物語』のアニメを途中まで(というか最終回以外)見たがとても面白い。なぜ面白いのか、考えてみる。念のため言いますが、ネタバレもしています。


パロディになっている

この作品は萌文化そのもののパロディになっている。萌文化の象徴的なキャラクターが割り振られたキャラクターたちがたくさん出てくる。「ツンデレ」から始まり、「ツインテール」の女子小学生、「百合」の体育会系少女、血のつながらない「妹」的な女子中学生、そして「ネコ耳」「眼鏡」の委員長

それらがカリカチュアされ、整理され、気持ち良く配列され、しかも統合されて出てくる。これはすごい。もし萌文化というものを知らない人に「萌文化を知るためにまず知っておく作品は何ですか?」と聞かれたら、ぼくには『化物語』としか答えようがなくなる。ここには萌の全てが詰まっている。


物語としてウエルメイド

西尾維新氏は構成が抜群に上手い上に、物語の要諦というものをよくつかんでいる。特に「まよいマイマイ」は感心した。『シックスセンス』を筆頭に、生きていると思っていた登場人物が実は死んでいた(幽霊だった)という結構はよくある。しかしこれは使い古されているところもあるので取り扱いが難しく、途中で落ちを読まれてガッカリされる危険性もあるのだけれど、「まよいマイマイ」にはすっかり騙された。八九寺真宵の魅力的なキャラクターに引っ張られて、まさかそんなことになっているとは予想だにしなかった。

この話では、上記の他に戦場ヶ原ひたぎとの関係の行く末が気になるといったミスリードの仕掛けがいくつかちりばめられているので、結末の意外性がとても際立っている。しかもキャラクターが魅力的なので、落ちを知った後の再見(再読)にも耐えられるし、落ちを知った上だとまた違った見え方もしてくるので面白い(なぜ落ちを知った後の再読が楽しくなるかは、ぼくの新作に詳しいです)。

こんな古くて新しい物語を短編で作れる作家というのは、相当の知識と力量がないとできないわけで、この人は本当に本当の小説家と言えるだろう。こういう人がいたんですね。


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小説の読み方の教科書

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会話が魅力的

すぐれた小説家の条件として、物語とキャラクターという二つの異なった創作活動を高い次元でこなせるということがあるのだけれど、西尾維新氏はこれがすごい。というかアニメを見ての感想のはずなのに西尾維新氏にばかり言及しているのは原作を読んでみたら内容が(特に会話が)原作通りなのでびっくりしてこう書いているのだ。

西尾氏の会話がすぐれている理由はいくつかあるが、文字面を読んだだけでそのトーンが伝わってくるということが一つあるだろう。「ていうか僕だった」という台詞があるのだけれど、ああこれ、こういうふうな言い方だよなあと、原作を読んで首肯せざるをえなかった。監督の新房昭之氏も声優さんも、この原作や脚本を読んで「ああ、こういう言い方ね」というのがパッとイメージできるような台詞――それ以外のニュアンスでやりようがない台詞というのがとにかくすごい。これはニュアンスの多様な解釈が可能な台詞を書くより実は難しく技術のいることなので、読者で気づいている人は少ないと思うが、西尾氏は超々絶技巧の持ち主なのだ。


絵がパロディ

アニメにはあまり触れてないのでアニメに触れるが、しかしこれはすぐれたパロディだなぁ。特に江口寿史とかどおくまんとかつのだじろうの絵柄になったりするのがすごいと思った。あと見たことはあるけれど分からない絵柄とかもたくさんある。そういうのをまとめたサイトもあるのだろうなあ。こういうアニメはえてして字の使い方の上手さに目が行きがちだけど、この絵の上手さは筆舌に尽くしがたい。豊富な知識と技術がありつつ力が抜けて遊びをしてくるところがとてもにくい。監督の新房昭之さんは漫画の特に絵が本当に好きで造詣が深いのだろうなというのがよく分かる。

あと、主人公である阿良々木暦の髪の毛は、いわゆるアホ毛という漫符というか記号でありながら、同時にゲゲゲの鬼太郎パロディになっているというアイディアがすごい。アホ毛が「?」になったり屹立したりでキャラクターの心情を表している場面にはよだれが出た。


音楽

いいアニメというのは素晴らしい音楽がつきものですね。エンディングテーマ何回も聞いていますが、これ、歌詞もメロディも歌声も結構も何もかも素晴らしい。内容とリンクしているのも素晴らしい。このアニメ、とにかくDVDがとてもよく売れたというのは聞いているけど、ぼくとしてはもっと評価が高くてもいいと思う。日本のアニメ史に、というか世界のアニメ史に残る傑作ですよ。どれより上というのは言いづらいけれども、エヴァと同じくらい面白いと言っても華厳の滝ではないのだがなあ。

D


おまけ

今のところの話の中で一番好きなのは「まよいマイマイ」なのだけれど、ひだぎと車に乗って星を見にいく話も捨てがたいなあ。というか、アニメの車に乗るシーンってとてもいい! これは『涼宮ハルヒの憂鬱』でも感じたのだけれど、アニメの中で車に乗ってどこかへ行くのってなんかドキドキする。この両者を比較して、なぜアニメの中で車に乗るシーンが見る者に特別な感情を催させるかを研究している人はどこかにいないですかね。


というわけで。『化物語』はもうぜひ見た方がいいです。あとぼくの本も買って読んでください。

ちなみに『エースの系譜』の編集を担当してくださった講談社のSさんがアニメエンドロールに出てきたのがなんか嬉しかったです。

化物語 Blu-ray Disc Box

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化物語(上) (講談社BOX)

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化物語(下) (講談社BOX)

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エースの系譜

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