ここも印象的でした。
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ある日、リョニーさんにいつからアーティストを始めたのか?と訊いてみた。
「そうですね、7歳の時かな?」という答えが返ってきた。
「7歳から絵を描いていました」それは冗談のような、だけれど真面目なような口調だった。
ーえっと、そうじゃなくて……アーティストという仕事で生計を立てたり、お給料をもらうようになってからはどのくらいなのか……
と、また詳しく聞こうとして、言うのをやめた。
少し恥ずかしくなったからだ。
なぜお金をもらってからが“その肩書き”になるのだろう?
リョニーさんは7歳から絵を描くのが好きで、今も描いている。
ただそれだけだった。それにたまたま“アーティスト”という名前がついただけなのだ。
そう思うと、何かになるために働くのはおかしいように思えてきた。
私たちは、もう何かになっている。
生まれてから少なくとも、もう“自分”なのだ。