私たちは、もう何かになっている

EARTH GYPSY(あーす・じぷしー)

ここも印象的でした。

P132
ある日、リョニーさんにいつからアーティストを始めたのか?と訊いてみた。

「そうですね、7歳の時かな?」という答えが返ってきた。

「7歳から絵を描いていました」それは冗談のような、だけれど真面目なような口調だった。

ーえっと、そうじゃなくて……アーティストという仕事で生計を立てたり、お給料をもらうようになってからはどのくらいなのか……

と、また詳しく聞こうとして、言うのをやめた。
少し恥ずかしくなったからだ。

なぜお金をもらってからが“その肩書き”になるのだろう?

リョニーさんは7歳から絵を描くのが好きで、今も描いている。
ただそれだけだった。それにたまたま“アーティスト”という名前がついただけなのだ。

そう思うと、何かになるために働くのはおかしいように思えてきた。

私たちは、もう何かになっている。
生まれてから少なくとも、もう“自分”なのだ。