デラックスじゃない

デラックスじゃない (双葉文庫)

ふと読んでみたくなりました。マツコ・デラックスさんのエッセイです。
ああ大事だなと思ったところをメモしておきます。

P77
 ・・・こんなふうに勝手に決めつけていたんだけど、実はそういうことって多いよね。年齢だけでなく、勝手に思い込んでいることによって、どれだけ自分の了見を狭めているんだろう。・・・
 ・・・
 アタシ、この選挙で7度目の都知事選出馬になる発明家の中松義郎ことドクター・中松が話していることを、真面目に聞いていたことがあったのかしら。よくよく聞いていたら、中松さん、そんなにヘンなことは語っていないのよね。
 かつて底が板バネになってピョンピョンとジャンプできるフライングシューズを履いていることはあったけど、この人、話していることはいたって本気なんだよね。以前の都知事選で「北朝鮮のミサイルをUターンさせるシステムを僕は開発しているから、それで東京都を守ります」って言っていたけど、もし本当にそういうのがあったら、いちばんいいじゃん。
 でも、「それじゃ、ドクター・中松に1票」とは思わない自分もいて、それって何なのかなって思った。「女装して、テレビに出たりしているくせに、オマエは何なんだ」と自問したわ。
 もう1人、同じく都知事選に連続立候補していた財団法人スマイルセラピー協会会長かつスマイル党総裁のマック赤坂さんだって、ロールスロイス・ファントムを選挙カーにして、ただ笑っているだけの人じゃないわよ。
 京大を卒業して伊藤忠商事に勤務していたとき、「これからはレアアースがすごいから、伊藤忠商事でも取り扱いましょう」と提言したら、「何、バカなことを言ってるんだ」と上司に拒否され、会社を辞めて、レアアースの輸入商社を設立して大儲けした人なのよ。先見の明がすっごくある人なのよ。
 だから、何か型破りなことをする人っていうのは、みんな、頭も型破りなんだよ。それを「頭が型破りだからダメ」と片づけてしまうことこそが、ダメなんだよ。・・・
 スポーツ選手だろうが、政治家だろうが、芸能人だろうが、発明家だろうが、伊藤忠商事の元社員だろうが、「コイツはフツーとは違うことをしているんだ」といって、色メガネで見てしまうってことがあるよね。
 アタシだって、テレビに出始めたころは「こんなヘンなヤツを出すな」とか「こんな輩はすぐに消えるよ」なんて言われていた。でも、世の中の人は許してくれたの。だから、ほかの人がどう思おうとも、アタシはそういう線引きをしちゃいけない人間だろうって思っているの。アタシのことをNOといって拒絶する人もいっぱいいた。だけど、受け入れてくれた人もいるわけじゃん。そんな恩恵を受けた人間が、そういうふうに考えちゃダメだろう、と思ったの。