人間だもの?

その後とその前 (幻冬舎文庫)

これは寂聴さんの出家にまつわるお話。人の悪口言いながら御飯食べると美味いって(^_^;)、なんかこういうこと聞くとほっとします(笑)

P192
寂聴 仏教には戒律がいくつもあるじゃないですか。しちゃいけないっていうことが、いくつもある。私はね、そんなものよく知らないで坊主になってしまったの。嘘ついちゃいけないとか、盗んじゃいけないとか、殺しちゃいけないとか。まあ、殺しちゃいけないとか、盗んじゃいけないっていう戒律は、心配する必要はないでしょ。今までもそんなことしたことないわけだから。あ、でも、他人の旦那盗んでたから駄目かな。

さだ はい(笑)。

寂聴 まあ、そんな戒律がいろいろあるんですよね。でも嘘ついちゃいけないっていわれても、小説家は嘘をほんとらしく書くのが仕事でしょ。だから守れない。人の悪口言うなっていわれても人の悪口言いながら御飯食べるととても美味い。でも一つぐらい守らないとせっかく坊主になった値打ちがないと思って、仏に申し訳ないと思って、それで、じゃあ一つ守れそうもない戒律を一つだけでも守ろうと思ったら・・・・・・。

さだ 男を断つ。

寂聴 そうなのよ。これが一番なんだかちょっとできるかなあと思ったんだけどね。それを選んだ。するとね、それはね、自然と断つようにしてくださるの。

さだ 仏さんが。

寂聴 はい、仏さんが。だから、尼さんになったらね、余計に尼さんと寝たいなんて男いっぱいいるのよね。・・・ところが、それがね、こっちがその気にならないの。昔だったら、「あ、まあ、ちょっとしてみようか」と思ったんですよ(笑)。それがないのね。

さだ なくなるんですか。

寂聴 なくなるの。それで、まあ、たまに、こっちもいいなあと思う相手がいるでしょ。それだったらちょっと危険かなと思うじゃない。だけどもね、そういうチャンスが絶対来ないの。上手くいきそうになると、必ず何か邪魔が入る。

さだ そうなんですか。

寂聴 だから、これは守られてるなって思う(笑)。