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◆マンガ『なぞの岩戸』

◆マンガ『かえってきた小鳥』 ◆『かえってきた小鳥 第2章』(連載中)

2008-01-14

[]2007年におもしろかった本【後編】 2007年におもしろかった本【後編】を含むブックマーク

 間が空いたけど、http://d.hatena.ne.jp/ayakomiyamoto/20080104#p2 の続きです。

『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ

わたしを離さないで

わたしを離さないで

 やっと読んだ話題作。これはしっかり最後に感動する話になっているんだけど、一人称で主人公が自分の子供時代から現代までの記憶を回想するというスタイルで、いわゆる「信頼できない語り手」の話と言えなくもないです。これが幻想的な雰囲気を作りながら、単なる感動小説では終わらない一筋縄ではいかない小説にしていて面白いなあと思いました。例えば、主人公キャシーと親友ルースとトミーの三角関係なんて、キャシー本人がいいように記憶してるんじゃないの?とか、キャシーが淡々と語るほどに感じられるほんのりとしたうさんくささとか。そういう「語り手=騙り手」といううがった視点からもいろんな読み方ができそうな小説でした。

 

『ずっとお城でくらしてる』シャーリイ・ジャクスン

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

 表紙の雰囲気の通りの乙女ゴシックホラー。ある村の名家一族毒殺事件の生き残り、毒殺犯疑惑がある姉コンスタンスと、砒素毒後遺症の伯父のジュリアン、そして主人公の18歳の少女メリキャットの3人の閉ざされながらも満たされた生活が、従兄弟の侵入をきっかけに次第に壊れていくというお話。メリキャットの乙女な空想と狂気の世界は好きな人にはたまらず、そうでない人には胸焼けを起こすようなイヤァ〜なホラーです。私にはホラーでした。10代の女の子とかには特にハマるのではないでしょか(特にゴスっ娘)。みんなだいすき村社会の恐怖も書かれてます。


『壜の中の手記』ジェラルド・カーシュ

壜の中の手記 (角川文庫)

壜の中の手記 (角川文庫)

 短編集。無人島で発見された異形の白骨の謎(『豚の島の女王』)やらジャングルの秘境で骨のない人間を発見(『骨のない人間』)やら、なぜかドンドコ太鼓の音が聞こえてきそうな秘境が舞台の話ばかりなので、映画『キング・コング』のひとくいどじんが出てくるスカルアイランドの場面とか、ひとくい地底人が出てくる映画『ディセント』等に21世紀にもかかわらずワクワクした自分は楽しく読めました。


『マーティン・ドレスラーの夢』スティーヴン・ミルハウザー

マーティン・ドレスラーの夢

マーティン・ドレスラーの夢

 文章を脳内で映像化するのが得意な人と不得意な人がいると思うんだけど、これは得意な人が読むと情景描写の繊細さや色彩感覚がビンビンに感じられる小説なんじゃないかなと思いました。あいにく自分は不得意な方だったんだけど…。あらすじは稀有な才能を発揮してホテル経営者にまで上り詰めるマーティン・ドレスラーさんのアメリカンドリームな半生の話ですが、後半どんどんと現実離れした幻想的な小説になっていきます。主人公の女性関係なんかの人間ドラマもあることはあるけど、キャラクターに共感するというよりは、19世紀末のアメリカが持つ魔術的な魅力そのものが主役という感じがしないでもなし。


『マジック・フォー・ビギナーズ』ケリー・リンク

マジック・フォー・ビギナーズ (プラチナ・ファンタジイ)

マジック・フォー・ビギナーズ (プラチナ・ファンタジイ)

 短編集。ストーリーがあってないような夢のような話が多いので、詳しい内容は忘れてしまったものもあります。ファンタジーとか幻想的なムードの中に、テレビドラマとか現代的なポップな要素が入ってくるのが00年代的な感じがしました(適当)。ゾンビがお客のコンビニが出てきたり、この作者は特にゾンビに深い思い入れがあるようです。作中、他人のホームパーティーに潜り込んだ男が「この家の人は?」とその辺の女の子に聞いて、「あ〜この家の親ってアムウェイやってて いい成績だったご褒美みたいので一家で海外にいってるのよね」というようなやりとりが出てくるのに笑いました。


『ロックンロール7部作』古川日出男

ロックンロール七部作

ロックンロール七部作

 ロックンロールを軸に20世紀を語るフィクション(うそんこ話)という構成は、犬の歴史で20世紀を語った『ベルカ、吠えないのか?』に似てるんだけど、それよりもっとラフというかコミカルな語り口。だから読みやすいといえばすごく読みやすいんだけど、自分としては、『13』とか『沈黙』とかのようなじっくり書き込まれたもののほうが好みかもしれません。でもインド映画にプレスリー光臨編とアルゼンチンタンゴの貴公子が格闘家になる編は、いい意味で調子に乗った少年漫画っぽい過剰さがあって面白かったです。


『神を見た犬』ブッツァーティ

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)

神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)

これも短編集。表題作が一番面白くて、ちょっとガルシア・マルケスの短編っぽい。幻想で宗教色が強い、寓話風の話が多いのですが、どれも洗練されいる感じがします。軽い入院のつもりが「いいからいいから」とどんどん重病度の高い病室に変えられてしまう恐怖を描いた『七階』とか、強迫観念的な話も多いです。

matsukazutomatsukazuto 2008/01/15 01:32 こんにちわ.話題作だけあって,僕も「わたしを離さないで」は読みました.そう,たしかに単なる感動小説とは言えない奥深さがありましたね.
ミルハウザーの作品も好きです.
海外の作品で共通して思うのは,柴田元幸さんの訳っていいですよね.エドワードゴーリーの絵本で僕は彼の訳に出会ったのですが,直訳と意訳と創作の絶妙なバランス感覚が凄いと思いました.あ,思えば,チロタンもゴーリーからの影響受けてそう.

akiraakira 2008/01/15 12:01 ジャクスンは相変わらず怖かったっすねえ。読んで後悔しました(笑)。主人公の顔を想像してさらに怖さ倍増。カーシュは何を読んでも素晴らしい想像力に驚きですよね。

ayakomiyamotoayakomiyamoto 2008/01/15 21:33 >matsukazutoさん、
こんにちは〜。私は英語がてんでダメなので訳の良し悪しもあんまりわからないんですが、それでも柴田元幸さんの訳ってすごく読みやすいなあと思いました。エドワードゴーリーって実は読んだことないのでチェックしてみます!積極的な小鳥が出てくるのかしら…そんなわけないか。

>akiraさん、
『ずっとお城でくらしてる』はメリキャットも村人も怖かったですね。メリキャットは邪気眼の女の子バージョンというか。『壜の中の手記』は、今の時代に秘境が舞台の話を読んでも全然面白いんだなあと感心しました。