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2011-08-29

[][]愛情から家事をするのはめんどくさい 小池田マヤ「ピリ辛の家政婦さん」 2011年7月1日掲載

「まんが最前線」カテゴリーでは、北海道新聞金曜夕刊「まんが最前線」に月イチで掲載中の、まんがの記事を掲載していきます。今回は7月1日掲載分「ピリ辛の家政婦さん」。

 爪に三日月は出ていますか? 爪の根元に出る白い部分は、健康状態の目安といいますよね。

 「単行本「ピリ辛の家政婦さん」の家政婦・里(さと)シリーズの主人公、小田切里は早世した大学の後輩・智の家庭に派遣されます。そこで里は父親・修(しゅう)のつくったご飯を食べない遺児・宝に食事をさせ、新しい洋服を着せ、爪の三日月が復活してきたことを確認します(「パースーシュー」)。父親は「愛情さえあれば愛せると思っていた」のですが、実際は「新しい服は一度洗ってあげる」などの細かい作業の積み重ねが、宝の快復につながったのです。

 里は長身で「迫力のあるブス」と依頼者に評されるような容貌で女らしくはありません。が、里が依頼者の希望どおりに毎日別のカレーを作り続ける(なんと9種類!/「ラ・メゾン・イヤサカ」第一話)手際を見ていると、家事にもプロフェッショナルがいるのだなという、当たり前のことに気づかされます。

 女性が担当してきた家事は、愛情や母性で行う一種の崇高な義務と見られていなくもありません。レース教室の教師の元に派遣された最新回(「ヒーダー/タッチング」フィール・ヤング7月号掲載)には、家政婦を使う同性の教師を非難する初心者の主婦が登場し、里は「母性で家事をする女は嫌いです」といきり立ちます。

 家事は果たして愛情なのか技術なのか−−。ワタナベコウ「裁縫女子」に登場するような裁縫男子やイクダン(育男)、お弁当男子が増えて「有無を言わせず女性がするもの」でなくなれば、もう少し風通しがよくなるような気がしないでもありません。

(了)

ピリ辛の家政婦さん (Feelコミックス)

ピリ辛の家政婦さん (Feelコミックス)

放浪の家政婦さん (Feelコミックス)

放浪の家政婦さん (Feelコミックス)

裁縫女子 (サイホウジョシ)

裁縫女子 (サイホウジョシ)

画家の小泉淳作は、師と仰ぐ中川一政に「人生は長距離ランナーで考えなくては」と言われたらしい。その言葉があったからこそ、70代を越えて素晴らしい画業をものにしているのだな、と胸が熱くなる今月の日経私の履歴書」。

が、「家事はどこにある(位置する)んですか、師よ?」と余計なことを訊かずにはおれない、汝の名は日本の女(SATCが世界中で人気あるのは、主要人物が料理をしないからと思うのはまた別の話)。

日経ビジネスアソシエ 2011/05/03号で日常マンガを選んだときにはこう書いた。

家事は愛情を動機に行う義務だろうか? 女性まんがで家事なかでも食は生きるために欠かせない知恵である、ということを見せるために規格外のプロフェッショナル家政婦、小田切里を登場させた作品。

「特集1 今こそ読むべき本 心が軽くなる「極・日常」マンガ14冊!」より

女性まんがにはあまり食べ物系ーとくに日常ご飯の話はない。あっても4コマで節約系とか、欄外に「らくらくレシピ」という形だ。おそらく、あまりにも日常過ぎてうんざりするから、というのがその理由だと思う。

名作「…すぎなレボリューション」(すぎなが実家の瀬戸内の島?に帰る場面は、角田光代「ロック母」「八日目の蝉」を思い出す)ではダイエットに連動して食を描いた小池田マヤ、同じフィーヤン連載の「CGH!」でも食へのこだわりは散見されたが、不発というかまだまだ言いたいことありそうという気はしていた。そこで、家事のプロフェッショナルを登場させればいくらでも食のことが描ける、と踏んだのか巷の流行りのメイドからもっとも遠い、ブスでガタイのいいプロ家政婦・里を登場させたのが目下連載中の家政婦・里シリーズ。

…すぎなレボリューション (1) (ワイドKCキス)

…すぎなレボリューション (1) (ワイドKCキス)

ロック母 (講談社文庫)

ロック母 (講談社文庫)

八日目の蝉 (中公文庫)

八日目の蝉 (中公文庫)

実はこの二冊目の単行本のあとの目下連載中の最新シリーズがものすごく面白い。小池田マヤの本領発揮というか。取り上げた「ヒーダー/タッチング」は母親との葛藤も登場する。

川原和子さんのweb連載「此れ読まずにナニを読む?」第73回で知ったワタナベ・コウ「裁縫女子」では、裁縫を教えてくれた祖母、「これからの女の子は勉強も!」と主張する裁縫が苦手な母、その両方を受け継いだワタナベ・コウという流れ?が興味深かった。

サイゾー・ウーマンのインタビュー「Mサイズ信仰、リバティ族...裁縫したいオンナたちの虚栄とプライド」を読むと確信犯で描いてるんだなぁと思う。

ワタナベ 私は逆に「女という資源」を最大限に活用しているのがリネン族だと思いますよ。「JJ」(光文社)とか「CanCam」(小学館)は、派手で目立つけど実は少数派。(略)観察してみると、そういう地味めのリネン族系の女性が多数派で、女らしいとされている。男性が結婚したいのも「リネン族」の方でしょ。

Mサイズ信仰、リバティ族...裁縫したいオンナたちの虚栄とプライド

3年くらい前に「ほっこり系女子」(ここでいうリネン族)の企画を立てたことがあるのだが、却下でした。最初は「やりすぎ家事」の人たち、と思って見ていたが、その確信の在りか(絶対いいことしてる!)が面白いなぁと思うようになってきた。自分もすっかり「天然生活」愛読してるし塩麹も育ててるし、リネン族、面白いんだが。