選択的夫婦別姓制導入と外国人地方参政権

選択的夫婦別姓

まず、選択的夫婦別姓制について。
メリット、デメリットの双方を考えてみる。

選択的夫婦別姓制のメリット

  • 性労働者が、姓名変更などの手続き上の煩わしさから解放される*1
  • 離婚しやすい
  • 実家の慣れた(愛着のある)家名*2から離脱せずに済む*3
  • 「選択的」であって強制ではないので、制度に同意しない人は制度に束縛されずに済む

考えてみたら、「離婚しやすい」「実家から離れずに済む」はメリットじゃない気がしてきた。「離婚しやすい」は家庭崩壊の肯定、少子化促進*4に繋がり、「実家から離れずに済む」は要するに晩婚化の促進に繋がるのでは?
自由な結婚、女性を家庭に縛り付けない、女性の自立を阻害しない、などなどは戦後のウーマンリブ運動から発展した、所謂ジェンダーやらフェミやら男女共同参画やらの方々が主張するキーワードであるのだが、それは果たして「少子化の解消」に繋がるのであろうか?*5
しかも「選択的であって強制じゃない」のところは、別に制度のメリットじゃないしなあ(^^;)


子供にとってのメリットは、考えてみたけど思いつかなかった。
つまり、この制度は「結婚で姓が変わることを厭う女性・妻・母」に意義ある制度で、その嫡子*6にとっての意義が薄いような気がする。
法律上の子供との関係*7というのは、主に「財産継承のための嫡子」であるかどうかが重要なのであって、そのへんを明確化するために「戸籍」「家族」というものがあるんだと思ってきたけど、このへんの「嫡子に財産を継承・相続させる」ということをあまり重要視しない、極度に個人主義に傾いた考え方というのに疑問が出にくいのだとすると、団塊世代他、若年層世代他、「財産の継承」というのをあまり考えず、「稼いだら全部自分で使い切る、自分のためだけに使う」という意識の人が多いってことなんだろか。


PS.
選択的夫婦別姓のメリットの追記。
「中国人、韓国人など、【家族主義・家名主義】の習慣を持つ外国人が日本人と結婚して日本国籍を得る際、配偶者の日本風の姓に換えずに、それまでの中国・韓国人としての家族名を存続できる」
というのがあるそうな。
大陸在住外国人による日本人との結婚というのは、日本国籍を手に入れるための方策として一般的だが、これはその後に大陸から家族・一族郎党を呼びよせるための先遣隊役なのだそうな。
日本国籍取得のためには、

  • 「日本国内に5年以上の居住経験」
  • 「日本人(日本国籍を持った者)が後見人」
  • 「日本に経済的な基盤がある」
  • 「善良である=犯罪歴がない」*8

などの諸条件が必要だが、身内の誰かが日本人と結婚して日本国籍を得れば、その一族郎党が日本国籍を得る先駆けと成る。
このとき、日本人と結婚して日本姓になることについて、一族から「家名を捨てた」と揶揄されることが多々あったが、選択的別姓になればこの問題が解消され、一族郎党のために日本人と結婚しやすくなるという方向で歓迎されているらしい。

レコードチャイナ:民主党夫婦別姓政策、日本人と結婚する中国人女性に福音=...
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=35713

つまりは、この選択的夫婦別姓でもメリットがあるのは後述の外国人地方参政権で恩恵を受ける層と同一と見てよいような。

選択的夫婦別姓制では同時に結婚可能年齢を男女ともに18歳に揃える*9ことになった。経済的な基盤が確立されていない、或いは保護者の庇護下にある18歳未満の女性が、家庭を築くまたは子供を産むというのは、どうしても「未婚の母=ヤンママ」という方向に結びつきやすいので、現実問題として婚姻可能年齢を18歳に引きあげよう、ということだろうかと思う。
これで、日本人女性が正規の手続きで結婚出産に及ぶのは、19歳*10から40歳くらいまで*11ということになる。*12
ちょっと脱線するけど、「出産・育児が体力的に負担ではなく、育児が一段落した後に再就業できる程度に心身が柔軟でいられるには、何歳くらいまでに結婚すべきか?」というのを考えた場合、育児後に社会に戻ってくるつもりがあるなら20代前半で結婚、出産、後半で育児、30代で社会復帰、というのが理想的なのかも。
専業主婦になって仕事は二度としない(でも生活できる)なら、結婚が30代でも40代でもOK、ということになる。
現在、アラフォー世代と呼ばれているのはバブル時代に青春を謳歌したキリギリス組であるわけなのだがw 「まだまだいける!」と思わされてしまった*13のが運の尽きだったりするのかもしれないなあ、と思うのだった。
「自分を安売りするな」と煽り立てられ過ぎた結果が現状なんだろかとかなんとか。

さて、話題は戻って。


選択的夫婦別姓制のデメリット

  • 将来、子供が生まれたときに「離婚をしていない両親の姓が異なる」ことを、その家の子供にどのように教えていくべきかの明確な指針がない。*14
  • 未成年の子供の姓について、総務省案は「二人目以降の子供の姓は全て同一=兄弟姉妹の姓は同じ」に対して、民主案は「その都度決められる」としている。総務省案の場合、両親の一方と苗字が違うことを、子供にどのように理解させるのか? 民主案の場合、兄弟姉妹間で苗字が違うことについて、子供にどのように理解させるのか? また、子供自身が自分の姓を選択することはできるのか?
  • 両親が将来的に離婚した場合、日本では多くの場合に母親が親権を得る。母親と子供の姓が異なる場合、母子間で「家族意識」は維持可能なのか? また、未成年の子供の姓を母親のものと揃えた場合、父親の家庭内での疎外感を助長し、家庭崩壊や離婚を促進しやすくする。*15
  • 家庭内で母親の姓だけが異なる場合*16、母親に対する家庭内での疎外感を助長し、家庭崩壊や離婚を促進しやすくなる。
  • 子供自身が成人した折りに改めて姓を選べるのでないなら、「なぜウチはお父さんとお母さんと僕たちの苗字が違うの?」について、未就学児童の時点から子供に理解させられる明確な指針がなければ、子供自身のアイデンティティの確立、家族というコミュニティとの関係性を理解させるのが難しいのでは?*17


当事者=親はいいだろうけど、子供に「なぜ?」と言われて説明できるのでないなら、この制度はむしろ両親の一方を家庭から阻害する、或いは子供が両親の一方と「同質意識」を育てられなくなる、などなど、アイデンティティが未発達な段階にある子供のコミュニティ帰順意識確立の阻害要因になるのではあるまいか、とか思った。


外国人地方参政権

こちらは民主党マニフェストから慌てて外したものの、民主党は元々、特別永住権を持つ在日外国人団体である「大韓民国民団」などの支援や、韓国政府の要請に応える、という名目から推進側にある。
公明党もこれについては意欲的な推進側にある。
自民党は諸説あるが慎重=反対意見が支配的で、自公連立政権時代は公明党の提出法案を自民党が廃案にしてきた、という歴史がある。


この骨子は、
「外国人(日本国籍を持たない)でも税金を払っているのだから、政治に参加する権利があるのではないか」
というもの。よくEUなどの例が引き合いに出されるのだが、多民族国家であるアメリカなどでは、「例え税金を払っていても、グリーンカード(永住権)を持っていても、アメリカ国籍ではないものは政治に参加できない」とされているなど、「外国は全て外国人が政治に参加できる」わけではない。

これについては「与謝野論文」というものがある。
要するに、「外国人参政権は、地方であれ中央であれ、憲法違反になるので実現不可能」というもの。

日本国憲法 第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

つまり、国民以外は公務員*18として被選挙権を得ることも、選挙権を行使することもできない、と明示されている。地方自治体=地方政府は、日本国憲法の規定に基づく国内法によって設置されているので、当然日本国憲法の規制を受ける。故に、在日外国人賛成権は憲法違反である、となる。
ちなみにその直前の14条には、

第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

とあるけれども、これも人種、信条、性別、社会的身分または門地によって政治・経済・社会的に差別されないのは国民である、とされている。「何人たりとも」ではない。国民たる条件については

第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」

とあって、日本国籍を持たなければ日本国民には含まれない。
もし公明/民主が日本国憲法の改正に手を付けずに、この在日外国人地方参政権を通過させようとするなら、考えられる方法は以下の通り。

  • 日本国民たる用件を満たす法律を改正する*19


つまりこれは、移民法・国籍法の改正とセットになってくる。




去る7/21のエントリのコメント欄で、「公明と組む限り自民は信用ならない」というご批判を頂戴して、こう返答した。

民主党マニフェストを肴に思考実験 - さぼり記
http://d.hatena.ne.jp/azuki-glg/20090721/1248199767#c

azuki-glg
以前も書きましたけど、公明党自民党が下野したら連立解消すると思いますよ。野党になってまで自民党と一緒にいるメリットはないので。
そして、外国人地方参政権夫婦別姓、その他、政策的に民主と公明は連立できる要素が多いんですよ。小沢前代表が公明嫌い(宗教的な意味ではなくて、新進党のときに裏切られた経験があるので)なので民主と公明の連立はない、それが証拠に公明の太田代表の選挙区に、小沢前代表を擁立する動きもある、という反論も出たりしてますが、民主が衆院過半数を得られたとしても、参院は現状で民主単独過半数であるわけではありません。
例えば安全保障問題など、社民・共産とでは相容れない政策課題もあるわけで、社民よりは政策的に連携しやすい公明が持つ参院議席は、民主にとっても魅力的です。それをダシに、総選挙後に自民と公明の連立が解消され、民主+公明の新連立ができても、なんら驚きはしません。(その場合、共産との共闘はなくなるでしょうけど)


概ね予想通り。

ほんで、国籍法を改正して日本国籍の取得用件を今以上に簡便にするとか、または外国人の参政権を促進するという政策を推し進めるとどうなるかというと、新たに「外国人票」という一大票田が生まれることになる。既存の日本人票田とは別種の新票田は、外国人参政権を推進する党が優先的に得ることができるわけで、そういう票田獲得目的で国籍法改正や移民法整備を進めている、と見ることができる。


ちなみに、韓国と北朝鮮が「平和的統一」を行った場合で、韓国の行政システムに北朝鮮が組み込まれる形での統一になった場合。
北朝鮮国民にも南と同等の「参政権」が与えられることになるとしたら、北は「一大票田」ということになるわけで、南の政治家はこぞって「北を慰撫し、票田に引き入れる政策」を行うだろうし、北の「人民」に一定の影響力を残すであろう北の軍部要人の権限を保障する、という政策が競うように上提されるだろうとも思う。
この「新票田の外部からの獲得」というのは、既存票の奪い合いである民主主義選挙制の元では、結構な麻薬であるように思う。
これはこれで衆愚競争に向かう畏れは高い。

*1:嫡子への財産継承が若干面倒になるのでは、という気がするんだけど、「これから結婚する人」にはピンとこない話題なのかも。

*2:姓というのは「家の名前」です。

*3:実家戸籍に復帰しやすい、とか。ただ、民主党はいずれ、韓国や中国同様の「戸籍制度の廃止」も目指しているので、アイデンティティの継続性を自覚しづらくなるかも。

*4:事実婚は「離婚」とは別なので除外するけど、これも「離婚しやすく、夫婦家族を継続する努力の放棄」が前提になってるような気はする。そしてそれは、当然「繁殖機会の減少」になるわけだから、少子化促進と言い換えられる。福島少子化(促進)担当大臣も納得。

*5:日本の少子化は、戦後靴下と女性の権限主張が強くなったことが直接原因のような気もするんだけど、それはたぶんいろいろご意見もあろうかと思うので、いずれ稿を改めて。

*6:子供・実子

*7:血縁関係

*8:しばしば話題になるオーバーステイ=不法滞在、不法就労は「密入国」という犯罪に相当するので、その時点で国籍取得資格喪失。

*9:これまで、男性は18歳、女性は16歳から。いずれも未成年なので保護者の承認が必要

*10:妊娠を結婚後にする、と仮定してw

*11:妊娠中毒症など妊娠による事故や母胎危機が及ぶ恐れが低い年齢、というのを仮定するとして

*12:30歳を過ぎてからの初産は着床率も下がるそうですよ?

*13:そして今も「まだ大丈夫」と煽るのが続いているとか?

*14:「離婚をしたから名前が違う」のではない場合に、「なぜうちは名前が違うの?」という問いに、複雑な思想信条以外の子供向けの分かりやすい説明を思いつかない。

*15:日本は同質性への帰順が強い国民性があり、苗字の異なる「他人」を同族として認識しにくい。

*16:中国や韓国などでは、家庭内では母親の姓だけが異なり、また母親は「家族の一員ではない」ので父親及び子供達とは同じ墓に入れない。

*17:事実婚、離婚などでそうなっているケースが既に在る、というのを前提にした場合、「特殊な例をスタンダードとしてよいのか?」という疑問に答える必要があり、また「離婚はどんどんしてよい」という認識=家庭崩壊を防止する努力の放棄を国が認めるのは正しい、ということになるのか?とも

*18:=行政、立法、司法の全て

*19:国籍法の改正、在日外国人を日本国民と同等とする法律の設置など