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園長になりたい訳ではないのだけれども保育園の運営知識を日々叩き込まれている人の日記

2010-08-31

認可・認証・無認可保育園のそれぞれの保育料と運営費について

保育施設の規制を取っ払い、自由化したとき。

認可・認証・無認可の枠はなくなります。

枠がなくなったとき、それぞれの園がどのような運営状況になるか、具体的な数字を出して見てみましょう。


認可保育園の保育料

まずは、認可保育園子ども1人あたりの保育にどれだけのコストをかけているかを考えてみましょう。

零歳児を例に挙げてみます。認可基準には零歳児3人に対し保育士1人が義務付けられており、看護師雇用嘱託医との契約が必要となります。

前回の運営の話に出てきた人件費で計算すると、保育士が750万です。看護師栄養士も同等と考えて750万ずつ。調理員は少し安めに400万。嘱託医との年間契約費用が約50万。保育士以外の人件費は全クラスで割るとして1/6で計算。零歳児を9人預かることにすると年間2,650万円の人件費がかかります。支給されている補助金の額もほとんど差異はありません。

(詳しくは「私立保育園の運営費について」を参照ください)

人件費が8割ですから、この額を0.8で割れば全体の運営費がわかります。

人件費2,650万÷0.8÷9人÷12か月≒305,000円

これが、現在零歳児1人に対してかけている費用です。現在の保護者負担はこの金額の1〜2割程度ですが、自由化する場合は全額負担になります。

『直接補助方式』では低所得者世帯に補助金が出る形ですが、果たしていくら補助されるのでしょうか。


認証保育所の保育料

次に、とある認証保育所を例に、保育料を計算してみましょう。

同じく、零歳児で計算します。

そこの保育園は零歳児を9時間預かって月53,000円で、入会金が25,000円かかります。まぁ、2年通うとしても月2,000円プラスって考えですかね。それから紙オムツとおしりふきは持参です。月3,000円分くらいですかね。月齢によっても消費量は違うと思いますが、とりあえず。

すると、保護者から徴収している利用料は58,000円です。


次に、助成金を見てみましょう。

零歳児は、定員81名以上の施設では1人あたり月額98.000円の助成金が出ています。すると、保護者負担を合わせて156,000円が零歳児の月額保育料になっています。認可保育所に比べて100,000円も安いのです。

何故こんなに差が出るのでしょうか?

理由は、認証保育所の職員配置基準にあります。

認証保育所では零歳児3人に対し保育従事職員1人が義務付けられております。保育従事職員は保育士資格を持つ人間である必要はなく、週5日1日6時間以上働いている職員を指します。ただし、全保育従事職員の6割は保育士資格者であることが義務づけられています。

また、嘱託医との契約と、調理員の配置が義務つけられています。


さて、それでは年間の運営費を見てみましょう。

零歳児9人預かるのに、156,000×9人×12か月=16,848,000円で運営していることがわかります。人件費を8割で計算すると約1350万です。

はて?この額では認可で計算していた保育士を2人も雇えません。と、なると契約職員など、低賃金で職員を雇う他ありません。

保育士400万×3+その他職員(1/6の額)150万=1350万なので、だいたいこんな感じでしょうか?

人件費400万の場合、職員の年収は約300万円。

月額給与はボーナスありで18万7千円、ボーナスなしで25万円。

20代前半の職員ならともかく、経験年数10年以上の職員はとてもじゃないですが雇えません。

そのため、認証保育園は若い先生が多い傾向にあり、昇給も見込めないので勤続年数が短い傾向にあります。


無認可保育所の保育料

さて、無認可保育所の例を挙げてみましょう。

無認可保育所には、国の規制はいっさいありません。なので、認可・認証の規制を取っ払い、自由化したとしても一番影響が少ないのが無認可保育園です。


無認可保育所保育所によってピンキリで、質も価格もマチマチです。

保育士の資格を持っている必要もないですし、マンションの一室で預かっているところもありあす。

この間、こっそり見学した無認可保育所は、零歳児の預かりが月額10万円弱で、部屋の中はギッシリベビーベッドが敷き詰められており、ハイハイするスペースもありませんでした。

ベビーベッドは5,6台ありましたが職員は一人で、何かあるときは別の部屋にいる職員を電話で呼び出していました。


零歳児1人10万円ですから、年間120万円。9人預かって1080万円。

人件費8割で860万。職員2人でみるとして1人400万。

人件費400万だと年収300万。認証と変わらないですね。

まぁ、本当に300万貰えているかは疑問ですが…。


運営費と保育料を表にまとめてみる

じゃぁ、今までの話を簡単に表にまとめてみましょう。

例)零歳児を9人預かる場合

認可保育園

運営費 3300万 人件費 2650万

職員数 保育士3人 看護師 栄養士 調理師 嘱託

保育士年収 500万計算

月額保育料 305,000円(現在は1〜2割負担)


認証保育所

運営費 1700万 人件費 1350万

職員数 保育従事職員3人 調理師 嘱託

保育士従事職員年収 300万計算

月額保育料 156,000円(現在は3〜4割負担)


無認可保育所

運営費 1080万 人件費 860万

職員数 職員2人

職員年収 300万計算

月額保育料 100,000円


さて、あなたはどの保育所を選びますか?

条件が違い過ぎて、比較が難しいですよね。

そして、お金があれば認可に入れたいのに、という格差を生みます。


「自由化」「効率化」と言えば聞こえは良いですが、これでは収入の少ない世帯の子どもを排除するシステムです。

いくら直接補助されようが、安い方に目が向くに決まっています。

子どもの安全」や「笑顔」「未来」を考えるために、「認可」というシステムはお金で判断する目を覆っているのです。


今一度、保育園がどういう場所なのか、どういう場所であるべきなのか、考えてみてください。


さて、次回は…何のお話をしましょう?

特に思いつかないので、何かリクエストがあればコメントくださいナ。

でわでわ。


参考資料(PDF)

東京都認証保育所事業実施要綱

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/hoiku/n.hoikusyo/syosai/files/youkou.pdf

認証保育所運営費等補助経費

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/hoiku/n.hoikusyo/syosai/files/22ninsyoutanka.pdf

匿名希望匿名希望 2014/07/30 16:43 認可外保育所で保母をしているものです。
鹿児島では、認可になれるよう努力しても認可の認定を出してもらえません。
鹿児島の今後の方針は認可保育の増設は認めるが認可外保育所は、認可外保育所のまま。人を雇う余裕もなく、一生懸命働いてる人が身を粉にしている状態です。
認可外保育所は、本当にマチマチです。例をあげられた保育所が本当にあるのかもしれませんが、一概にそういう所ばかりだと思われるのは嫌ですね。

azuma_ryoazuma_ryo 2014/08/05 09:11 匿名希望様

コメントありがとうございます。
お返事遅れまして申し訳ありませんでした。

鹿児島では、今はそんな状況なのですね。
行政が認めてくれないのは本当に大変ですよね。
最近知り合いになった保育士さんが勤めていた無認可保育所は、申請し続けて8年、一昨年にようやく認可保育所になれたそうです。
是非、子どもと自分たちのために声をあげ続けて頂きたいと思います。

ちなみに認可申請をする際に、面積基準や設備基準、人員基準は満たしているのでしょうか?
また、満たしているとしたらどのような収支をしており、職員の待遇は保障されているのでしょうか?
子どもに対する職員の体制はどのようになっているのでしょうか?

私が皆さんに問題提起したいことは、認可外(無認可、認証)保育所の質が悪いという話ではなく、認可されないと待遇が保障されず、それこそ働いている人間が身を粉にして、子どもたちのためを思って働いているのに報われないことに焦点を置きたいのです。
そのために、業界の人以外でもわかるように数値化した内容で記事を書きました。

数字基準で考えると、記事に書いたような無認可保育所になるのは、私は仕方のないことだと思います。
または、保育料をもっと保護者からとるか、職員の給料を下げるか。
待遇が悪ければ職員は辞め、新しい人も就職することをためらうでしょう。
結果、人手不足になるか、保護者負担が増えるか、子どもに無理をさせるかのどれかを選択することになります。
国や自治体からの補助がない以上、保育を商売にするととても割高です。
無認可保育所で頑張っているいる人たちには、私としてはもっと問題提起と解決案を出し、声をあげて行政を動かしていって頂ければと思います。

日本全国、自治体によって制度の違いがあると思うので、わかる範囲で結構ですので、貴方が働いている保育所の収支内容と職員待遇をお知らせ頂ければと思います。

この記事を書いたのも既に4年前。
来年度には子ども・子育て新制度が施行になるでしょう。
そうするとまた、運営形態も変わってくると思います。
認可外保育所を救済するような制度も盛り込まれていますが、どこまで影響するかは未知数です。

すべての子どもと、子どもに関わる人たちが幸福でいられる制度であることを願い、声をあげていこうと思います。

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