BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

レディ・プレイヤー1 感想

 小説「ゲーム・ウォーズ」をもとに、スピルバーグ監督がVR空間で繰り広げられる壮絶なお宝争奪戦を描いた最新作「レディ・プレイヤー1」が公開されたので、早速見てまいりました。例によってネタバレを含みますので、未見の方はご注意を。

 物語の舞台は2045年。環境汚染や政情不安の深刻化によってスラム化が進行した世界。現実に希望を見出せない人々は、現実とは対照的に無限の可能性に満ちた世界が広がり、なりたい自分になれる仮想現実世界「オアシス」に夢中になっていた。そのオアシスの開発者であるジェームズ・ハリデーは、亡くなる際に「オアシス」の中に隠したイースターエッグを見つけたものに、オアシスの運営管理者の権限と彼の莫大な遺産を譲るという遺言を遺しており、それ以来そのイースターエッグを見つけようとする「ガンター」と呼ばれるプレイヤーが捜索を続けていた。ガンターの一人でありスラム街で暮らす少年ウェイドはハリデーが隠したヒントを見つけてイースターエッグを手に入れるために必要な3つのカギのうちの一つを手に入れるが、それによってオアシスを支配しようとする悪徳企業IOI社から命を狙われるようになり、レジスタンスの女性プレイヤーアルテミスや仲間のガンターたちとともに、オアシスを守るための戦いに身を投じていく・・・。

 とにかく、オタクであればあるほど楽しめる。そういう映画です。映画の冒頭で繰り広げられる第1のカギを手に入れるためのレースからして、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンと「AKIRA」の金田バイクが疾走し、キングコングや「ジュラシック・パーク」のT-レックスが走る車に襲いかかるというとんでもない光景が繰り広げられ、のっけからオタク心を鷲掴みにされました。とにかく古今東西の映画、アニメ、ゲームに登場したキャラやメカたちがそこらじゅうを動き回っており、戦闘シーンでほんのわずかだけ登場する銃器ですら、「エイリアン2」やら「ギアーズ・オブ・ウォー」やら「HALO」やらちゃんと元ネタがあるのですから恐れ入ります。おそらく私なんかは1000回見たところで全ての元ネタを見つけることなど不可能でしょう。怪獣オタクでガンダムオタクとしては、クライマックスでのRX-78ガンダムと○○○○○の激闘を見られただけでもこの映画を見る価値は十二分にありました。

 スピルバーグ監督といえば、「シンドラーのリスト」以降は「プライベート・ライアン」や「リンカーン」など史実を元にした映画が印象に残りますが、今回の映画はインディ・ジョーンズシリーズや「ジュラシック・パーク」のように、アクションもロマンスもサスペンスもコメディも全てを取り込んで一瞬たりとも観客に目を離すことを許さない、実にスピルバーグらしい映画だと思います。また、ハリデーがウェイドに語るメッセージには、空想の世界を愛せよ、しかし現実を疎かにするなというオタクにとっての金科玉条のような意味が込められていたように感じられましたし、それは同時に完全に空想を舞台とする映画と史実をもとにした舞台の映画を両方作り続けてきたスピルバーグ監督自身の信条でもあるのではないでしょうか。齢70を過ぎてこれほどまでに自由に空想の翼を広げ、観客たち自身ですら気づいていない「見たいもの」をかたちにするスティーブン・スピルバーグの天与の才を、改めて見せつけられました。

 今回は吹き替えで見ましたが、ハリデーが去り際にウェイドにかけるたった一言のあるセリフをどうしても英語で聞きたいので、今度は字幕でもう一度観に行こうと思います。