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辣子辣嘴不辣心 小妹嘴甜心不真

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2009-02-01

ナディーン・ラバキー『キャラメル』(再見)

| 19:14 | ナディーン・ラバキー『キャラメル』(再見)のブックマークコメント

キャラメル [DVD]

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 久々に渋谷で遊ぶ。パスタパフェのランチに、セガフレードに河岸を変えて食後のコーヒー。三人寄れば姦しいと言うが、四人寄ったらさしずめ口が四つで囂しいか。その後はユーロスペースで『キャラメル(Caramel/Sukkar banat』(日本公式サイト)鑑賞というえらくガーリッシュな一日だった。

 公開二日目、しかもちょうど日曜で映画の日とあって、私たちが観た回は立ち見が出る盛況だった。来場者プレゼントでロレアルマスカラをもらう(正規価格ではチケット代より高いのでは…?)。

 昨年の東京国際映画祭での初見時の感想はこちら。リマの常連になるお嬢さん、よく見たらバスで隣り合わせた女の子とは別人ですね。あんな派手な服装はしないし毛先のパーマもかけていない。

 最初の鍋でキャラメルを作る場面から、幸福な気分になる。一人一人の登場人物の掘り下げがちょっともの足りない、といった瑕疵は探せば見つかるものの、1シーン1シーンそれぞれがいとおしいような感じなので気にならない。

 今回改めて気付いた箇所は、彼女らの宗教的背景だ。主人公のラヤール(ナディーン・ラバキー)はクロスのネックレスをしているし、車のミラーにも十字架のお守りを掛けているのでクリスチャンだと分かる。一方、結婚を目前に、処女でないことに悩むニスリンはイスラム教徒だ。彼女は頭を覆っておらず、かなり露出度の高い服を着ていたりするのだが、母親をはじめ家族の一世代上の女たちはみなスカーフを着けている。レバノンムスリマも服装規定はおおらからしい。仕立屋のローズとリリーの姉妹は数珠を爪繰ってお祈りを唱えるクリスチャン。終盤にマリア像を頂いた行列が練り歩くのは、聖母マリアの被昇天祭か。*1

 仕立屋の姉妹がベッドでマリアの祈祷をする時に、「アサラームアライクム」と唱えていた気がして、今回気をつけて確かめたところ、やはりそう言っていた。この言葉がなぜ気になったかというと、陳翠梅の『愛は一切に勝つ(Love conquers all)』ではマレーシア国内での上映時に検閲で引っかかったという台詞だからだ。

她[陳翠梅/Tan Chui Mui]舉例,電檢局將她新片一段男女主角與馬來婦女對話的部份刪剪,她才知道原來非回教徒回教問候語是不允許出現在電影中的。

(星洲互動「電檢禁片極限」)

 何という台詞かは記事では明示されていないが、戸口で“Assalamualaikum”と声をかけるのがいけなかったのではないか。手持ちのマレー語のテキストには「イスラム教徒の間で使われます」と説明されている挨拶の言葉だ。でもアラブクリスチャンも祈祷にはこの言葉を用いるのか。まあ、啓典の民だから共通する文言もあるのだろうということは頭では分かるのだけれど、実際に映像として目にするとそれなりの衝撃がある。

 さて、宗教的要素の他にも気付いたことがある。ニスリンの結婚式を前に、サロンでスタッフ一同おしゃれに励む場面がある。普段はジーンズやアーミーパンツばかりのボーイッシュなリマ(彼女のセクシュアリティは明示的には描かれないが、レズビアンであるようだ)に、ほかの皆はここぞとばかり「スカート姿が見たいわ」「きれいな足なんだから出さなきゃ」などと言って膝下を脱毛してやる。結局リマもドレスで式に参加し、新郎新婦に祝いの歌を贈る感動的な場面となるのだが、この脱毛シーンにはエステサロンという場所の性格がよく表れていると思う。登場人物はみな女であるゆえの様々な問題と対峙し、各人各様に苦闘するのだが、その一方で、ある意味では女らしさを拡大再生産するエステティシャンという職業を選んでいる。また、ここでは男性の視線への言及もたびたび見られる。ローズが初めて髪をいじってもらう時には、「いいお婿さんが見つかるわ」と声がかけられるし、ラヤールが出張サービスに行けば、客は赤いマニキュアを頼み、「結婚記念日だから主人を驚かせようと思って」と楽しげに話す。自分たちで楽しむためにエステに通うというより、異性の目を意識した側面が強調されている。それと無縁なのが、奥の部屋でシャンプーをするリマと常連のお嬢さん。この二人の間に流れる密やかな空気こそ、日本ではむしろエステの楽しみとして認識されているものではないだろうか。(確か『上海ベイビー』にも同様の記述があったので、中国でも事情は似ているかもしれない) このお嬢さんの姿に続いて、一度は施した化粧を全て拭き取ったローズとリリーの姉妹の後ろ姿が映し出されてこの映画が幕を閉じるのは、異性の目を通して形作られるものとは違う女の姿に焦点を当てる意味で、自覚的な選択なのかもしれない。

*1:そういえば、長崎ではお盆を教会ですることがあると聞いたことがあるのは、カトリックでは8月15日が被昇天祭だからそのことだったのか。