審判請求書の不適法却下について

質問があったのでお答えします。

審判請求書に問題がある場合は2つのルートがあります。

(1)不適法→135条で審決却下
(2)補正命令(133条1項)→治癒しないため手続却下(133条3項)

これは原則(2)の手続となります。補正の機会を1回は与えるというのが原則です。
しかし、「補正してもだめでしょう」というのは(1)になります。
この区別ですが・・・これは、短答試験や論文レジュメで登場する類型で理解するのが一番です。
「この場合は不適法で審決却下になるんだな」と判断するしか有りません。

さて、ここからは無視して頂いても良いのですが・・・実際はある程度のパターンが審判便覧で決まっています。
例えば、無効審判の場合、審判便覧51−04に詳しい記載があります。

(1)補正命令・決定却下及び審決却下
審判請求人は、審判が特許庁に係属しているときは、審判請求書の補正をすることができる(特17条1項、実2条の2、意60条の3、商68条の40第1項 。)
記載要件違反を発見した場合には、
(i)審判長は、補正命令により補正の機会を与えた後、不備が是正されない場合に決定をもって審判請求書を却下する(特133条1項、3項)
又は
(ii)合議体は、補正の機会を与えることなく審決をもって審判請求を却下する(特135条)
のいずれかの措置をとることができる。
どの措置をとるかは、記載要件違反が適法な補正によって治癒できる可能性があるか否かに応じて決める。
審判請求書の副本を特許権者に送達する前の段階では、審判長は、請求の理由の要旨を変更する補正を許可することができない(特131条の2第3項)から、審判請求書の副本を特許権者に送達する前の段階で記載要件違反を治癒するために請求書の要旨を変更する補正がされたとしても、審判長はその補正を許可できず、結果として記載要件違反は治癒できない。
したがって、著しい記載要件違反があり、それを是正するための補正をしようとすると、請求の理由の要旨を変更することが明らかな場合は 「不適法な 、審判請求であってその補正をすることができないもの」として、補正を命じることなく、また特許権者に答弁機会を与えるまでもなく、審決却下(特135条)をする。

他方、記載要件違反が比較的軽微なものであり、それを是正するための補正が請求の理由の要旨を変更しない可能性が高い場合は、補正命令(特133条1項)により補正の機会を与え、それに対する応答内容に応じて決定却下を検討する。
(2)審判請求を審決却下すべき場合(特135条)
下記の例のように、著しい記載要件違反の場合であって、それを治癒するためには要旨を変更する補正が必要であることが明らかなときは、その無効審判請求を審決却下する(特135条)。
a 請求の理由がまったく記載されていない場合
b 実質的に請求の理由が記載されていないに等しい場合
c 重要な要件についての主要事実が記載されていない場合
d 主要事実の記載が具体性を欠き、しかも証拠の提示がない場合
e その他

本当は補正命令だしても良いけど、結局補正出来ないから審決却下するということになります。
このほかにも、審決却下となるものは、45-19等にも規定されています。
これらを全て覚える必要はないため、結果として試験に出ているものだけを押さえるという方法になります。

参考: