【お知らせ】同人雑誌「ニコちく―「ニコニコ建築」の幻像学」に寄稿しました

(追記(2013/4/8)あり)
(追記(2013/4/11)あり)
(追記(2013/4/26)あり)
 
久々のブログ更新です。ご無沙汰しております。。

二か月ほどブログから離れてしまっていたわけですが、その間は全身全霊を込めて「建築論」を執筆してました(ほんとか?w)。

と言うのも、東北大学大学院有志で制作している建築雑誌『ねもは』の『ねもは5号』の『ニコちく―「ニコニコ建築」の幻像学』という同人雑誌に寄稿することになったからです。僕は『ニコちく』の制作部の方々とは全く面識はないのですが、僕のブログ「未発育都市」を読んで関心を持たれたとのことです。原稿の依頼のメールがあった時は喜んで快諾しました。こういう意外な変化球が飛んで来るのも「ネット」の魅力ではないかと思います。

この『ニコちく』は、来月に関西と東京で開催される「第十六回文学フリマin大阪」4月14日、堺市産業振興センター)と、「超文学フリマ4月28日、幕張メッセ) で販売されるとのことです。是非、お買い求め下さいませ。先程、『ニコちく』の制作部の方からメールで送って頂いていた拙稿のレイアウトの仕上がり(サンプル)を見たのですが、かなり本格的な作りになっています。驚きました。さすが建築学生とあって、デザインセンスは抜群です。でも、それ以上に「建築」と「ニコニコ動画」をハイブリッド化して論じるという雑誌のコンセプトが相当ぶっ飛んでいると思います。こういう前衛的で野心的な試みができるのも、自由度の高い同人雑誌ならではないかと思います。また、建築史的に見ても、1920年代にル・コルビュジエが創刊した『レスプリ・ヌーヴォー』誌も1960年代にイギリスの前衛建築家集団が創刊した『アーキグラム』誌も、どちらも同人雑誌であったわけです。そして、この2つの同人雑誌は「建築」の常識を完全にひっくり返してしまったのです。その影響力は絶大でした。そのような影響力を『ニコちく』に仄かに期待を込めつつ、ここに宣伝しておきます。いずれにせよ、僕の拙稿のことは嫌いでも『ニコちく』のことは嫌いにならないで下さい(どんなだ?w)。また、僕が全身全霊を込めて書いた拙稿よりも、それ以上に本気(マジ)で気合いの入った論文が『ニコちく』の制作部の元に続々と集まっているようです。MinecraftMMDを「建築」の創作ツールとして見た論文から、「たまこまーけっと」を建築的考察した「商店街」論まで、斬新な論文が目白押しです。ま、と言っても、僕は他の方々の論文はまだ読んでいませんけどw、これは買うしかないですね。皆さん買いましょう。

さて、僕(ノエル)が『ニコちく』に寄稿した論文のタイトルは、「形態はアイコンに従う(Form follows icon)――情報化時代に適合する新しい建築をめざして」です。

では、冒頭の書き出しの部分だけブログに載せます。(下記)

形態はアイコンに従う(Form follows icon)――情報化時代に適合する新しい建築をめざして

■ プロローグ

 僕の学生時代の話からはじめよう。僕が建築学科に入って二年目の設計製図の演習の課題で、ある女学生(乙女チック)が「集合住宅」の図面一式とスチレンボードで作った建築の模型を置いて講評会で発表した。講評したのは大学教授(髭もじゃ)、准教授(メガネ)、講師(腕まくり)、建築家(白髪)等々の有識者一式であったのだが、その女学生が作った案を見るや否や、会場(製図室)の空気は一変した。そして落雷した。理由はその女学生が作った案が「少女マンガ」風だったからである。その案は、その女学生が日々放っているファンシーな雰囲気に勝るとも劣らず、乙女チックであったのだ。大学教授らは一斉にその女学生に向かって罵声を浴びせた。その女学生は自分の個性の羽を広げた途端に、奈落の底に突き落とされてしまったのだ。大学教授らが「大学はディズニーランドではない、馬鹿にするな!」と言い放ったかどうかまでははっきりと覚えていないけど、大学教授らによる罵声は大体そのような内容であったと記憶している。ちなみに、その女学生は幼少の頃から「少女マンガ」が大好きで、自分でもよく描いていた。雰囲気はファンシーでも、芯がしっかりしていた。そしてその芯を大学教授らがポキッと折ってしまったわけだが、その目的は甚だ不明である。

 では次は最近の話。最近といっても、昨年(二〇一二年)の話だが、二〇一五年に開業する北海道新幹線の『新函館駅』の駅舎デザインが決定した(図-1)。この駅舎の設計コンセプトは、「自然と共に呼吸(いき)する、モダンで温かみのある駅」とのこと。また、駅舎の前面はガラス張りで、「トラピスト修道院のポプラ並木をイメージしたデザイン」であるそうだ。これを僕が初見した時の感想は、「わけがわからないよ」「なに言ってんだこいつ」等々である。特にこの駅舎がモダン様式(モダニズム)を選択している目的が甚だ不明である。何の感慨もないデザインだ。その一方、これも昨年の話だが、『東京駅』の赤煉瓦造りの駅舎が、建築家の辰野金吾らが設計した約百年前のオリジナルの姿(一九一四年)の、英国風クラシック様式に復元されて再開業した。この復元された『東京駅』は、実に多くの人々に愛されている。昨年の一二月に予定されていた『東京駅』を舞台にしたプロジェクションマッピングのイベントが、激しい混雑のために中止に追い込まれたほどの人気ぶりである。さて、では前述の『新函館駅』も百年後には、今日の『東京駅』と同じように人々に愛されている駅舎になっている、とあなたはどれだけ想像できるだろうか。僕には無理だ。更に僕は二〇世紀のモダン様式(モダニズム)の建築よりも、それ以前の世紀のクラシック様式の建築のほうが、より多くの人々に愛されやすい傾向にあるのではないかと考えていて、もしそれが事実であるならば、これは建築史上の皮肉であるとしか言いようがない。二〇世紀のモダニストたちは建築様式を改悪したということになる。

 以上、二つのプロローグを書いた。この二つの話(問題の提起)からこの先の本論は書かれている。さて、私たちはこれからどこを目指したら(後略、続きは来月の文学フリマの『ニコちく』で!)

【追記(2013/4/8)】

文学フリマの一週間前なので、冒頭の書き出しの部分の『■ プロローグ』をもう少し長めに載せておきます。

 以上、二つのプロローグを書いた。この二つの話(問題の提起)からこの先の本論は書かれている。さて、私たちはこれからどこを目指したら良いのだろうか、建築に対する人々の感情や感性は『新函館駅』と『東京駅』のどちらが望ましいと考えられ得るのだろうか。僕は確かに『新函館駅』よりも『東京駅』のクラシック様式のほうが建築のあり方としては望ましいと考えている。でも、この二者択一は極論であるし、この先の本論で「復古主義」を掲げて、前近代の様式をリヴァイヴァル(再生)すべきである、と書く気は全然ない。それよりも、モダニズムを「ハッキング」しようと思う。

 モダニズムの建築家のミース・ファン・デル・ローエは、「建築は空間に表現される時代の意志である。この単純な真理を明確に認識しない限り、新しい建築は気まぐれで不安定となり、当て所のない混沌から脱し得ない。建築の本質は決定的に重要な問題で、建築は全てそれが出現した時期と密接な関係があり、その時代環境の生活業務の中でのみ解明できることを理解しなければならず、例外の時代はなかった」と述べている。これはモダニズムを特徴づける大変有名な言葉である。よって、これを定言命法にすることで、言い換えると、モダニズムの信条を文字通りに読むことで、「復古主義」の沼を跳び越えて、やや無謀かも知れないが、現在という時代に適合する新しい建築論の構築を試みる。ただ字数に限りがあるために、どうしても駆け足になってしまうが、それはご容赦願いたい。さて、現在の「時代の意志」は何だろうか。おそらく、最も顕著であるのは「情報化時代」と呼ばれる、情報テクノロジーが生成した新しい環境世界である。『ニコニコ動画』はその代表例である。では早速、この「情報化時代」に適合する新しい建築をめざして、本論に入る。

(後略、続きは4月14日の「第十六回文学フリマin大阪」(堺市産業振興センター)、または4月28日の「超文学フリマ」(幕張メッセ)の『ニコちく』で!)

【追記(2013/4/11)】

追記です。『ニコちく―「ニコニコ建築」の幻像学』の表紙はこんな感じになるそうです。左下に初音ミクさんがいます。(ちなみに、本ブログ「未発育都市」のタイトルの画像も初音ミクさんですw。)*1

これは、いわゆる「ドット絵」ですね。こういう表現形式は凄い好きです。(ちなみに、「ドット絵」に関しては、本ブログの「【動画】廃村――abandoned village」の記事の後半に少し書いた。)

ついでに、僕(ノエル)が『ニコちく―「ニコニコ建築」の幻像学』に寄稿した論文の「形態はアイコンに従う(Form follows icon)――情報化時代に適合する新しい建築をめざして」に添付した画像も載せておきます。以前、僕が「ドット絵」的に(?)描いたアイコン建築の「バレンタインの家」です(下図)。

以上です。

では、皆さん、文学フリマへ行きましょう。

【追記(2013/4/26)】

あと、その他の僕が描いたアイコン建築は、本ブログの「・作品一覧」の記事にまとめて載せています。

*1:本ブログの「追記(2012/6/3)」の記事参照。現在の本ブログ「未発育都市」のタイトルの画像は、「「Google ChromeのキャンペーンCM」(→動画)で使われた、初音ミクの曲の「Tell Your World」(2012年)の動画(→動画)の画像です」