飛び下り

Nさんが大学の友達二人とドライブに出かけ、Nさんの実家のある町までやってきた。
せっかくだから案内して、と頼まれたのでNさんは何ヶ所か町の名所を案内したが、そうしているうちにNさんが卒業した高校の近くにさしかかった。
へえ、あれがNの高校か。
走る車の中から校舎を眺めていると、友人の一人が指差して言う。
あ、屋上に誰かいる。
どれどれ、とそちらを見ると空をバックにして、確かに四階建ての校舎屋上に人の姿がひとつ見える。
距離があってはっきりとはわからないが、制服姿の男子生徒のようだった。
あんなところで何してるんだろう、と思った直後、その黒い人影は屋上からひらりと飛び下りた。
嘘、やだっ!
と車内で悲鳴をあげた次の瞬間、それは地面に落下し、直立姿勢のままゴムボールのように高く跳ね上がった。
二階のあたりまで跳ねると、同じ姿勢でまた落ちてもう一度跳ね上がる。
落ちる。また跳ねる。また。
……生身の人間がそんなに弾むはずがない。
三人は校舎から目をそらし、スピードを上げてそこから急ぎ去ったという。