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たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

C'mon

C'mon(初回限定盤)(DVD付)

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アルバム毎に違ったカラーを見せるのがB'zだというのは知ってたけど、C'monほど切り口を変えてきたのは珍しい。個々の曲は間違いなくB'zの曲で、過去の曲との共通点はむしろ多いくらいなのだけど、この曲順で一枚のアルバムとして聞くと、今までのB'zとはまるで違うものに聞こえる不思議なアルバムになった。簡単に一曲ずつご紹介したい。
まずは表題曲のC'mon。まず、アルバムの一曲目が哀愁を漂わせるアコギのざっくりとした音で幕を開けること自体が珍しい。タイアップ曲のため、他のアルバム曲と違って、フルで聞く機会が多かったため、アルバムを買って驚くということはなかったけど、もしも、何も知らずに聞いたら仰天していたこと間違いなし。曲については、以前も書いたのですが、キャッチーなメロディーにわずかな哀愁を漂わせる90年代のB'zっぽさが前に出た曲。特に最後のサビから、ギターソロになだれ込むあたりはRUNを彷彿とさせる美しい流れ。CMではサビのキャッチーさを前面に押し出しているので、曲全体を聞くと、そのシリアスさに驚くかもしれない。
同じくPEPSI NEXタイアップのさよなら傷だらけの日々よ。C'monの後で聞くと、ハードさが際立つ。今回のアルバムは疾走感のあるナンバーが他にないだけに、この曲の疾走感が映える。比較的、軽い感じの楽曲のイメージがシングルではあったけど、こうして聞くとかなりハードですね、この曲。雷鳴のように現れる二番頭がいつ聞いてもかっこいい。
シンセとギターの音が交差するイントロが印象的なひとしずくのアナタ。これも比較的ヘビーな楽曲なのだけど、一貫して聞こえてくるシンセの音が、ヘビーさよりも端正かつ機械的な印象を植え付ける。ギターソロ前のリフをそのままなぞるコーラスと「Oh, just a little bit of you...Give it to me, baby!」のボーカルが個人的には好き。その後のギターソロの裏で鳴ってるストリングスっぽい打ち込みが初期のB'zっぽいですね。そういえば、イントロもどこかBOYS IN TOWN風味。
穏やかなバラードHomeboundがここで登場。曲としては、最後の方が相応しいのだろうけど、命名がある都合上、ここにきたものと思われる。まぁ、少し重々しい曲が続いたので、この曲で箸休めを、ということでしょう。
ポップさとは裏腹に、バンドの手数が多いDon't Wanna Lie。ここからザ・マイスターまで続く少しノリの軽い曲達の一番手。サビの後半がメロディー、歌詞共に好きですね。人生を決める正念場 それが今かもね。素敵な歌詞です。
DAREKA。ざっくりとしたリフ(ひとしずくのアナタのリフに似てるけど)にクラップ音、軽快さを演出するピアノとホーン、分かりやすいメロディー。曲だけ聞いていると、New Messageあたりの明るくさわやかな曲と同系統なんだけど、歌詞が案外ブルー。要領良くやり過ぎて、疎んじられてる主人公。満月よ照らせとか、透明人間の方が歌詞の系統は近い。もっとも、曲の軽快さもあって、シリアスさは少ない。ギターソロ後の合唱パートを聞けば分かる通り、主人公には誰かに手を伸ばしていこうという意志がある。歌詞も曲も個人的には好きな楽曲です。「体調を壊して何日も〜」のくだりはありそうで嫌なんだけど、どこか笑いを誘う歌詞。最後の「誰かああああああああああああ!!!」の叫びも良いですね。自然な叫びだと思います。
一国の首相のことを歌ったタイムリーな歌詞ということで、注目を集めていた(気がする)ボス。その正体たるや昭和のムード歌謡であった。MONSTERの頃から少しずつ前に出てきた昭和歌謡の要素が思いっきり前に出た曲となった。MAGICまでは、それでもシリアスさが漂っていたのだけど、ボスに関しては良い意味でふざけた感じがする。一国の首相を批判するのではなく、アップアップになってる首相自身の嘆きと怒りと謝罪が歌詞となっている。批判というより、風刺という言葉が適切だろうか。しかし、この曲はライブでやってる様が全然思い浮かばない。
まだまだ続くよ、昭和歌謡ということでToo Young。ジャズっぽいピアノやホーンはあるのだけど、イメージはやはり昭和歌謡。サビの出だしがMY SAD LOVEで気がついたらMVPになってるというキャッチーなメロディーのサビを持っているのに、何故ここまで昭和歌謡のテイストになるのか不思議。僕は「Too Young」のコーラスと、フレーズ毎に鳴るホーンのせいだと思います。
二曲連続での昭和歌謡のムードを打ち崩すのが、ピルグリム。「君」と出会い、別れ、また出会った想いの強い地を巡り巡る物語性の比較的強い歌詞に、ドラマチックなギターの音がよく似合う。Aメロのコーラスはそれほど意外でもないけど、サビの裏で「ラララ・・・」と歌うコーラスが美しくも珍しい。個人的にはBメロが凄く好き。一番、二番のストリングスの刻み方も好きだし、最後のサビ前の「愛といえど時にはひ弱なもの」のくだりも好き。歌詞や構成もあいまって、恋じゃなくなる日と思い出させる。
ベースが導火線となって、始まる昭和GS路線のザ・マイスター。誰にも言えねぇと同じタイプの楽曲。「アップアップアップ」「ヒィヒィヒィ」と稲葉さんの歌詞の独特のセンスが光る極めてノリの良い楽曲。二番の後に現れるサッカーの応援風のコーラスにライブの掛け合いの風景しか見えてこない。何度も「うぉ〜うぉ〜うぉ〜うぉ〜うぉ〜!」って叫ぶんだろうな。それが楽しみ。コーラスの後のギターソロがまた素晴らしい。サビメロの美味しい部分から少しずつ変えるギターソロは凄く好きです。耳が引っ張られていくような感覚。
デッドエンド。不穏なタイトルがそのまま音となったように、ギターがゆっくりと響き、そこに雷鳴のようなリフが絡んでくる。シンセとギターがユニゾンしているせいか、プログレというよりは、ゲームのボス戦のような構成のイントロ。これだけで、テンションがガンガン上がってくる。アルバム随一のハードさどころか、ここまでハードな楽曲はBLACK AND WHITE以来ではないかというくらいハード。ミドルテンポの曲は別として、キャッチーさや軽さの印象が強いアルバム曲の中で、物凄い存在感を放ってる。絶望的な言葉の波が押し寄せてくるAメロ、対照的にスローモーションをコーラスで演出するBメロ、シンセとギターのブレイクの後に、叩きつけられるようなサビと完璧な構成。こういう言い方は分かりづらいと思うけど、MONSTERのイントロだけを初めて聞いた時に、実はこういう感じの曲を頭の中でイメージしていたんだろうな、という感じの楽曲。イントロのフレーズとBメロからサビの流れが抜群にかっこいいです。アルバム曲の中でも一押しの楽曲です。
いつになくクラシカルなストリングスの響きに耳を奪われている内に、分厚いギターの音がオーケストラのようにあふれてくる。命名TINY DROPSでは死にゆく者のことを歌ったけれど、今度は生まれ来る者への希望を感動的に歌いあげる。歌詞カードをしっかりと見ながら、聞いてみてほしい楽曲。TINY DROPSや綺麗な涙、Homeboundもそうですが、最近のバラードは凄く心にしみますね。王道の型にとらわれず、個性が出てるのがどれも素敵です。
大きく息を吸い込んで、水の中へ。そんな印象のイントロから始まるultra soul 2011。命名のあとだとどうにもボーナストラックの印象がぬぐえない。どうせ入れるなら、ボスとToo Youngの間あたりにでも入れた方が収まりが良かったと思うのだけど。原曲が打ち込みをメインにしたスマートな出来だったのに対して、このアレンジバージョンはライブで培われてきたものを元に、よりメリハリのある楽曲に仕上がっている。歌い方やバンドの演奏、コーラス、どれも原曲を聞くと意外とおとなしく哀愁すら感じさせる仕上がりなのに対して、この新しいバージョンはパワー全開のライブ感が漂ってる。「Hi!」の掛け声とか、原曲に比べると凄く雄々しくなってる。その癖、ギターソロは原曲のイメージからはかけ離れた落ち着いたトーンなのですが。そして、なんといっても生のドラムの存在感が半端ではない。二番頭のドラムのリズムの取り方とか凄く良いですよね。シングルみたいに三曲連続の構成にするには少し派手なアレンジですが、一曲で聞く分には、こちらの方が盛り上がるかもしれませんね。個人的に一番原曲と変わった印象を受けるのは二番サビで「Hi!」と叫ぶことと「Do it!」の叫び方。
以上、13曲でした。昭和歌謡路線のアクの強い楽曲が多くなった分、従来のB'zサウンドが映えているアルバムです。MAGICでは昭和歌謡のハード風味な楽曲といわゆるB'z的な部分が拮抗していて、それ以前は異色の昭和歌謡路線がアルバムの中で存在感を放つという構成だったのが、今回は逆転してしまった印象。ノリの良い曲が昭和歌謡で、シリアスな部分だけいつものB'z。昭和歌謡路線が嫌いということは全然なくて、凄く面白いなと思っているんだけど、いわゆるハードロックなB'zが大好きだから、この路線を極端におし進めてほしくないなとは思う。ノリが分かりやすいMAGICに比べると、ちょっととっつきづらい印象のあるアルバムでは正直あるのだけど、C'monや命名に代表されるMAGICにはなかったシリアスさや凝ったアレンジは必聴かと思います。早くライブで聞きたいですね。特に、デッドエンド。