2007-05-16
■[brasil][argentina]解釈を拒絶して動じないもの(イグアスの滝)
この旅で、南米に来ようと思ったきっかけは、雄三さんの写真で見た、ウユニ塩湖以外にもうひとつあった。ウォン・カーウェイ監督の「ブエノスアイレス」という美しくもせつない映画だ。レスリー・チャンとトニー・レオンが扮する、お互いに愛し合っているのに、すれちがってばかりいる、二人の美しい男たちの話を、何度見たか分からないくらい好きで、だから、なにもよくわからないまま来てしまった南米では、ウユニ以外に、映画「ブエノスアイレス」に出てくる、イグアスの滝、ブエノスアイレスの街とBar Sur、ウスアイア近くのビーグル水道に、なにがなんでも行きたかった。南米の上の方で、随分ふらふらして、ようやくイグアスの滝に行けるときがきた。しかも実は、3ヶ月前にも一度アルゼンチン側のイグアスに行っており、入場料の30ペソ($10)を払ったにもかかわらず、時間がなくて、滝のひとかけらも見れず、エクアドル、ペルーと1ヶ月ほど一緒だった友人とうれしい偶然の再会をはたして、とぼとぼ帰ってきたのだった。その上、ブラジル側のFoz Do Iguacuに至っては、パラグアイとブラジルを行き来しているうちに、既にもう5回通ったことになる。こんなに見たいのに、イグアスの滝とは縁がないのか?とじれったく、もどかしい気持ちでいっぱいだった。それから、3ヶ月経ち、ようやく見れるようになったのだから、期待は並々ならない。3ヶ月前は、水着やタンクトップ姿だった人たちも、セーターやジャケットをしっかり着込んでいる。人も心なしか、少ない。
まず、ブラジル側で滝を見た。滝を見ているうちに、なんだか飛び込みたい衝動に駆られた。こわがりだというのに、当たり前のようにふつふつと込み上げてくるこの衝動が不思議だった。もしかすると、人は、とてつもなく大きいものを見たら、そのままその中に溶けてしまいたくなるのかもしれない。
あくる日は、アルゼンチン側で滝を見た。一番迫力がすごいと言われている、Garaganta del Diablo(悪魔ののどぶえ)は最後にとっておいた。Garaganta del Diabloに近づくにつれ、昨日は対岸のブラジルからも見えた、水煙がもくもくと大きくなっていく。そこには、Garaganta del Diablo 以外の名前は考えられない、全てを獰猛に飲み尽くすような滝の姿があった。想像を遥かに超えた凄さに震えた。
滝壺の中から、ほとんど垂直の虹が立ち上っている。それが風の具合で伸び縮みするのを一心に見ていた。虹は伸び縮みし、たまにもう1本増えた。燃え滾る火をいつまで見ても飽きないのと同じように、瀑布も全く飽きない。こんな水量の水は、こわいはずなのに、恐れよりも、心がすーっとまっさらになっていくような爽快感があった。そろそろ名残惜しいけれど帰ろうかな、と思った瞬間、強い風が吹いて、横殴りの嵐のような、猛烈な水しぶきが襲ってきた。目の中に水が入ったまま、上を見上げると、これまで半分しかなかった虹が、大きなアーチを描いていた。滝にも、人間の係員にも、「終電ですよ。」と追い立てられ、呆然としたまま駅に向かう。
文章を書くときはいつも、小林秀雄のこの厳しい言葉を頭に浮かべて書くようにしている。
「書けない感動などといふものは、皆嘘である。ただ逆上したに過ぎない。そんな風に思ひ込んでたって、どうにもならない。」
今日ばかりは見逃してもらいたいような、なんだかよく分からない凄さだった。
「解釈を拒絶して動じないものだけが美しい。これが宜長が抱いた最も強い思想だ。解釈だらけの現代ではもっとも理解されにくい思想だ。」 小林秀雄


日本です、現在地。
あすかちゃんは今どこにいるのやら…
もうブエノスかな。
念願のパタゴニアですね。また楽しいお話、待ってます。
本当にキトからいろいろ有難う。米原マリと須賀敦子は結局日本まで僕が持ってきてしまいました(笑)。
長いこと旅してんだね。元気?
いろんな経験していろんな感情ぶちまけて
帰ってきていろんな話きかせてねー。
雄三さんのルートを参考にしていましたが、とっくに大きな遅れを取っています。。。どうなるかわからないのが、旅のおもしろさではありますが。。。日本に帰ったらぜひ一杯!