baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 アリーナ・イブラギモヴァのヴァイオリン・リサイタル

 今日はロシア生まれのアリーナ・イブラギモヴァのヴァイオリン・リサイタルを、代々木公園の白寿ホールで聴いて来た。プログラムには年齢も生年も書いていないので、イブラギモ―ヴァの年齢は不詳である。見た限りでは未だ非常に若く見えるのだが、キャリアからするとそれ程でもないのかも知れない。1996年に英国に移住し、英国で更にヴァイオリンを研鑚したそうである。更に英国ではユーディ・メニューインに師事し、非常に可愛がられたようである。
 プログラムはJ.S.バッハ無伴奏パルティータの1番から3番であった。この時代の奏法に倣って一切ビブラートを掛けないので音程が誤魔化し難いのだが、非常にしっかりとした音程で難しいバッハを魅惑的に弾いてくれた。1783年製ガルネリの楽器を使っているせいであろう、音は極めて明るくボリュームがある。イブラギモ―ヴァは繊細で綺麗な音を作ろうとしていた様だが、楽器がその弾き手の意向を撥ね返して時として少しヤンチャなバッハになっていた。しかし全般に澄んだ音色は非常に美しく、聴衆を魅了して止まなかった。NHKのクラシック倶楽部にも出た事があるらしいので、ご存じの方もおられようが、曲の合間で次の曲への準備をする時に天を仰ぐクセがあるようである。この時の横顔が天使の様に神々しかった。演奏会が終わると何時までも拍手が鳴りやまず、5回も6回もカーテンコールに呼び出されていたが、バッハの無伴奏を3曲も弾いた後では流石にアンコールはなかった。
 以前トトロのシュークリームを進呈したオランダ大使が、夫妻で来られていた。一ヶ月半程前に渡辺玲子と加藤知子のヴァイオリンで新実徳英のヴァイオリン曲のコンサートが文化会館の小ホールで開かれたのだが、その時にも夫妻で来られていて、その時には打ち上げパーティーでも一緒になってしまった。ここの処、何故かオランダ大使夫妻と縁があるらしい。
 今夜の演奏会は、僕にはバッハにしては時として少し謳い過ぎであったのと、後半に少し音が荒れた時期があったのが残念であった。しかし音の荒れは程なく収まり、総体的にはしっかりしたテクニックに裏付けられた、素晴らしいコンサートであったと言える。