Heart-Shaped-Box

2011-06-12 奇跡

[]奇跡 21:46


 是枝裕和監督


 走る。この動作をこの映画は描き続ける。決して類型化された逃走や疾走ではなく、愚直なまでの走るという動作をここまで徹底して描いた映画は他に無いだろう。



カメラも一緒になって走っているように画面は揺れる。少年たちの無邪気な走りをカメラも完全に把握することは不可能だ。走る彼らの手や足がこの画面の枠に収まらず、そこからはみ出すような感覚こそがこの作品を躍動感あるものにしており、それこそがいみじくも原田演じる祖父が「あの火山は生きている。だから時々エネルギーを外に出さないといけない」という趣旨で言ったように、灰の正体なのである。「わけわからん」と灰の意味をずっと問うていた兄は、まさに生きることの意味を問うていたのであり、それが「世界であるという解答を得るきっかけが新幹線であった(勿論「世界」とは何か、などという野暮な疑問は無用である)。彼が授業中に朗読した詩が「生きる」であったことは偶然ではない。



 その意味でこの映画は紛うことなきロードムービーであり、帰るべくところに帰るストーリー必然的で自然であった。アニメいかにも映画「らしい」演出など、ドキュメンタリータッチの是枝風と呼ばれていたものは影を潜めているが、時折インタビューのようなぶつ切り編集(勿論わざとであろうが)や光の透明度など、随所に「らしさ」がみえた。といっても光や花火やらダンスはまるで岩井俊二だと思ったのは自分だけであろうか。良作。



 それにしても内田伽羅はかなり光っていた。祖母との共演はどうだったのであろうか。出演陣も特徴的で、「是枝組」と呼んでもいいのではないか、というレビューさえある。確かに是枝映画の脇役はしっかりとした構想をもって選ばれているように思う。それだからこそ主演がまえだまえだを始めとする子供たちでも成立するのであろう。そしてそういった意味(脇役を固める役者がほとんど居なかった中)で「誰も知らない」はそれこそ奇跡I wishというこの作品の英題、テーマとは異なる意味において)のような作品だった。



 同時にくるり音楽も非常に良かった。彼らは映画音楽を手がけるととんでもなく良いものをつくる気がする。ジョゼもそうであったし、最近観た多田便利軒もそうだった。天然コケッコーを忘れてはいけないし、リアリズムの宿もそうだ。今後も期待。シングル買う予定。



 はてなユーザー比較的好意的なレビューを書いており、否定的なレビューは見当たらない。以下に取り上げているものを挙げる。

http://d.hatena.ne.jp/beatle001/20110612/1307819562

http://d.hatena.ne.jp/mizunagaru/20110611/p2

http://d.hatena.ne.jp/noriyox/20110527/1306480658

http://d.hatena.ne.jp/T_J_Newton/20110610/1307676157

http://d.hatena.ne.jp/Ruben5/20110529/p1

beatle001beatle001 2011/06/13 13:24 トラックバック、ありがとうございました。詳しい感想拝見して、より作品がわかったような気がします。この映画は、是枝版『スタンド・バイ・ミー』というかんじですね。

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/balrog/20110612/1307882819