ADD関係の読書

約15年ほど前、「片づけられない女たち」が話題になり、「片づけるのが苦手で生活が崩壊している女性がけっこういるようだ」みたいな話がそこここに出たりしていたのだが、大学に入って京都で一人暮らしを始めて、生活がめちゃくちゃになっていた私にはこの話題は人ごとではなかった。片づけられないのは「病気」であり、私の努力不足ではない、というのは心惹かれる考え方だったけど、一方で病気と見なされるのも恐ろしくて、当時は気になりながら「片づけられない女」関係の本や話題は避けて通っていた。
その後、少しずつ生活スキルが上がって以前ほどの混沌とした状態ではなくなったんだけど、生活様式が大きく変わるとき片づけられない問題はいつも顔を出すから、子どもが生まれて生活が激変するのを前にまた不安になってきた。一人暮らしでの変化が一番大きかったけど、結婚して他人と本格的に生活し始めてからも何かと問題は起きてきた。子どもが生まれたらどうなんだろう?自分一人でもちゃんと管理できないのに子どもの世話なんてできるのか?など今後の生活に何かと不安があるので、何らかのヒントがあればと今さらながらADD関係および片づけられない人関係の本を読んでみることにした。
まず手始めに、サリ・ソルデン『片づけられない女たち』。

片づけられない女たち

片づけられない女たち

アメリカは男女平等が日本より進んでそうなイメージはあるんだが、それでも「片づけ」「気配り」といった領域は女性のものとされているから、整理整頓、お礼のカードを書いて素早く出す、などが絶望的に苦手なADDの女性たちが苦しむことになる、しかもそれが気づかれていない、ということを指摘し、具体的な症状、治療などを解説する。ADDは男女問わないのだがこの本では女性に焦点を当てている。治療前の状態、診断、その後の治療がどのようなコースをたどるのか、典型的な2人の女性(架空)の例を出して説明している。著者本人もADDなので著者の体験もある。あんまり具体的な解決策は載っていないが、他人、特に共に暮らす家族をどのように巻き込み、生活を組み立てていくか、というのが大事というのが参考になった。ADDの治療が進んで、今までは「私なんてどうせ人間としてだめだから多少ひどい扱いを受けても仕方がない、黙っていよう」みたいな状態だったのが、治療が進んで自尊心を取り戻し、意見をはっきり言うようになると、女性の場合は特に家族との関係にひずみが生まれるらしい。今まで決まっていた家族の役割が変化すると、必ずそれに抵抗するメンバーが現れるとか。生活のコーチングやカウンセリングで自分一人のことを解決するのはどちらかというと簡単だけど、人との関係を再構築するのは難しい。
お片づけセラピー〜ADHD/ADDのためのハッピーサバイバル法

お片づけセラピー〜ADHD/ADDのためのハッピーサバイバル法

日本の本。片づけ苦手な人向けライフハック集。一つのトピックでマンガ+解説なので読みやすい(内容が薄いとも言えるが…)。いくつか生活のヒントになることはあって、例えば「余った時間で何かやろうとか思うと結局時間が押して遅刻するから、とにかく出かけろ」というのは今後に生かせそう。私が知りたいのは赤子(と夫)という他人が生活に入ってくる中でどうやりくりしていくか、という話なので、個人で取り組めるライフハックは参考にはなっても求めているものではなかった。『お片づけセラピー』と似たような内容。これも、他人との関係にはあまり焦点が当たっていない。友達や周りの人に声をかけて、やるべきことを思い出させてもらう、とかそういうことは載っているが、一人で一つの仕事をする際にはその辺はリマインダとかで何とかなってしまうからなあ。
へんてこな贈り物―誤解されやすいあなたに--注意欠陥・多動性障害とのつきあい方

へんてこな贈り物―誤解されやすいあなたに--注意欠陥・多動性障害とのつきあい方

著者自身もADD(ADHD?)。実例がたっぷりで、一つ一つの深刻な実例を読んでいると、前に紹介した日本の本2冊の「生活の工夫次第で、片づけられないあなたにもハッピーな毎日が送れます」という軽いノリとのギャップにくらくらしてくる。日本の本はあくまでADHDの人ではなく「ADHDタイプ」を対象にしている、というのはあるのだが、それにしても扱いが軽すぎるのでは。この本では具体的な投薬の話もあり、生涯にわたる治療対象としてのADHD、きちんと取り組まないと生活全般に深刻な影響を及ぼす症状ではあるがうまく付き合えば開花できるADHD、というとらえ方で厳しいけど希望は持てる内容になっている。日本だと投薬は行われるのだろうか?この本を読んでいたら私は整理能力はAD(H)Dと診断されてもいいレベルで低いが全体で見るとそれ以外の症状がほとんどないのでまず患者ではなさそうだと思えてきた。
「片づけられない人」の人生ガイド

「片づけられない人」の人生ガイド

最後に、再びサリ・ソルデンの本を読んだ。
『片づけられない女たち』よりもより具体的に治療の道筋を示している。また、この本では女性だけではなく、男性も扱っている。男性2人、女性2人の診断、治療の過程を示す中で、具体的なアドバイスも提供している。ADDと診断されるとどのように思うか、ADDである自分の受容、ADDの症状のせいであきらめてしまった自分自身のよさや夢の掘り起こしとそれを実現する過程、かつての経験から萎縮することなく、どのように他人の攻撃(ADDからくる失敗に対する不満から人間性を貶めるなど)にうまく対処していくのか、など。他人との関わりをちゃんと扱っているのがいいところだと思う。「私が努力すれば整頓できるようになって何とかなる」で解決する問題ではなく、そもそもADDの人が「普通の人レベルに自力で整頓できるようになる」というのは無理な話らしい。そんな自分との折り合いの付け方、いかに苦手な作業をアウトソーシングするか、いかに人に理解してもらうか、理解されなくても好ましい人とは付き合いを続けていく方法、ひどいことを言われたときに人格と症状とを分けて相手に対峙する方法など、具体的かつ愛のある記述で手元に置いてたまに見返すにもよさそうな内容だった。

ADD関連の本続き

私が困っている問題は、

  1. 気づいたら部屋や自分の空間がカオス
  2. やっていたことを途中で忘れてしまう
  3. マルチタスク不可能
  4. 遅刻、締め切りギリギリ
  5. 長期的な計画を立てられない

たぶん2のせいで1も3も起きていそう。日本の本によれば「ワーキングメモリが普通と比べて小さい」のが原因らしい。やっていたことを途中で忘れるのを避けるため、やりかけたことは最後まで一気にやろうとはしているが行程が増えるとそうも行かなくなってとちゅうやりになる。その辺はリマインダに送ったりして思い出させるようにすることもあるが今度はリマインダを試しすぎてどのリマインダを使っているのか分からなくなって混沌としたり…。どんなに努力しても人並みになることがなさそうなので、複数の本がおすすめするように手を抜くか人に頼むかするしかないのだろうね。