島敏光著『永遠のJ−ポップ』

7月10日の日記でご紹介したロカビリー・コメディ・バンド「島敏光&ザ・ガラパゴス」のリーダーである島敏光さんの最新刊である。

  島敏光さんについての詳細は下記、銀ボタンの7月10日付日記(「島敏光&ザ・ガラパゴス」ライブ・レポート)をご覧ください。


  この本は音楽家であり音楽評論家であり映画評論家である島さんが、1960〜70年代のPOPシーンを作った音楽家たちへのインタビューを行い、それに自分が見聞したこと、経験したことを織り交ぜて描く、日本ポップス史のサイド・ストーリーだ。

  インタビューに登場するミュージシャンは、黒沢久雄、加藤和彦マイク真木加瀬邦彦五輪真弓

  この人選が微妙にシブいよね。もちろんそれぞれに一時代を築いたビッグネーム揃いではあるんだけど。

  どの人も、黒沢久雄氏の引きでタレント活動をしていた島さんが、その活動を通じて付き合いがあった人ばかり。つまりは、なだたる大御所たちへのインタビューで彼らの活動をなぞりつつも、裏の目的は自らの軌跡の描出にあるんだな。なんというしたたかさ!!

  でも、このへんが島さんの魅力なんだと思う。

  よく「親分肌」などという言葉がある。広辞苑によると「親分のように面倒見がよく人から頼られる気質」とある。

  それに対して、島さんはなんていうんだろ、「子分肌」なんだな。それも「天下御免の子分肌」だ。甘え上手で、人の胸襟にヒョイっと飛び込んじゃうんだろうな。僕などが読んでいても(一回り年上の男性だと言うのに)、なんとなく可愛くおもえてしまうから不思議だ。


   それにしても上に出てくる人たちのどの人もこの人も(五輪真弓以外)ロクでもないこと。みんなお金持ちのお坊ちゃんで、言ってみれば高等遊民。親の金で遊んで、遊びの延長でバンドやって、それでうれちゃってまた大もうけ。もう!!

   その高等遊民たちの遊び場となり、苗床になったのが黒澤邸なのだ。ご存知、世界に冠たる黒澤明の家だ。居心地のいいこの屋敷を根城に、お金と時間が有り余ったやつらがロクでもないことをしてたんだな。

  大黒澤の息子が黒沢久雄。そのいとこであるのが島さんだ。つまり島さんはジャズ・ヴォーカルの泰斗、笈田敏夫の息子であるとともに大黒澤の甥にもあたるのだ。

  中でも黒沢さんのことを書いた部分がやっぱり一番面白いなぁ。アテコスリ言ったり突っ込みを入れたりしながらも、4歳年上のイトコのお兄ちゃんのことが好きでたまらないんだな。このへんも島さんの可愛いところ、魅力的なところだ。なんか森の石松清水の次郎長を見ているみたいだ。


  ところで、カレッジ・ポップスの「ザ・リガニーズ」って知ってる?

  そう、「海は恋してる」の。じゃ、バンド名の「ザ・リガニーズ」の意味、知ってる?

  これって、深い意味は無くって「ザリガニ」の洒落なんだってね。

常識? すみません、僕はこの本で知りました。


永遠のJ−ポップ


島敏光著『永遠のJ−ポップ』(学研・1680円)